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諸説あり 中空床版橋 上部工ブラケットのモルタル形状

 それぞれに条件があるので一概に標準化できないのが建設業界の常でして、と大上段に書き始めてみました。以下では、ぶらりと出かけた際に見かけた現場の写真とともに、個人的感想レベルの考察をしてみたいと思います。
 さて、大げさではなくても、一度方針を決めてもさらに課題(解決すべき事柄)が出てくるのが設計者の悩みです。今回は中空床版橋に上部工ブラケットを取り付ける場合を事例に書いています。
 中空床版橋の下面に上部工ブラケットを取り付ける場合、基本的にはベースプレートがLevelになるように設置します。上部工の下面に平行に取り付けることも可能ですが、横断勾配があると、デバイスの芯が上部工に罫書いた位置からずれてしまうので、特に事情がなければ避けるかな、と。(上部工下面にモルタル厚一定で設置されている事例もあります)
 実際に取り付けられた上部工ブラケットを見てみると、ベースプレートの辺からそのまま立ち上がるような形状になっています。

写真1:緩衝チェーンの上部工ブラケット

 無収縮モルタルの施工は、ベースプレートを下面の型枠として用いて、側面にはコンパネ(あるいは板材)を使って囲うように型枠を配置します。下の写真の右側にちょっと穴が開いているように見えますが、注入あるいは気抜きの孔です。

写真2:上部工ブラケットと型枠

 基本的にはこの設置方法が標準と言いたくなるのですが、もちろん適用には限界があります。
 たとえば、横断勾配や縦断勾配が大きな場合です。
 次の写真は曲線PC箱桁にダンパーが設置されている事例です。写真の右上から左下が橋軸方向であり、下っている縦断線形です。無収縮モルタルの打設でもできなくはないのですが、一番厚くなる部分が100mmを越えるような寸法になっており、補強鉄筋が必要です。なので、先に台座コンクリートが施工され、さらに下部工ブラケットを取り付けているようです。最初の事例と異なり、ブラケットのベースプレートより20mmくらいかな?四方に大きな台座寸法の設定になっています。ポツポツとある修復痕は、おそらくコアドリル設置用のアンカーボルトを処理したものだと思います。

写真3:勾配が大きい橋での台座コンクリート

 ときどき見かけるのは、沓座と同じくベースプレートの設置面角部に45°とする台形形状のものです。この形状での型枠の形は良いのですが、上部工へにコンクリート釘などで固定するパターンとは違いそうなので、上部工ブラケットのボルトあたりに何か治具を取り付けているんですかね?(あるいはシール材なのか?と思いつつ)

写真4:モルタル部45°で立上げ(たぶん)

 次の写真はシール材で周囲をシールしたケースで、おそらく無収縮モルタルはベースプレートの外面と同じ形状になっています。シール必要との協議結果だったのでしょう。それにしても、上部工基準・ブラケット位置決め後のいずれで寸法を決めるのか?なかなか現場での位置決めが大変そうです。

写真5:取り付け部周辺にシール材を施工している事例

 おそらく、図1の黄色の部分のようにシール材が写真5の断面になっているのではないかと思います。

図1:シール材施工のあるケースの断面

 見分けるポイントとしては、写真4はベースプレートの上まで無収縮モルタルとなっているのに対して、写真5ではベースプレートにかぶるようにシール材が施工されている点です。無収縮モルタルは小さな寸法では割れてしまうので、写真5のように施工することができない(というか、すぐに割れてくる)と見てよいでしょう。
 さて、写真2でご紹介した方法にもう一度戻り、位置調整の話としまして。ゆるみ止めとしてアンカーボルトは1種ナットと3種ナットの組み合わせになります。写真6はちょうど型枠の設置された状態でして、高さ合わせに3種ナットが活用されていることがわかります。施工面でも便利ですね。

写真6:ベースプレートの3種ナットの使い方

 モルタル部45°に加えシール材も施工されているパターンもあり、この橋で目指す姿に向けた発注者さんと設計者の方のやり取りが伝わってきます。

写真7:モルタル部45°とベースプレートの境目にシール材を施工している事例

 取り付けるデバイスによって考え方を変える必要もあります。写真8は下部工ブラケット上には水平力分担構造を、そして支間側には緩衝チェーンが取り付けられています。水平力分担構造は鉛直にアンカーバー的な鋼材が下がっているのでLevelに設置とし、緩衝チェーンの上部工ブラケットはモルタル厚一定にしています。こういった点を整理しながらすすめるとすっきりしますね(たぶん)。

写真8:中空床版橋の耐震補強例

 以上、拝見した構造物をもとにした個人的感想レベルの考察でした。