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静岡県 駒場橋 連続曲線コンクリート橋の耐震補強を拝見(県道85号 三ケ日インター線)

 情報を調べ切れていないのですが、RC橋かな。
 道路の曲線部に差し掛かると、その先の上部工の状態が見えることがあります。そして、ときどき「えっ?」と思うような光景に出会います。駒場橋もその一つで、写真のような下部工ブラケットが目に入ってきました。

中間橋脚

 おそらくは横変位拘束構造で、鋼製ブラケットで受け止めるタイプではないかと思います。(水平力分担構造なのか、横変位拘束構造なのか、いささかモヤモヤ状態)

 察するところ、以下のような難しさがあったのではないかと感じています。

  • 橋軸直角方向のL2水平力の規模感と設置する構造の成立性

  • 中空床版橋であり支承部の取替や部分的な改修へのアクセスが困難なこと

  • 曲線橋ゆえに上部工の配筋の疎密があり、上部工の鉄筋間隔の狭い箇所へのアンカーボルト設置ができない。その結果、鋼製ストッパーなどの製品が設置できない

中間橋脚

 部材の構成として特徴的なのは、上部工から下部工への力の伝達です。橋脚梁部側面の面積の少なさゆえの技術的克服ですね。

  • 鋼製ブラケットはアンカーボルトで設置する(アンカーボルトは設置用であり、作用水平力には抵抗しない?)

  • 水平力の作用に対してはPC鋼棒(ケーブル?)を通じて反対面の鋼製ブラケットに伝える

  • PC鋼棒から伝わった水平力は、鋼製ブラケットから橋脚梁部のコンクリートへと支圧応力として伝えられる。

 上部工が衝突する緩衝ゴム部の支持部分については、下部工ブラケットにボルト止めとする構造になっています。

上部工と下部工ブラケットの衝突部
下部工ブラケットを下側より
下部工ブラケットを側面より

 拝見しているだけでも、設計や施工でのご苦労が伝わってきます。
 下部工ブラケットの設置後にPC鋼棒を配置して、ほどよく張力をかけていると思います。このあたりの張力(軸力)をかけておくことで、地震時の水平力作用時にPC鋼棒にすぐに応力を発生させることができます。もし、張力(軸力)がかかっていないと、4本のPC鋼棒の機能開始のタイムラグが発生して鋼棒内の応力がそれぞれでバラバラになり、想定した機能が得られないリスクがあります。一方で初期張力を大きくしすぎると設計時に想定している耐力までの機能分が少なくなってしまいます。リスクとは書きましたが、実際には、弛みが取れる程度にかけておくといった対処なのかもしれませんね。
 駒場橋の話とは別ですが、耐震補強ではアンカーボルトも耐力(降伏点)を用いて設計するので、初期導入軸力の管理ってゼロではないゼロくらいなんでしょうね。施工関連の要領を勉強しなおさないと。。。

下部工ブラケット

 さて、この下部工ブラケットは組立順序としても難しさが伝わってきます。製缶溶接的な組み立てだな、と思いつつ、PC鋼棒を受ける面やその控え材はRibPL溶接後にさらに溶接していくのかな?もしかしたら片面からの溶接のみになってしまう板もあり、図面には開先溶接の指示があって・・・と想像しています。
 一般的には耐震補強構造は発生応力に着目した設計が多いのですが、駒場橋のような構造となると、機能させるための位置や変位・変形にも注目する必要があるので、考えることがたくさんですね。また、実現するための現場のち密さと実現するための施工余裕(調整可能な余裕)が必要になるので、設計~製作~現場の皆さんのかかわりの大事さを感じたところです。

 ほかでも対面する下部工ブラケットをPC鋼棒でつなぐ方式の事例を見かけましたので、別の機会にブログに書ければと思います。