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つい最近まで日本で開催されていたコントラクトブリッジの国際大会「NECブリッジフェスティバル」について

コントラクトブリッジは元々欧米で流行、発展したカードゲームであり、日本においては決してメジャーとは言い難いゲームです。ですが、そんな日本でもつい最近までコントラクトブリッジの国際大会が開かれていたことをご存知でしょうか。その名も「NECブリッジフェスティバル」。一体どんなイベントだったのでしょうか。

NECブリッジフェスティバルは1996年に第1回大会が開催され、2015年の第20回大会まで毎年開催されました。第21回大会以降は隔年での開催となり、2019年2月に第22回大会が開催されましたが、2021年の第23回大会がコロナの影響で中止になり、以後、無期限休止となっています。
(詳細は日本コントラクトブリッジ連盟さんのウェブサイトをご覧ください。)

大会の名称から分かる通り、このイベントは日本の電機メーカーであるNECの支援のもと開催されていました。
NECの企業市民活動を紹介するウェブページでは過去の活動事例としてこのイベントのことが紹介されています。

NECが支援をおこなっていたのは2016年までで、2019年の第22回大会からは「横浜ブリッジフェスティバル」とイベントの名称変更をしていました。(大会の会場がコンベンションセンターのパシフィコ横浜であったため。)

このフェスティバルでは、「NEC杯(NEC Cup)」をかけて世界のトッププレイヤーと日本のプレイヤーによる国別対抗戦が行われたほか、ブリッジの遊び方を教えてもらえる「ブリッジ体験教室」や競技会に参加したことがないプレイヤー向けの「初心者大会」といったイベントも同時に開催されていました。
(古い記事ですが、日本コントラクトブリッジ連盟さんのウェブサイト内に、NECブリッジフェスティバルの見学レポートがありました。子ども向けの内容です。)

今回、このイベントに注目したのは、以前購入した書籍『The Official ACBL Encyclopedia of Bridge』に気になる記述があったからです。

この本は北米地域を束ねるブリッジの団体アメリカン・コントラクトブリッジ・リーグ(ACBL)が制作しているブリッジの百科事典のようなものなのですが、この「History」の中に「NEC SPONSORSHIP」という項目があるんですね。

『The Official ACBL Encyclopedia of Bridge』22ページより

これによると、1989年の世界選手権が開催される際、世界ブリッジ連盟によって大会にスポンサーをつけることが決議され、これにNECが応じたということのようです。その後、1995年までの間、NECの名前がついたさまざまな種別の国際大会が世界各国で行われていたそうです。
『The Official ACBL Encyclopedia of Bridge』には「NECブリッジフェスティバル」に関する記述はありませんが、NECはこの世界選手権へのスポンサーシップを先んじて行なっていたのですね。

また、ネット検索では、アメリカの新聞「The New York Times」の取材記事もヒットしました。

その他、海外のブリッジ団体のウェブサイトの中にはNECブリッジフェスティバルにその国の選手が出場したことを知らせる記事が残っていることもあり、ブリッジプレイヤーの間では意外と知られている大会だったのかもしれません。

企業の社会貢献活動としてスポーツや文化活動への支援が行われるのは珍しいことではありませんが、日本企業がコントラクトブリッジへの支援活動に取り組んでいたとは驚きました。それにしても、どうしてNECがコントラクトブリッジを支援していたのかについてはもう少し調査したいものです。
(類似の例として、インドのIT企業であるHCLが2003年よりブリッジの国際大会を行なっていますが、電気やテクノロジーといった分野の企業と論理的思考力を使うブリッジというのは何か親和性があるのでしょうか?)

2022年現在のご時世で海外からプレイヤーを集めて大会を開くということは難しいので、休止という判断は仕方がないことだと思います。ですが、国際交流という意味だけでなく、日本人に対するブリッジの普及活動としても意義のあるイベントだったろうと推察しますので、何かしらの形で復活することがあると良いですねーではー。

サポートはコントラクトブリッジに関する記事執筆のための調査費用、コーヒー代として活用させていただきますー。