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掌編怪談

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自作の掌編怪談のまとめ
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2023年2月の記事一覧

掌編怪談「洞窟」

先日購入した山を散策していると下見の時には気がつかなかった洞窟をみつけた

喫煙用に持っていたオイルライターを使って探索することにした

5分ほど進んだが生き物がみつからない

さらに進むと広い空間に出た

しかしライターの光では何も見えない

横を見ると壁面から棒のようなものが生えていた

何かと思い触れてみるとレバーの様に下がり、折れてしまった

突如、洞窟内は光に包まれた

眩しくて目が開け

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掌編怪談「白線」

小学生は帰り道で色々な遊びをする

今日は白線の上を歩いて帰ることにした

白線からはみ出ないように下をみながら歩いていると、急に薄暗くなった

顔をあげるとトンネルのような場所にいた

先が暗くて出口も見えないので戻ろうと踵を返す

何故か上手く歩けずに転んでしまった

倒れた地面はねばねばしており、なかなか立つことが出来ない

トンネルから何とか這い出るが、ねばねばの影響で未だに立てずにいた

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掌編怪談「犬」

我が家に子犬を迎えた

先日亡くなった祖父がいつの間にか飼っていたようで、祖父宅の庭にリードで繋がれていたのを引き取った

みたところ雑種のようだ

まだ若くて元気一杯だ

我が家に来てから一年経過した

子犬の顔には成長と共に模様が浮かんできた

日に日に模様が大きくハッキリしてくると、私にはこの模様が知った人の顔に見えてきた

両親は気のせいだと言っている

腑に落ちないが怖いので、そう言うこ

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掌編怪談「百物語」

大学のオカルトサークルで百物語をすることになった

雰囲気を出すため、古民家を借りた

総勢10人で車座になり、100本の蝋燭を囲う

全ての蝋燭に火をつけると順番に怪談を語り始めた

一話語るごとに蝋燭の火を吹き消し、円の外に置く

それを繰り返し、遂に最後の蝋燭を吹き消した

室内は静寂に包まれる

そのまま5分ほど経ったが何も起こらない

時間も時間なので、そのまま皆で雑魚寝した

翌朝、一

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掌編怪談「消しゴム」

左手の薬指の付け根が痒い

手に持ってた消しゴムで擦るとポロっと薬指が取れた

泣きながらお母さんに報告するも反応がおかしい

僕には生まれつき左手の薬指はないと言う

そんなはずないと喚いていると、アルバムを取り出した

そこに写る僕には、確かに左手の薬指がない

取れた指が机に残っているのを思い出して取りに戻る

しかし机に指はなく、見覚えのない木の枝が置いてある

僕は消しゴムを握りしめて、

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掌編怪談「リベンジ」

ランタンの光が消え、周囲が暗くなる

空気が変わったのを肌で感じる

焚き火の勢いも弱くなり、炭が仄かに赤みを残すのみとなった

湖が近いからか妙に肌寒い

ざっざっざっと砂利を踏む足音が聞こえる

少しずつ音が大きくなり、目の前で止まった

顔を上げると見知った顔がある

月明かりに照らされるその姿は、ずぶ濡れで所々欠損している

水を吸ったのかパンパンに膨れており、ヘドロの様な臭いを漂わせてい

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掌編怪談「ノート」

ノートを使いきったが、新しく買うのが面倒だ

余りがないかと机を漁ると、見覚えのないノートが出てきた

開いて中を確認する

一部落書きが描かれていたが、半分以上が未使用だった

そのため落書きのあるページを破り捨て、残りを使うことにした

授業はいつも通り退屈だ

書き間違えたので消しゴムを持ち、ノートを左手で押さえる

消しゴムを擦り付けると、ノートがくしゃりとよれてしまった

押さえていたの

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掌編怪談「閉ざさずの襖」

我が家には閉じることが禁止されている襖がある

居間の横にある和室の襖で、部屋の中には何もない

入室は禁止されていないが、入ろうとすると何故か注意される

ある日の夜中、たまたまトイレに起きた時に思いつきで部屋に入り襖を閉じてみた

今まで気がつかなかったが襖の裏側には絵が描かれており、閉じることでその全体を見ることができた

襖を四枚使って描かれた合戦の様子は、細部にまでこだわりを感じる

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掌編怪談「仏」

働いてる俺が言うのもなんだが、火葬場で働く奴は変人が多い

俺の同僚は特に変だ

火葬の後

骨を骨壺に納める際に、いつも適当な説明をしている

まぁ素人にはどれがどこの骨か何て分からないから問題になったことはない

そいつは時折、遺骨から喉仏を盗んでいる

理由を聞くと、仏を取り込むことで悟りを開くためと言う

取り込むとは食すことらしい

そいつがここ2-3日無断欠勤をしている

上司に言われ

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掌編怪談「心霊動画」

車通りのない夜の山道

そこを走る車が子供を轢いた

車は止まらず、血塗れの子供がフロントガラスに張り付きこちらを覗く

と言う映像が俺の車の車載カメラに写っていた

子供は山頂付近で車から落ちた

運転中に車に衝撃を感じなかったし、そんな子供はいなかった

明らかに心霊動画だ

霊能者に相談すると俺や車、カメラは疎かその山にも子供の霊は憑いていないと言われた

どうやらこの霊は映像そのものに憑い

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掌編怪談「ハンガー反射」

子供の頃、思い付きで頭にハンガーをつけた

すると勝手に首が回る

それが面白くて、しょっちゅう遊んでいた

ある日、試しに飼い犬につけてみると前足ですぐに外してしまう

これでは面白くない

近くにあったぬいぐるみにハンガーをつけてみたが、変化なし

去年買ってもらった五月人形にもつけてみたが、変化なし

部屋の窓から見えたお地蔵さん

その頭にハンガーをつけると、首が回って取れちゃった

怖く

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掌編怪談「無表情」

うちクラスにいつも無表情な奴がいる

常に一人行動だし、友達がいないのだろう

何となく話しかけてみたが、無視された

再度声をかけるも、やはり返事がない

少し腹が立ったので

無視すんなよ

と頬を叩く

カランと何かが落ちた

見るとお面が机の上で揺れている

手に取って気がついた

そいつの顔のお面だった

反射的にそいつに視線を戻す

顔には凹凸が無く、のっぺりとしていた

呆然としてい

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掌編怪談「ポイ」

立ち上がると火のついたタバコを地面に落とす

コーヒーを飲み干してゴミ箱に投げる

カンとゴミ箱の縁に当たり、地面に転がる

気にせず車に乗り込むと先を急いだ

やっとの思いで帰宅すると、ベッドに倒れ込む

翌朝

起きがけにシャワーを浴び、牛乳を一気に飲み干す

静かな室内を見渡して、やっと一人になった実感が湧いてきた

今日は気分が良くて、少し飲みすぎた

酔い醒ましに公園のベンチに座わり、夜

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掌編怪談「ヒト」

実家は山の麓にある神社だ

山そのものを神域とし、立ち入りを禁じている

ここでは神としてヒトが祀られている

実在した人物や現人神などではない

稲荷神社のヒトバージョンだと言えば分かりやすいだろうか

もちろん神としての名を持っているが、まだ教えられていない

俺はいつかここを継ぐことになっている

でも絶対に継ぎたくない

子供の頃に一度だけ神様を見たことがある

長い髪と長い爪を持っており

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