専門性は厄介だ

 私は百貨店でアルバイトをしている。先日、エスカレーター付近で人だかりができていたので見に行くと、高齢の女性のお客様がエスカレーター上で仰向けになってうずくまっていた。私は人だかりに割って入って、お客様の体を起こし、エレベータを一緒に上がった。上がった先に椅子があったのでお客様に座ってもらい、あとは警備員の方に任した。
 職場の上司に事の顛末を報告したあと、心配になったので上の階にいるお客様を見に行った。すると、そこにいた警備員の方に、「もういいから、自分の仕事して」と軽くあしらわれた。「邪魔をするな」とでも言いたげな様子だった。私はしぶしぶ職場に戻っていったが、人助けをしたという興奮は急激に冷めていった。
 お客様の救助は警備員の仕事である。よって、素人が入ってきたことに、警備員の方はむっとしたのだろう。それくらい、その警備員の方は自分の仕事に誇りを持っているようだ。しかし、人助けにあたっては誰がやってもいいはずだ。職務を全うするのは良いことだが、その専門性を誇示するのは是非とも避けてほしいなと思った。


 

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