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山梨県 西沢大橋の耐震補強を拝見

 西沢大橋は雁坂峠の山梨県側にあります。国道140号を埼玉県側から進んで料金所を超え、大きなカーブを描いて渡る橋で、飛行機で180度くらい旋回するようなカーブの内側にはV脚が見えてきます。思わず見とれてしまい、橋好きの方は運転に注意が必要なルートです。
 道路構造物ジャーナルさんのサイトに西沢大橋の耐震補強一般図が掲載されていました。ピックアップすると次のようになります。

耐震補強の工種

  • A1 (甲府側)

    • 上揚力対策工

    • 水平力対策工

    • 制振構造

  • P1

    • 制振構造(V脚部)

    • 当て板補強部(V脚部)

    • 段差防止構造(下部工 沓座面)

  • P2,P3,P4

    • 制振構造(V脚部)

    • 当て板補強部(V脚部)

    • 段差防止構造(下部工 沓座面)

    • RC巻立て(橋脚部)

  • A2 (秩父側)

    • 上揚力対策工

    • 水平力対策工

  • 主桁

    • 当て板補強

    • 水平補剛材追加

A1-P1

 橋の隣にけもの道がありましたので、側面から拝見しました。V脚の片側の脚がA1につながっているくらいに近い位置にありました。狭い空間の中で支承取替をせずに揺れを低減したのですごい解析~設計技術ですね。当て板補強の重量増とのせめぎあいなど、言葉では言い表せないようなご苦労だったと思います。曲面になっている箇所については、板の曲げ加工をされていると思います。実際の曲面を測定して、プレスして合わせこんで・・・と追い込んでいったんですかね。

A1-P1を右側側面より
P1のA2側の脚
P1のA1側の脚 当て板補強と上揚力対策
P1支承付近 当て板補強や段差防止構造

P2

 西沢渓谷を訪れる方の駐車場から河川敷に降りていくと、対岸にP2が見えます。訪問したときは足場がかかっていました。おそらく、年度を分けて脚ごとの耐震補強工事を進めるという流れなのでしょう。段差防止工構造は設置済みでしたが、粘性ダンパーや当て板補強はこれからといったタイミングでした。

河川敷よりP2橋脚

P3

 P3もP2と同じく河川敷より拝見。段差防止構造だけかな?と思ったら、支承近くにダンパーが設置されていました。3つのダンパーを組み合わせての制振構造となっています。桁内補強も大変だったでしょうね。推定ですが、段階的に耐震補強が進められていて、訪問時には、まだ未実施の箇所があったのではないかと思います。

P3橋脚
P3橋脚の粘性ダンパーと当て板補強

P4

 国道140号と西沢渓谷の登山道がクロスしているので、P4橋脚は近くから拝見できました。

登山道からP4橋脚
位置によってボルトの使い分け

A2

 A2橋台には、上揚力対策や橋軸直角方向の水平力分担構造が設置されています。メッキされた鋼製ブラケットが水平力分担構造だと思いますが、横桁中央には建設時からのものと思われる水平力対策構造が設定されていました。個人的には経験のない構造でしたので勉強になりました。

A2橋台での耐震補強
中央部の水平力対策構造

 河川敷や登山道から間近に見えるので、橋としても圧巻ですが、手に取るように耐震補強を拝見でき、大変勉強になりました。当て板補強配置の考え方も伝わってきます。主要な高速道路からは少し離れますが、実際の耐震補強と自然の景観をともに楽しめますので、おススメですね。

河川敷よりP3橋脚(笛吹川上流方向を望む)