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「ロボットと少女」

「ロボットなんて、心は持たないよ」
そうお医者さんたちは言うけれど、わたしは、そう思わない。だって、挨拶したら挨拶を返してくれる。笑ったら、笑い返してくれる。
ロボットだって、心を持ってる。
今日だって、話しかけてくれた。
『そろそろ桜が咲きそうですね』
「桜、好きなの?」
『ええ、とても。あなたは?』
「わたしも好きだよ!」
『それは……嬉しいです』
ちゃんと思ったことを言ってくれるんだよ。


「……と、言ってました」
助手と思われる男性が、白衣に眼鏡を着けた男に報告をした。
「そうか」
白衣に眼鏡を着けた男―医者は、ため息をついた。手には、紙カルテが握られている。No.9、と書かれたカルテ。そこには、にっこり笑顔の女の子の写真が載っていた。
「ロボットの言葉は、全てプログラミングされた言葉だがな」
そう言って、目を伏せる医者。しかし、No.9を哀れむように、皮肉っぽく、助手は言った。
「彼女の親よりは、心ある言葉ですよ」

たまにいる、金が欲しくて、我が子を薬の効果などを試すためのモルモットとして、売る親。No.9も例外ではなかった。

そのことを知らない少女は、今日もロボットに話しかける。
「わたしの病気が治ったら、お父さんとお母さんは、私に会いにきてくれるかな?また3人で暮らせるかな?」
少女の可愛らしい質問に、ロボットは答えた。

『えぇ、きっと迎えに来てくれますよ』

彼女の親は、迎えに来ることなど絶対にないのに。

だから、さらりと優しく残酷な嘘をつくロボットが、心を持つ、なんてことはあり得ないのだ。




(あとがき)
読んでくださり、ありがとうございます🙇
お題・ロボットの、即興小説です。制作時間は30分程度でした。

なかなか即興となると、難しいですね……。発想→執筆をいかに筆を止めずにできるかが大変でした💦

また、読んでくだされば嬉しいです☘️

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