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身体一つ分だけ潜る(要光の実験住宅)


森の中の地下室を計画した。


木々の間から見えるのは、三角形の屋根だけだ。

森の地下室は、2人で住むことのできる小さな居住空間になっている。


これは具体的な土地があるわけではなく、必要とする場所に必要な光を検討した、「要光の実験住宅」なのである。


断面


この家は、中庭を中心にリビングスペースとダイニングスペースが面し、リビングの奥に寝室がある間取りとなっている。屋外の下り階段で中庭に至り、外部空間から直接リビング、ダイニングに接続する計画となっている。


中庭はその平面ぜんぶ、ぽっかりと天井をあけ木漏れ日が降り注ぐ、唯一の光の器。一旦光を受け止めて、柔らかくなった間接光を部屋にもたらす。


リビング・スペースは切妻屋根の高天井となっている。その屋根からのトップライトがまるでスポットライトのように床を照らす。光の下で本を読んでも良いし、ピアノを演奏しても良い。時間や季節により光は位置を刻々と変える。劇場のように、日常の中に非日常感を演出している。


ダイニング・スペースには中庭を通って入る、他の部屋から切り離された空間。森と連続するように立つ中庭の気を眺めながら、あるいは鳥のさえずりを聴きながら、朝食を摂るのもよいのかもしれない。


生活をするのに必要な分だけ、部屋に光を纏わせる、要あるところに光を落とす建築。この建築は、地下なので壁に外に面する開口部はない。さんさんと光が降るような外に向かう居住空間ではなく、自身の内なるこころを見るような、内省的な空間。

現代の家は、光を採り入れすぎているように少し感じている。全面ガラス張りの家なんて、僕にはまっぴらだ。必要な生活の動作に対して、必要な光を最小限取り入れるだけの内に向かう家があってもよいのではないか、と考えている。要があるからそこに機能や美が良く考えられて設えられたような、茶室の心得に似たものがあるのかもしれない。


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表現するのにたまたま森を選定したが、居住空間に対してもっともプライバシーが求められる都市部の土地にあっても良いのかもしれない、可能性として。

ポッカリと開いた竪穴と、三角屋根の景色は、都市の空白というか魅力的な景観を生み出しそうで、興味が湧いている。僕は都市空間に幻想をもちこむ、夢想家であるのかもしれない。ただし、都市部にあってはとても贅沢な土地の使い方なのは否めない。


ぱなおとぱなこ




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