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図面はシーンで着せ替える

建築を設計してて、「図面」といっても同じ部分で表現がたくさんあるよね、この稼業はさ~笑 と仲間とよく話す。
以前、設計はコミュニケーションだ!と若気の至りのように言い放った記憶があるけど、まだまだその通りだなうんうん、と遠い目でしみじみに思う。

図面は、できあがった建物を表すものでもあるし、誰に何を伝えたいかをクローズアップした図として表現されてる途中のもの、とも思っている。

前回からまったく更新してない2年ほどのあいだ、いくつか建築を建てさせてもらって改めて思ったことなので書きました。


具体的には、
お施主さんに検討してもらうため、設計した建物を実際に建てるために国や地方自治体に証明をもらうため(確認申請や条例のこと)、発注して工務店に見積をとるため、実際の製作図、雑誌や広告の掲載のため。


同じ図面でもシーンによってまるで違う表現になる。
かたるには部分的で、仮想ではあるけど、

同じ鉄筋コンクリート造での窓と外壁
をそれぞれ違った場面で。

一例として、こんな具合に。


同じ部分でも違う図面



大事な点としては、外からも部屋からもサッシなど余計なものが見えず、シンプルな穴みたいな開口とたい!
というとき。

設計してる人によって考えはさまざまかなと思うが、
これはわたしのくくり。

私が考えるには①~③の表現が主だった違いかな。それぞれちょっと語ってみよう。

(なぜ図中の言語が英語か? 絵としてオシャレに見せたかった) 


①は設計をスタートして間もないころ。
ここにこんな窓が欲しいな、とか考えつつお客さんに提案したり、建築コンペティションで描くような、ふわっとした方向性を伝えたいとき。

絵に描いたモチ、ってこともないんだけど、お客さんや他の担当と一緒に建築をああなれば面白くない?、こうしたらどうだろう、と考えたいときにサクッと書く図。つまり、いろんな人と夢を語りあいたい時。

そんな時にサッシに水切りがあるかだの、断熱材はどんな具合で入るだの、たしかに大事なことだけど、かたちを決めるという大きな決断には余計なモノだ。
そんな大きなものを決めるには小さなノイズを省いて、大きな目標を決めていきたいときの表現。


②は、間取りや建物のかたちがぼんやりと決まってきたころ。
引き続きお客さんと一緒に考えていく図面。また、各種協力者や行政に伝えるときの図面。大事なポイントは、お客さんからヒアリングした要望、また構造や設備をつくっていいったらよいだろうと、構造や設備のエンジニアさんに投げるため、また各種法令を満たせるだろうか、と打診し始める。あるいはメーカーさんとか、協力してほしいなと思う作り手側と一緒に検討していく図面。いつでも図を変更できるように、まだまだ簡略化している。
図としては簡にして容。空間がイメージしやすいので、建物の広告や雑誌掲載でよく見る表現としての精度だなと。


③④は、案が決まったときに、建てる前にまとめる図
これがいわゆる工事をするための設計図。
工務店さんに見積してつくってもらうとき、国や自治体に申請をするときに、どうつくるかを表した、精緻な図面だ。

この段階では、
全体として空間がなっているか
そのため外壁はどのようにかたちつくっていくか
断熱材はどのように入っているか
サッシから雨は漏らないか
内側の壁はどのようにつくるか
内装は?

などなど、目的を実現するために、物質としてのつくりをこと細かに表した精度。案によっては、④は省略するかもしれない。必要によっては、③では伝え足りないことを④であらためて大きな図面にして伝えていく。
大事なことは2度言うスタイルで。




こう考えると、図面は「いつ、誰に、何を伝えたいか」で作図の精度が変わる。つまり建築をつくるプロセスの中での、伝わる=ウケる話のネタ=図面はめっちゃ大事、ということ。

建築のおおまかなかたちを提案するときに、④を出されてもお客さんは「いっぱい書いてあるけど、一体あなたは何が言いたいの!?」となるし、
①を工務店に見せたら「わかりません、どうやってつくればいいですか!!」と怒られて、
われ泣きぬれて蟹とたわむる、、またはお酒を飲むこととなるだろう。


完成した設計図は、まじめにいうと設計者はこの通りに工事が進むようチェックしていく元となるもの。
お客さんと工務店がこの金額でいつまでにつくります、とするときの工事請負契約での書類にもなるのでものすごく大事。

でも、ご覧の通り途中の図面も、すこし大げさにいうと夢を実現するために日々変わり続けていくためのもので、同じくらい大事だな、としみじみ。
伝えたいシーンに合うように着せ替えてゆく。

だから、同じ部分でも違う表現の図面を今日もつくり続ける、かれ彼女らに伝えられるように。

ぱなおとぱなこ


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