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掌編怪談

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自作の掌編怪談のまとめ
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2023年3月の記事一覧

掌編怪談「誰だ」

小学六年の三学期、卒業前に最後の席替えをした

女子が席を決めている間、男子は廊下で待機する

男女が入れ替わり、全員の席が決まると皆で一斉に席を動かした

前後は親友の二人なので正直隣の女子は誰でもいい

移動してきた女子をみると知らない女の子だった

女の子は固まっている僕に挨拶をする

六年間通った学校だ、同学年ならほとんどの子と面識がある

何よりクラス去年から引き続き同じメンバーだ

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掌編怪談「花火」

花火大会も終盤に差し掛かり、最後に恒例の連発花火で締めくくりとなる

ひゅー

…………

何も起こらない

続いてひゅーひゅーと二本の線が空に上がる

しかし花火は上がらない

周囲もざわつく

しばらく時間が空き、再度空に打ち上がる

ひゅー

誰しもが静かに空を眺めていた

ギャー

女性の絶叫が暗い空から降り注いだ

会場は大混乱になり、それ以降花火大会が開催されることはなかった

掌編怪談「幻想」

ひゅーどん

ひゅーひゅーどんどん

夏の夜、暇をもて余しているとどこからか花火の音が聞こえてきた

まだ夏らしい事をしていなかったので見に行こうと外に出る

光が見えないので音を頼りに歩みを進め、近所にある公園の池にたどり着いた

音はかなり近い

だが未だに花火が見えない

もう諦めて帰ろうかと考えていると

ひゅーどん

その音と同時に池が光った

池に大きな花火が写る

咄嗟に空を見上げる

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掌編怪談「すれ違い」

狭い道を息子と手を繋いで歩いていると、向こうから人が歩いてきた

すれ違うために息子を先導するように前を歩く

何事もなくすれ違い、隣に並んだ息子の顔をみる

見知らぬ少年が私と手を繋いで歩いていた

咄嗟に手を振り払い周囲を見渡すが、その少年以外に人がいない

一本道なのに数秒前にすれ違った人すらいなくなっていた

何より息子の手を放していない

訳も分からず我が子の名を叫ぶ

どうしたのママ

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掌編怪談「QRコード」

旅先のスペインで知り合った人が富豪だった

彼は

空からバルセロナの美しい町並みを見て欲しい

と自家用ヘリを飛ばしてくれた

格子状に整えられた町並みはそれだけで美しい

そして見える建物全ての屋根が赤いことで一体感が生まれており、言い表せないほどの絶景だ

見とれている私に、彼は写真を撮ることを勧めてくれた

スマホで撮影していると、突然画面にリンクが表示された

画面を良く見ると、町の一画

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掌編怪談「身代わり」

弟が転んで膝を擦りむいた

私は怪我をした弟の膝に手を当てる

痛いの痛いのあのオジさんに飛んでけ

その言葉と同時に膝に当てていた手を通行人である知らないオジさんの方に向ける

すると弟の怪我はなくなり、オジさんは顔を歪ませながら自身の膝を触る

私は弟の怪我を他者に移すことができる

理屈は分からないが、姉弟だけの秘密の力だ

姉弟仲はかなり良く、しょっちゅう一緒に遊んでいる

今日は木登りを

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掌編怪談「いろがみ」

子供の頃、いじめられていた

親がいない僕には信用できる大人がいなかった

誰にも相談できず、我慢する日々を送っていた

溜まったストレスは、ノートに思いや暴言を書くことで発散していた

その行いがいじめっ子にバレ、いじめが激しくなった

その日、僕は折り紙に願い事を書いた

いじめっ子が事故で大怪我をしますように

そう書いた赤色の折り紙をぐしゃぐしゃに丸めると、僕はソレを食べてしまった

自分

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掌編怪談「ゆるキャラ」

この町にはゆるキャラがいる

よく商店街を一人で歩いているのが目撃される

イベントがなくてもみられる光景なので、知名度が高く人気者だ

ただ、近くにサポートする職員がいないのが少し心配

更なる知名度の向上のためか、地域の活性化のためか

最近は至るところに現れる

職員がいないため、子供がよく群がっている

そんな状況だと悪ふざけをする子供が出てくるのが常である

子供が勢いよくタックルをした

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掌編怪談「懐胎」

ある産院に女性が来院した

生理が来ないとのことなので検査をする

検査の結果、妊娠3ヶ月だと判明すると彼女は驚いていた

心当たりがないらしい

彼女は悩んでいたが、両親の説得で出産することにした

かなりの難産で体力がもたず、我が子の顔を拝むことなく亡くなった

産まれた赤ちゃんには、何故かへその緒が繋がっていない

産声も上げず、咳をした

病気かもしれないと皆が身構える

ふぁ~良く寝た

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掌編怪談「狛犬」

近所の神社には、子供にだけ伝わる噂がある

夕方、その神社に一人で行って参拝する

その後向かって左の口を閉じた狛犬に質問をする

すると、右の口を開けた狛犬が質問に答えてくれると言うもの

ただし、答えを知ってる質問はしちゃいけない

知ってることを聞くとどうなるかは誰も知らない

面白そうなので禁忌を犯すとどうなるのか試すことにした

胸ポケットにスマホを入れ、動画を撮りながら鳥居をくぐる

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掌編怪談「賽子」

彼女と参加したバスツアー

その途中、休憩で河原に立ち寄った

川のせせらぎ、木々の擦れる音が心地良い

彼女と川沿いを歩いていると、先の方で子供が遊んでいるのに気がついた

水切りや石積をしている子が多い中

手前の子が一人、サイコロで遊んでいた

小さな竹籠にサイコロを二つ入れ、コロコロと転がしている

近づくと目があった

子供は竹籠を伏せ

丁か半か

と問う

俺は丁と答えた

子供が彼

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掌編怪談「過涼」

夏は帰宅するとすぐにシャワーを浴びるようにしている

涼をとるためにも温めのシャワーで汗を流す

シャワーを止め、髪の毛をシャンプーで洗う

温度を下げすぎたのか、肌寒くなってきた

なので温度を上げ、シャンプーを洗い流す

温まったので体を洗い始めると、また寒くなってきた

風邪を引いたのかもしれない

どんどん体が冷えるので、急ぎシャワーを浴びる

シャワーはとても温かい

だが浴室内が寒いの

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掌編怪談「吸う」

ここ最近仕事が忙しい

昇進してからと言うもの、やることや覚えることが増えてストレスが溜まる

帰宅してソファーに座ると疲れから溜め息が漏れる

同棲している彼氏がストローで私の溜め息を吸い込む

ぷはぁ~これで運気はいただいた!

私を元気づけるためか、いつもそうやって笑わせてくれる

そんな日々を過ごしていたが、ある日仕事で大きなミスをした

なんとかカバーしようとするも全てが裏目に出てしまい

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掌編怪談「心知らず」

親知らずが虫歯になったので、上下一本ずつ抜歯した

それから悪夢にうなされるようになった

初めは抜歯による腫れやストレスで悪夢を見ているのだと思っていたが、腫れが引いても変わらず夢を見る

見る夢は全て同じで、二人の子供に責め立てられると言う内容だ

かれこれ二週間もまともに寝ておらず

心身ともに限界が近い

トボトボと帰路を歩いていると声をかけられた

見るとホームレスの男性が座っていた

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