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自分時間、他人時間

設計で大切なことは何ですか? 斬新で美しいデザイン? 僕もそんな建築設計を目指しています。が、一番大事にしていることではありません。

それは「建築主と一緒に決めたスケジュールを守る」ことです。意外ですか?

建築を取り巻く条件の中には、工事費などのお金、建築主の要望、敷地の特性などいろいろありますが、とりわけスケジュールは大事だと考えています。

建築主と話し合って決めたスケジュールは、できるだけ守るようにしてあげたいと思っています。工事費も大事ですが、スケジュールというのは建築主もいつ建築が仕上がるかの想定で資金計画や事業計画を組んだり、引越計画を立てるわりと大事なので、守るようにしてあげたい。

まあ、確認申請に思ってもないケチがついたとか想定外なことはあるんですけど。(申請機関はこと構造設計に関して最近ナーバスになっている気がしています。)

とにかく納期を守るということは、プロジェクト運営で最も大切で、基本的なことですので、雑誌やネットに掲載されるような美しくて斬新なデザインよりも、僕は建築主の信用を勝ち取りたい。付き合いのある大事な人に喜ばれたいのです。


設計を取り巻くチーム

僕は意匠設計者という立場で仕事をしています。意匠設計は、いわゆるデザイナーのことですが、もっと重要なポジションだと考えています。意匠設計は、「設計の全体を唯一把握するまとめ役」の仕事だと思っています。音楽でいうと指揮者といったところでしょうか。

なので僕の設計スタイルは、初期段階の要望をインプットしたヴォリューム(計画の概形)を施主と決定する頃には、デザインの方針と設備と構造に望むことを「ふんわりと」決めています。

それをもとに、設備設計事務所・構造設計事務所と契約(インハウスで設備・構造エンジニアがいるのは本当にありがたいことです)し、設計のコンセプトと設備・構造の要望を伝えて設計に取り掛かってもらいます。

僕はパースを自分で書きますので使いませんが、施主にプレゼンテーションする頃には、パース事務所に外注依頼したり、インターンの子に模型製作をしてもらう必要があります。

案件にひとつはやったことのないチャレンジをすると決めていますので、設計を進めていると「技術の壁」にぶち当たります。そこでそのデザインを実現するために思いつくメーカーさんに総当たりして、アドバイスをもらったり、作図協力をしてもらいます。

図面が出来上がったころには、確認審査機関(建築を建てるとき絶対通る法チェック機関)や行政(市・区など)に書類を揃えて審査してもらいます。

ここまでで、工事を進められるレベルの設計図にするためには、建築主・意匠設計・構造設計・設備設計・外注事務所・メーカー・行政・審査機関のいろんな人が設計にかかわっています。

僕は会社勤めでも基本1人で担当しますので、こんなもんで済んでいます。組織に勤める人は上司やそのまた上司、後輩なども加わって、さらに複雑な人間模様を呈します。

そして工事を発注するためにゼネコンや工務店に図面を渡して、あいみつをとっていきます。無事着工して工事をしていくわけですが、現場監督や設備工事業者や職人さんがプロジェクトにかかわることになります。



自分時間、他人時間

冒頭で僕はスケジュールが一番大事だ! と言いました。

今の設計環境は、いくらでも建築を推敲できるような、うらやましすぎる設計工程はありませんので、段取りよく設計を進めていくことがマストになります。

そこで僕が流れる時間の中で大事にしていることは、効率化できる工程はできるだけ最短で取り組み、案件のデザインとじっくり向き合える時間をいかにつくりだすかということです。

そこで重要になってくることのひとつが、「自分時間、他人時間」です。この考えは、案件にかかわる人間がとりわけ多い組織設計にいたころから、意識してきました。気にするという小さなレベルではなく、ゾウの少ない脳の広い部分を占める割合で。

「自分時間、他人時間」っていったい何ですか? ということですよね~。

それは、ありきたりっちゃーそうかなと思うかもですが、

必ず、設計の各工程で設計にかかわる他者が考え・検討し・作業にかかる「他人時間」を見積って全体工程に見込むことです。これは自分の時間よりも重要になってきます。まあ、段取りという言葉をもっとタイミングが確定的で細分化したものかな、と。これを考えるには意匠設計を超えたエンジニアリングの基礎がないとと考えるので、いろんなところに学習心のアンテナを張らなければならないのですが、、これはまた違う話で。

他人時間と自分時間は並行に流れては交わるものと意識することが必要になってきます。


例えば。。

基本設計(間取りや仕様・デザインを決定する工程)の終わり、施主のデザインの承認を得て実施設計に入りたいとしましょう。このためには遅くとも1か月前には計画を立てていきます。

図面を外注事務所に渡して、パースを描いてもらいます、2週間ほど(他人時間)。この中で出てきた素案に対して細かな指示を与えていきます(自分時間)。今度は施主にプレゼンをして、施主に社内(家族)で検討してもらいます、1週間程度(他人時間)。具体的な絵を見せれば要望が出てくるものですので、1週間ほど案の微修正の時間を見込んでいます。


もう1例挙げます。

作図の段階で最も大事なことは、意匠・構造・設備が足並みを揃えることでして、これが納期を守ることにつながります。意匠図がないと構造図・設備図が描けないので、構造・設備に係るものは基本設計の頃から最優先で検討しておき、スムーズに描いてもらえるような環境を整えておきます。

構造・設備図が一部でも描けない状態のまま設計を進めると、もう案がぐちゃぐちゃになり整理に時間がとられることや、構造・設備エンジニアが嫌な思いをして突貫で作図を押し付けることになります。できればそんな無駄なことはしたくないので、他人が絡むものは最優先で取り組みます。


一旦、自分時間を捨てて他人に思いを巡らす

「自分時間・他人時間」のコンセプトでのキモは、他人をスムーズに動かすことで得た余剰の自分時間で、案をさらに深く考えることができるようになります。他にはないディテールの考案や、ちょっとしたデザインの工夫(家具とか建具のデザインとか)、興味深い素材の選定などです。

案件は楽しいばかりではなく、生みの苦しみや作業の苦痛が伴います。できるだけ楽しい設計ライフを送るために、一旦自分本位の考え方をやめ、他人の時間を推し量ることは大切なことと考えています。

情けは人のためならず? ですかね。


ぱなおとぱなこ







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