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1930年代の全自動コントラクトブリッジテーブルってこんな感じという話

コントラクトブリッジは複数回のゲームを行って、スコアの合計で勝ち負けを決めるゲームです。そのため、カジュアルなブリッジをする場合には「ゲームごとにカードをシャッフルして配る」という作業が発生します。(競技会やデュプリケートは別ですが。)
なので、熱心なプレイヤーの中には「早く次のゲームをしたいのに、いちいちカードをシャッフルして配ってなんて煩わしい!」と思ってしまう人もいるかもしれません。
そんなとき、こんなゲームテーブルがあったら便利かもしれません。なんと、人間の代わりにカードをシャッフルして配ってくれる「ブリッジテーブル」が1930年代に製造されていました。今回はこちらをご紹介したいと思いますー。

Hammond Electric Bridge Table

今回ご紹介するのは、アメリカ・シカゴのHammond Clock社によって製造された「Hammond Electric Bridge Table」です。こちらはオランダのブリッジ博物館に所蔵品があり、これを紹介する動画がありますのでご覧ください。(音声はオランダ語、英語字幕対応。)

1930年代のアメリカはいわゆる「大恐慌」に見舞われた時代で、時計業界でも廃業に追い込まれる会社が多かったそうです。そんなとき、Hammond Clock社の社長で技術者のLaurens Hammond(1895 – 1973)は廃業をせず、時計以外の新商品を開発しようと決意します。そうして開発された商品の一つがこのブリッジテーブルでした。

この商品が発売されたのは1932年のクリスマス前。ということは、コントラクトブリッジが世界的に大ブームとなっていた頃のクリスマス商戦時期に発売されていたんですね。さらに、翌年の1933年はHammond Clock社の地元であるシカゴで万国博覧会が開催され、そこにこのブリッジテーブルも出品されたそうです。

ここからは、ブリッジテーブルがどんなものか見ていきましょう。
動画をご覧いただくと分かりますが、このブリッジテーブルは天板の下にカードを配る装置が入っています。カードをセットすると、アームが動いてカードを一枚一枚プレイヤーに配ってくれます。アームの動きはまさに時計のようですね。配られたカードは各座席についているポケットから取り出せます。

また、装置の設置面にはこのテーブルの紹介や説明のテキストがプリントされています。ネットの画像で読めるところしか確認できていませんが、説明書のような役割をしているようです。また、ちょっとしたコラムやイラストもついていて見た目にも楽しいですね。

仕組みはシンプルですが、ゲームをしている間に別のデッキをこのテーブルにセットしておけば、次のゲームの手札を配っておいてくれるわけですから、次から次へとゲームを行うことができます。なんて便利なんでしょう!
こういったガジェットが1930年代に発明されていたとは驚きました。

以下は、ネット検索で見つけたあれこれの紹介です。

こちらの画像はChicago History Museum画像データベースに収録されているものです。Hammond Electric Bridge Tableを使用してブリッジをしている人々が写真に収められています。

YouTubeでは、個人の方がこのテーブルを紹介する動画もアップロードされていました。(Hammond Clock社は後にHammond organ社となり、オルガンなどの楽器を製造する会社になりました。こちらの投稿主は楽器コレクターのようです。)↓

その他、ブリッジの情報サイト「Great Bridge Links」の姉妹サイト「Gifts for Cards Players」でも紹介されていました。

また、英語版のWikipediaでも詳細がまとめられていたので参照しました。

余談ですが、世界的に有名なオークションハウスである「クリスティーズ」にこのブリッジテーブルが出品されたことがあるようで、2006年に480ドルで落札されたそうです。商品紹介の「A LUXURY FOR THE BRIDGE ENTHUSIAST」(ブリッジ愛好家のための贅沢品)というコメントがいいですね。↓

というわけで、「Hammond Electric Bridge Table」のご紹介でしたー。現代の私たちから見ればとても「アナログ」なガジェットのようにも見えますが、当時のブリッジ愛好家にとっては手札を配る手間なくブリッジに熱中できる、便利で贅沢なテーブルだったのではないでしょうか。一度実物を使ってブリッジしてみたいですねーではー。

サポートはコントラクトブリッジに関する記事執筆のための調査費用、コーヒー代として活用させていただきますー。