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公務員のキャリアパスとキャリアの可能性

就職先を選ぶに当たって、多くの方が気にするのが「キャリアパス」です。
職業としてその道を選んだら、どんな機会があるのか、何年くらいでどうなっているのか、気になる方が多いのも分かりますが…、「キャリアパス」を気にしたところで、そのキャリアパスを自分が本当に歩めるのかは考えた方がいいです。

(1)「キャリアパス」に含まれるキャリアの2つの意味

「キャリアパス」を気にする人は、どんな仕事を経験して何年くらいでどういう職責を担っているのか、職責にともなってきっと給与も…などと思い巡らせているのでしょう。しかし、経験できる仕事と昇進は全く異なります。仕事として捉えるキャリアパスと昇進として捉えるキャリアパスでは、考えるポイントが異なります。ぜひ、2つを分けて考えてみてください。

①経験できる仕事としてのキャリア

メンバーシップ型の雇用が色濃い我が国では、ジョブで仕事を選ばない限り、民間企業でも公務員でも、様々な仕事に関わることが前提となります。組織が大きければ大きいほど、組織が関係している領域が広く、それらの領域を担当に細分化して機能させています。
それらをジョブローテーションで数年おきに仕事を変えて、幅広く能力を培いながら、自分の適性を見極めていく異動が一般的になります。このため、職業人生を通じて希望通りに異動し続けることは、まず、あり得ません。仮に、興味関心の高い仕事を担当できたとしても、数年で異動してしまうので、いつ戻ってこられるのか分かりません(戻ってこられない可能性も…)。
最近は、内定者や職員に希望部署を聴いた上で、配属や異動を考慮する組織が増えてきていますが、規模が大きくなると全員の希望を全て叶えることは難しくなります。もちろん、全員が希望を出すとは限りませんが、職員も多岐にわたる仕事を予め全て選択肢として考慮した上で希望することも難しいです。

②昇進としてのキャリアパス

まだまだ多くの組織で年功序列的な処遇が残っている(特に公務組織)ので、平均的な評価であれば何年でどのくらいの職責を担えるのかはだいたい期待できます。
しかし、最近では、能力に見合わない処遇は控える傾向にあるので、年数を重ねているから役職に就けるということもなくなりつつあります。国家公務員の場合でも、責任の度合いが重くなる課長補佐以降は、昇進する年次にズレが生じ始めていますし、管理職ともなれば尚更です。
高い確率で実現するだろうという期待も、社会やビジネス環境が変化すれば、全く期待できなくなってしまうかもしれません。ひと昔前であれば期待できたことが、全く期待できなくなってしまった例は挙げるまでもありません。

(2)「キャリアパス」をつくるという発想

昔は組織の言うことに従っていれば仕事も昇進も与えられてきましたが、これからも与えられる保障はありません。仕事も昇進も組織が与えてくれるものでなくなりつつあります。「キャリアパス」を仕事として捉えても、昇進として捉えても、受け身で仕事をしている限り、自分が望むようなキャリアパスを描くことは不可能です。
「自律的なキャリア形成」が叫ばれ、成長志向の若年・中堅が増えていますが、メンバーシップ型の組織でもそのようなマインドを行動につなげていくことは可能です。特に、メンバーシップ性が強い国家公務員ですら、意外と自律的にキャリアをつくるチャンスに溢れています。

①人事異動は多様なキャリア形成の機会

国家公務員の場合、異動のパターンは多々あります。省内他部署、他省庁出向、地方機関勤務、地方自治体出向、在外公館勤務、民間企業との人事交流、国内外大学院への進学、大学・研究機関への派遣など、可能性も含めれば異動先は民間企業以上に豊富です。地方公務員の場合でも、異動先の業務の広さは、民間企業以上にあります。これらは、幅広い職務経験につながり、勤務先によっては若いうちから責任ある仕事ができ、実社会とのつながりや多様な人々との交流の機会があり、学術や外交の世界にも関わることができます。
ほとんどの機会が社会課題の発見・解決に直結しているので、業務に真摯に向き合うことで、関係者からの信頼を高め自分の実力につなげることができます。社会課題の解決に向き合う公務員には、公務員というだけで「信用」してもらえるアドバンテージがあります。この信用を武器に、社会課題の関係者を巻き込みながら課題に向き合えれば、個人として「信頼」される(この人と仕事をしたいという指名を得られる)ようになります。組織外の人からの信頼は、組織や人事に対しても強力な交渉力を発揮することができます。

②複数分野の掛け合わせでニッチを攻める

きっかけは与えられた仕事でも、全力で尽くして関係者からの信頼を獲得できるくらいの実力を得られると、強みとなる分野を持つことができます。教育者の藤原和博さんは、ある分野について100人に1人の人間になり、3つの分野でそうなったものを掛け合わせれば100万分のオリンピックメダリストと同じ確率の人材になれると唱えています。
公務員というだけで公務分野の100人に1人にはなれませんが、幸いにも「行政」は、真逆の価値観も含めて合意を見出す調整力という特殊技能を磨く場でもあります。目の前の行政課題に向き合って課題解決に向けて力を尽くすことは、この能力を磨いて100人に1人の人材になれるチャンスとも考えられます。
さらに、担当している分野についてもしっかりと勉強すれば100人に1人の人材になれるでしょう。ここに、異動先の新たな分野で100人に1人の人材になれれば、行政と2つの分野に通じた3つの領域を持つことができるので、100万分の1の人材になれる可能性があります。公務を通じてここまで成長することができれば、活躍の幅は公務だけに限定されることもありません。

まとめ

メンバーシップ型の組織では、決められたキャリアパスを決められたとおりに歩んでいくキャリアパスがイメージされやすいですが、捉え方と行動を変えれば、メンバーシップ型の人事をチャンスに変えて、自分のキャリアパスを描くことも可能です。キャリアパスを自分と仕事との関係だけでなく、仕事を通じて関わる様々な人を巻き込んで考えていくことで、より個性的なキャリアパスをつくるチャンスにしていくことができます。

 

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