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服の単価を上げてみた。

相変わらず肉も魚も食べている。今日はすべての料理から味がした。
なんとこんにゃくの煮物からも味がした。よい日である。ただ煮汁がおぞましい色をしていた。

今日はタイトルの通り服の一着当たりの単価を上げた話。

私はプチプラを愛する。推し活をしているためできるだけそちらにお金を割きたいが故の涙ぐましい慎ましやかな暮らしである。
単純にトレンドを追いたいのもあった。毎年毎年作り出されるそれに乗れたことも着こなせたこともないのだけれど、そういう気持ちがあった。
コスメに関してはうっかり高いものを買うと即日ゴミ箱行きになりかねない危険性を孕んだ繊細な肌質のせいである。昨年買ったシュウウエムラのベースメイク一式は当の昔にお空の上。二度とデパコスには手を出すまい。
今日も私は赤ちゃん向けの日焼け止めを塗って一日を過ごしている。

さて服の話だったな。
近頃の流行りはオーバーサイズ。ふくよかな私にはありがたい限り、と素晴らしい文明であるHoneysで四枚ほどのTシャツを買い手持ちのやはり素晴らしいアメリカンホリックのデニムでふた夏ほど過ごしていた。
前兆はあった。30歳の私は観劇に向け美容デーをこなし帰路に就く。ショーウィンドゥに移るその姿が妙に安っぽいことに。
しかし当時の私は推しの前、現場で姿を取り繕うことができればそれでよかった。くっきりとしたメイクもそんな時くらいにしかしない。
それでよかったのだ、本当に。

そうして今年、すっかり部屋着落ち間際のTシャツを抱えて途方に暮れていた私はやはりHoneysにいた。店内を見ると様々な年代の人がいて心強く思う。だがそこに私が目的とするものはなかった。
今年のトレンドに違和感を覚えたためだ。
しかし買わないと着るものがない、とふらりと向かいの店に入る。セール1,980円~の文字に釣られた。
そこで私は素敵なワイドパンツに出会う。夏向きの綿素材。やや濃いインディゴはきっとなんにでも合うだろう。
新作のそれは当然1,980円ではなかったわけだが、そもそも私はトップスを買いに来たわけだが、満足した私はユニクロのエアリズム数点とパジャマやらとともに帰宅する。(財布は空になった)

そして愕然としたのだった。

手持ちの一軍のトップスとの圧倒的質感の差に!!!
何にもあわねぇ!!と慌てふためいて箪笥を覗くも断捨離にハマっていた自分自身により見事に服はない。あるのはいつ着るかもしれない「余所行き」の服ばかり。
要は捨てるのが惜しくて残していた服たちだ。

とうとう私とHoneysは別れる日が来てしまった。
あんなに愛し合った日々は終わりを迎えた。加齢によって。

そんな日から十日後の昨日、ショッピングモールのセレクトショップで諭吉を二人吹っ飛ばして来た。私にしては大冒険。
今まで手に取ることがなかったようなデザインや色彩のものを選び、着る。売り場と試着室を行ったり来たり。そうして買い込んだ服を家に帰るなり一揃い着てみる。当然違和感はない。
そして次は、と緊張しながら開くのは件の箪笥。余所行きばかりが詰め込まれたそれをひっくり返した(比喩)
いくつかあった滅多に着ないボトムスも引っ張り出す。
ファッションショーの始まりだ。
とはいえ我が家に全身鏡はないためトップスとボトムスをそれぞれ試着し、サイズ感等を確かめた後に床に広げて色の組み合わせや素材の質感を確かめていく。
衝動買いしたスカートが案外生きて、お気に入りのギャザースカートは不格好。ノースリーブでもむちむちとした二の腕はそれほど気にならない。
結果それぞれで10着ずつくらいが生き残り、私なりの「見苦しくない」服は揃った。
本当に一週間友人に会い続けても、現場に行っても困らないような服たちが揃ったのだ。
これを着るのかと震えた。

少し前にフランス人は10着しか服を持たないという本を拝読した。
服の数はともかく、いいものを普段使いしないことはもったいないこと、自分の出来る範囲で最上のものを選択するなど響く言葉が多数あり、ぜひ紙の本でも欲しいところ。
そして6年ぶりに雨宮まみ氏の女の子よ銃を持て(平凡社刊)を再読。
背筋が伸びる思いがした。
十人並みの容姿に良いとは言えないスタイル。拒食症寸前にまで陥ったこともあったくらいには体型はコンプレックスだった。
どんな私にも美しさはあるのだ。改めて読んでそう思った。そして私には存分にお洒落をしていい権利があるし、逆にコスメの類のようにそれを選ばない権利もある。
デブだと罵倒された過去があっても、今の私は別段おしゃれしても後ろ指は差されない。そんな知り合いもいない。

普段はどのようなメイクをすればいいのかという悩みは生まれたが、オタク的には一週間現場に出続けても違和感のない服が揃ったというのは歓喜そのもの。
出尽くした化粧品を眺めながらいっそ道具を変えようかと楽天市場を眺める。きっとそれもすごく楽しくて誇らしい。

あ、アメリカンホリックのデニムにはこれからも活躍してもらいます!
Honeysにもちょこちょこお邪魔します。私選択肢広げないと靴のサイズないんだもの!小物類の充実がすごいですよね。
今まで着てきた素敵なTシャツたち、夏の思い出をありがとう。
来世に幸あれ。

あくまで私の主観ですので各ブランド様を貶める意図は一切ございません。
問題がありましたら改定・削除いたします。
確認はしてるけど読まれないと分からないこともあるからね。

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