見出し画像

スヌーピーの生みの親、チャールズ・M・シュルツさんがブリッジ愛好者だった件

これまでの記事ではブリッジが登場する文学作品や美術作品などを紹介してきましたが、次は「ブリッジを描いた漫画」がないかと調べてみたところ、なんと、あの世界一有名なビーグル犬「スヌーピー」が登場する超有名新聞漫画『ピーナッツ』の作者であるチャールズ・M・シュルツさんがブリッジ愛好者だったことが判明したのでまとめました〜!

シュルツさんと新聞漫画『ピーナッツ』

チャールズ・モンロー・シュルツ(1922-2000)はアメリカの漫画家です。子供の頃から絵を描くことに親しみますが、戦争が始まると徴兵され、復員後に漫画家を目指します。その後、彼の代表作である『ピーナッツ(PEANUTS)』は1950年に新聞連載の漫画としてスタートし、以後50年の長きにわたって執筆されました。平日版の連載は2000年1月3日が最終回となり、シュルツさんが亡くなった翌日の2000年2月13日に日曜版の最終回が掲載されました。

『ピーナッツ』人気の裏で描かれていたブリッジ漫画

シュルツさんのキャリアのほとんどは『ピーナッツ』を描くことに費やされていたわけですが、シュルツさんは『ピーナッツ』の連載を抱える中で「ブリッジを題材にした漫画」の連載を新聞漫画の配信会社に提案していました。そのタイトルは『It's Only a Game(ただのゲームじゃないか)』というものです。こちらの内容は以下の3種類の書籍で読むことができるそうです。

当初のシュルツさんの提案では「ブリッジのみ」の漫画でしたが、配信会社は「ブリッジ以外のスポーツやゲームも取り上げること」という条件でGoサインを出し、1957年に連載が始まりました。まぁブリッジだけで漫画連載をしても、ブリッジに興味のない人には読んでもらえないし、ブリッジネタだけで漫画を描き続けるのも大変でしょうしね…

この作品は『ピーナッツ』とは異なり、1コマ漫画が複数掲載される形式だったようです。また、『ピーナッツ』の連載を抱えるシュルツさん一人では描ききれないため、実際の執筆はアシスタントをお願いしていた友人のイラストレーターが手掛けていたそうです。結局、2年後の1959年に連載は終了してしまうのですが、当時すでに人気を博していた『ピーナッツ』の連載を持ちながら、あえて「ブリッジの漫画」を描こうとしたシュルツさんはよっぽどブリッジがお好きだったのでしょう。

シュルツさんの伝記本によると、ブリッジと最初に出会ったきっかけまでは分かりませんでしたが、少なくとも最初の奥さんとはブリッジをしていたようです。

1951年に最初の妻となるジョイス・ハルヴァーソンと結婚し、新婚生活をコロラド州コロラド・スプリングズの地で過ごします。人付き合いを好まなかった夫婦でしたが、ご近所のヴァン・ペルト夫妻と親交を持ち、しばしばブリッジをしていたそうです。ちょっと長いですが引用します。

スパーキー(注:シュルツさんの愛称)とジョイスはこのカードゲームが大好きだった。敬虔な神の教会(注:シュルツさんが信仰していた宗教団体)の信者とその妻に唯一許された遊びがブリッジだった。「ふたりは本当にブリッジに夢中でした」とフリッツ(注:ヴァン・ペルト夫妻の夫)は当時のことを思い出して語っている。夫婦でプレイするうちに、「ふたりはとてもうまくなった」。教会の規則でコントラクトブリッジは禁止されていたが、一九五二年に新聞に載ったプロフィール欄では、自分たちのことを「ブリッジ狂」と紹介している。ジョイスはある晩、スパーキーの信仰心がコロラド・スプリングズで明らかに低下したと手紙に書いた。
 間もなくシュルツは禁止されているコントラクトブリッジをやりたくて仕方がなくなり、ブリッジのビッドと遊び方について描かれた最新刊を買い込んだ。その本は、現代コントラクトブリッジのバイブルと呼ばれるエリー・カルバートソンの『ニュー・ゴールド・ブック』で、その見返しにスパーキーは、購入日である一九五二年二月一日の日付と妻と自分の名を記している。(『スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝』デイヴィッド・マイケリス著 古屋美登里訳 亜紀書房 2019 277ページより引用)

(補足:シュルツさんは21歳のとき、徴兵令状を受け取ったすぐ後に母親を病気で亡くしており、その後、母親の葬式をとりおこなってくれた「神の教会メリマン・パーク」の信者となったそうです。宗教活動にも熱心だったそうなので、信者仲間とブリッジをしていたのかもしれません。それにしてもオークションブリッジはOKでコントラクトブリッジはダメってどんな教義なんだろうと謎は深まりますが…)

ここまで具体的に書かれているところを見ると、シュルツさんのブリッジへの入れ込み様は相当なものだったのではないでしょうか。下は引用元の書籍です。↓

スヌーピーもブリッジプレイヤー?

そんなわけで、ブリッジ大好きなシュルツさんは『ピーナッツ』でもブリッジネタを描いています。ちょうどキプロスブリッジフェデレーションさんのインスタでもブリッジをするスヌーピーの漫画を紹介していましたね()↓

上記とは別の漫画になりますが、次の漫画では「第一次世界大戦の撃墜王」に扮したスヌーピーが基地に帰還したところ、整備士役のウッドストック(スヌーピーの友達の小鳥)たちがブリッジに夢中でスヌーピーに気がつかないという場面が描かれています。

画像1

怒ったスヌーピーがウッドストックを問い詰めると「, , , , , , , , ?」と返事があり、スヌーピーは何かを尋ねられているようです。(ウッドストックの言葉は「点」で表現されていますが、スヌーピーには通じる設定です。)それに対するスヌーピーの返答は「Well, with three kings, I'd have gone right to six spades..」というオチです。つまり、ブリッジのゲームについて意見を求められて、それにスヌーピーが答えている、というわけです。

オチのセリフの日本語訳は「そうだね、キングが3枚なら、迷わずスペードを6枚だな…」となっていますが、おそらく、ここで書かれている「six spades」は「6♠︎(=スペードを切り札に6勝ち越しします。)」の意と考える方が自然なので「キングが3枚あるんだったら、ぼくなら6♠︎までビッドしていたかな」とでも訳すでしょうか。オチの4つ前のコマにはゲームの手札が描かれており、その内容とも対応していそうです。(ウッドストックはSだったのかな?)何にしてもブリッジが分かる人にしか通じないネタです。

こちらの漫画は以下の書籍の56ページから引用しました。

この他にもスヌーピーやウッドストックと仲間の鳥たちがブリッジに興じる漫画はいくつか描かれていたようです。

また、カードゲームに関するネタやセリフも探すといろいろ出てくるので紹介したい気持ちもありますが、キリがないので今回はこの辺でお開きとさせていただこうと思います。

一時期話題となった「スヌーピーの名言」として有名な「You play with the cards you're dealt..(配られたカードで勝負するしかない)」というセリフがありますが、これをブリッジ愛好者のシュルツさんが書いたことを思うと感慨深いものがありますね…ではー。

最後に、本記事執筆の参考としたその他の書籍のリンクも貼っておきます。↓


サポートはコントラクトブリッジに関する記事執筆のための調査費用、コーヒー代として活用させていただきますー。