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魔女狩り[短編小説]

こんにちは、マロニーです。
これが初めて投稿する作品になります。焦って作ったので少し雑ですが、どうか温かい目で見てくださると幸いです。
では、悲しき魔女たちの運命を、見届けてあげてください


「おい、聞いたか・・・?今日魔女処刑があるらしいぜ」
「またかよ、魔女の奴らもしつこいな。さっさと全員死んでくれりゃあ穏便に暮らせんのになあ」
「全くだぜ・・・」

いつもは賑やかな街が、今日はそんな暗い話で持ちきりだった。
(・・・)
履いている踵の高いブーツがカツカツと小気味の良いリズムを刻んでいる。
そんな軽快なステップとは裏腹に、私の心は深い藍色に包まれていた。

魔女狩りが始まって約一年。教皇庁のドス黒い考えのせいで、私たち魔女の運命は最悪な方向に進路を変えた。
魔女じゃない人でも、「あいつは魔女だ!」とこじつけをつけられるだけで処刑が確定する。私は無実だと声のある限り叫んだとしても、拷問のせいで自白という名の嘘を吐くしかない。
処刑方法もあまりに残酷だった。斬首で命を奪ったのちに死体を火炙りにして残った肉塊を被害者たちだけで喰らうのだ。
残った骨は海に投げ捨ておしまい。その骨を拾った者は魔女とみなされまた処刑。
まさに地獄絵図だ。
さらに憎たらしいのは、被害者たちは教皇庁に無理矢理″肉″を食わされること。
そりゃ誰だって人肉を食べたいと思わない。だけど、あいつらは自分を守るために意地でも他人の口にそれを捩じ込んでいる。

もううんざりだった。

幸いなことに、私は隠れて魔女の仕事をしていた。自分のためだけに魔術を学び、自分のためだけに魔術薬を作った。お陰で誰も私が魔女であることを知らない。
知っているのはただ一人。魔女の友人、カナレだけだ。

カナレはいつだって前を向いていた。薬を作って、人々を救いたいと唱えながら、貧困に悩む人々に無償で薬を配って回っていた。
あの子はいつも、人のことばかりだった。自分のことなどどうでもいいと考えて、
ただ多くの人が救われるなら、それでよかった。

そして、魔女狩りが始まってから、彼女には一度も会えていない。


人々の話し声に紛れる魔女という言葉が耳の奥に突き刺さる。その不快感を必死に隠しながら、処刑会場へと足を運んだ。本当は見たくない、仲間がこの世を去る瞬間など。
だけど、自分を守りたいなら行くしかないのだ。処刑に反発しているとみなされ自分も死の刃に首を切り落とされるくらいなら、魔女という人種を守るためには仕方ないことなんだと、自分の心に何回擦り付けただろうか。

歩いて20分ほど経った場所に、処刑場はある。街から少し離れた丘の上で、人を殺める行為が行われるような場所には到底見えない。
教皇庁の「罪人にも最期くらいは美しい景色を」という押し付けがましい善意によって、ここに建てられたらしい。
確かに美しい情景だ。街を見下ろすような構図で、周りには広大な草原が広がっている。白百合の香りが心地よい。

処刑場には既に人々が群がり、テーブルクロスがかけられた机を囲むように座っている人も見える。きっと被害者たちだろう。

できれば、さっさと帰らせて欲しかった。


そしてその時はやってくる。
「只今より!恐るべき厄災の浄化を執行する‼︎」
高らかな教皇庁の連中の声が響き渡った途端、大きな鐘の音が鳴った。街の時計台に設置されているグランドベルだ。
厄災?浄化?ふざけるな、お前らこそ厄災だろうと叫びたかったが、なんとか声を飲み込む。もはや処刑か浄化かわからなくなっている。きっと正しくすれば虐殺という言葉がお似合いだろう。
「では、本日浄化する魔女を処刑台へ」
そう声が聞こえて、処刑台へ登る階段の音が鳴り始めた。
カツ、カツとさっきまで私の踵で鳴っていた音と同じリズムが聞こえる。

そして仲間が姿を現した時、私の中の時計が一瞬止まった。

「・・・カナレ」
思わず微かに声が溢れる。
短く切ったブロンドの髪、深い夜の空を映したような藍の瞳、小柄な体型。見間違えるはずがない。

なんで?
なんであの子が?
守れなかった?私がしっかりしてなかったから?なんで・・・?
なんでなんでなんでなんで‼︎!

頭の中に浮かぶ「?」の数が多すぎて処理が追いつかない。
そんな混乱に満ちた私を置いて、観衆のブーイングが始まった。
「この厄災が‼︎!」
「私たちの平穏を返してよ‼︎」
「とっととくたばれ!」

「「「バケモノめ‼︎‼︎」」」
さまざまな暴言がカナレの心をズタズタに壊してゆく。
遠くから見ていてもわかる。カナレの辛さ、悔しさ、そして優しさが。
もし今彼女と話せるなら、きっとこう返してくるだろう。

「私は多くの人々を救いたい、私の死が民を救うのよ」と。


止めなければ。

「ねえ!もうやめましょうよ!魔女たちは何もーーーーーーーーーーーー」
「うっせえ引っ込んでろ!まさかお前、あいつらの味方する気かよ?」
「てめぇ、魔女じゃねえだろうなあ?」
「・・・!」
言葉が詰まった。
やっぱり私はだめだ。友人より自分を守ってしまう。カナレのような人に憧れたのに、いざその時が来ると、どうしても言葉が、体が動かない。

「いえ、忘れてください。魔女は・・・邪悪ですよね。」
「やっぱりそうだよなあ?びっくりしたぜマジでww」
「ええ・・・本当に、そう、ですよね」

嗚呼、もうだめだ。
私は
私はヒーローになれない。
どれだけ抵抗しようとも、時だけは絶対に止められない。


「さあ卑しき厄災よ!この世から離れる前に、我々の慈悲によって最期の言葉を言わせてやる!この世に!何を言い残す⁉︎」
あいつらの声が耳の不快感をさらに増させていく。
カナレは、なんて言うだろう。
どうせ「ごめんなさい」とか「皆さんが幸せでありますように」
とかなんだろう。
どうか、どうかこの瞬間だけは、カナレの本音をぶちまけて欲しかった。

そしてカナレが口を開き、満面の笑みで言葉を溢した。

「クソッタレどもが」

・・・え?
会場にいた全員が唖然とした。
あの子が、あのカナレが、あんな言葉を吐いた事など一度もなかったのに。

「・・・ハハッ」
最早笑けてきた。よくやった、よくやったよカナレ。
私の、私たち魔女の気持ちを代弁してくれたのだ。
「なんておぞましい言葉‼︎‼︎やはり魔女は厄災そのものだ!」
「そうよそうよ!」
「化け物が!とっとと死ね!」
「ざまあみやがれ!死んで償いな‼︎‼︎」

瞬く間にブーイングが再開し、先ほどの倍以上の声が聞こえた。
「では!これより厄災の生を断ち切る!魔女よ‼︎‼︎我々の憎しみを死んで受け止めろ!」
教皇庁が今までで1番張り裂けそうな大声で合図を出し、カナレの隣にいた兵士がカナレの首に大きな斧を振り上げた。


あの後のことは、ショックすぎてあまり覚えていない。
ただ一つ覚えているのは、彼女が命を落とす直前、私を見て
「マーリー」
と、声を出さず口の動きだけで私の名を呼んだことくらいだ。

その次の瞬間、カナレの首から赤き花が咲き誇ったーーーーーーーーーーーー。


いかがでしたでしょうか。初投稿のため、雑な部分や至らない点があることをお許しください。
これからも作品を投稿していきますので、少しでも応援してくれたら幸いです。
ここまで見てくださり本当にありがとうございました。
また次の作品でお会いできたら嬉しいです。
それでは、これからも素晴らしき人生をお送りください。
皆様のご幸運を、心からお祈りしております。



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