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山梨県 万栄橋~S57台風後の復旧での新旧トラスが並ぶ(国道469号 山梨県南部町)

 山梨県南部町で富士川の対岸をつないでいるのが万栄橋です。一つ上流の橋が富栄橋は富河村と栄村、こちらは万沢村と栄村をつなぐことが由来で万栄橋ということのようです。富士川は甲府盆地内ではおそらく川幅が500mくらいあるのですが、盆地南部から静岡に抜けるあたりまでは狭くなっているようです。さらに支流から流れ込んでいるので、S57年の台風での水害は大きかったのでしょう。
 左岸側から見ると、最初に鈑桁(かな?)が1径間あり、その先に4連の単純トラスが並びます。そして右岸側にも1径間の単純桁があり、国道52号へと接続します。
 左岸側の2連がトラス橋の竣工当初のもの(曲弦トラス)が残り、右岸側の2連が再架設(平行弦トラス)されています。参考にした資料は山梨県のものです。

https://www.pref.yamanashi.jp/documents/100065/yamanashikenryuuuikichisuikihonnhoushin210614.pdf

左岸側より

 山梨大学の資料では昭和36年豪雨での万栄橋の写真があります。側径間部分が違っていますので、もしかしたら護岸がこの時期よりも後に整備されたのかもしれませんね。

https://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~ebosai/pdf/kouzui_panfu3_3.pdf

 歩道部分は側道橋として平行しており、車の往来を気にすることなく見学できます。

左岸側より
橋名板

 橋のたもとには「14トン」の標識がありました。
 耐震補強工事はすでに行われており、落橋防止装置としてはPCケーブル、そして段差防止構造が取り付けられているようです。
 支承部を望遠レンズで撮影してみましたが、下弦材から下に伸びる板があり、ピンの部分の周りにリベット接合になっているようです。ただ、外側には支承の縦の板があるので、どんな風に処理したのだろうか?と感じてしまいました。

固定支承と段差防止構造
竣工時のトラス 可動支承(手前)と固定支承(奥)
※前後に段差防止構造あり
支承部(再架設側) 奥に落橋防止装置(PCケーブル)

 拝見しながら、特徴的に感じた点は2つありました。
 一つは上弦材の綾材の取り付け部です。部材はCT鋼(ビルトアップかな)なのですが、GussPLとの取り合いはI型断面にするために、断面変化をさせています。断面を切る方向に突き合わせ溶接するのが一般的な断面変化のさせ方だと思いますが、本橋では写真のように溶接しています。断面力の伝達にクロスする方向には突き合わせ溶接を使いたくなかったのか、はたまた材料取りの理由なのか、当時の状況があったのでしょう。

上弦材 上横構の取り付け部

 もう一つの特徴的と感じた点は、支点に近い部分での綾材の部材の向きです。CT鋼のフランジを背中合わせにするような組み合わせにしており、中間のGussPLを配置しない方法になっています。今ならば軸合わせが基本なのでこのパターンは採用されないと思いますが、これも現場で組み立てていくための工夫なのでしょう。

CTを背中合わせで配置した上横構

 古い橋が更新されていくことも多いのですが、万栄橋は耐震補強もされており、また高欄などの更新もされていますので、このまま姿がおそらく続きますね。

 土木学会の歴史的鋼橋検索のサイトでも紹介されています。