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コストをデザインすること

建築コストをデザインすることはとても重要です。どこもかしこも最上級の技術と素材を使えるような建築は、ほんのひと握りです。コストの視点でいえば、こだわりすぎないことにこだわるような、そんな姿勢が大事なのではないか、という考えのまとめです。


いつもじゃないけど、有名な建築家の家や美術館を見ていると、その全てに気が配られていて、コストかかっているなー、いつかこんな建築やりたいなという目で見ています。

こんな建築はひと握りで、だいたいの建築家はみな、コストには悩まされているんじゃないでしょうか。クライアントを説得するから気にしないよ、という強者もいそうですが、僕は色々考えてしまうので、なかなか言えないのが現状です。


僕が設計するビルディングタイプを言うと、テナントビルや賃貸の集合住宅を設計し、たまに公共建築や住宅って案件が多いです。特に、集合住宅やテナントビルにおいては、賃料で利益を得ないといけないから、その利益率を維持するためには、湯水のごとく工事費を使えないのです。

美しくあり、想定の工事費内で。これがクライアントから与えられるミッション。これが多いです。

依頼される建築の価格感をいうと、"中〜中の上"くらいです。"上"の経験は、片手で数えられるくらい。いつもは、安くはないけれど決して高価ではない建築を任されてきています。でも、いくらテナントビルや賃貸といっても品質は下げられませんので、中くらいのグレード感の工事費にはなります。

案件にひとつくらいは、やったこともない構成、技術、素材に挑戦しようと決めています。設計スタートから完成まで、少なくとも1年以上はかかります。そんな長い時間を付き合っていくわけだから、やったことのないことに挑戦したいじゃないですか。

だから建築をデザインする前に、コストのかけどころをデザインすることを意識して取り組んでいます。

例えば、構造デザイナーと共闘してかたちにこだわって躯体費をかけたなら、素材は安いけどでも見栄えが良いものをとか。外観に風合いのあるタイルを使ったら、インテリアはあっさりとした仕上げ、でもフローリングはこだわるとか。ビルで外観を整える費用がないならば、アプローチとエントランスにだけこだわるとか。などなど。

コストをかける部分と、そうでない部分を、クライアントと打合せしながら仕分けます。意外と”そうでない部分が、お金をかけないでカッコよく見せたいので、料理のしがいはあるんですよね。

すべてをこだわりすぎないことにこだわる、そんなバランス力が大事と、そう思っています。コストの視点だけじゃないですが、建築にはバランスが大事だと思っています。肩の力を抜いたあっさりとした部分があってもよいのでは、と。手を抜くという意味ではありませんよ 笑。今ぼくはそんな案件に取り組むフェーズにいます。

全体がぼやっとまとまった感じが一番よくない。コストが厳しい案件は、1つだけでもこだわり、後はあっさりするようなメリハリが大事です。


やっぱり、挑戦してこだわった部分を実現したいので、他の部分を安くする方法を考えています。それは、代替品を使うとか、安くて見栄えのよいものにするとか、設備など必要度が低いならやめてしまうとか、の手法によって。コストを操作することはわりと楽しいです。

誰も工事費が高くなることを望んでないですしね。住宅を建てるにしろ、テナントビルを建てるにしろ、公共建築にだってクライアントにはなにか必ず目標があります。

無理して背伸びして欲しくないから、コストが暴走しないように、しっかりとコストバランスの手綱を握るようにしています。それでも、こだわりの強いほうなので工事費がいっちゃうんですけど 笑

ちなみに、性能に関わるコストはいっさい落としません。ちゃんと断熱するし、雨水には何重にも対策するし、室内温熱の対策もフツーにやります。建築は工学と思ってますので、安心と快適が損なわれては、人のために建築をつくる意味がないからです。



ちょっと言い訳な感じにもなっちゃいますが。。全部じゃなくて、傾向があると思っている話をします。

すべてにこだわって一部の隙もないデザインは、人を魅了する世界観のある空間をつくりだします。一方、コストのかけどころにメリハリの効いた空間は、ちょっと肩の力を抜いたデザインがあるので、より近しいというか、身近に感じられる気がします。前者が高級フレンチなら、後者は気の効いた定食屋みたいな。そんな気さくな建築?はなかなか現代的なテーマな気がしませんか?なんて。


そのどちらが良いのかなんて天秤にかけられませんが、先ほども言いましたが、僕はいま、後者を目指すフェーズにあります。将来も同じかと聞かれたら、そうでもないような気はしますが。とにかく、与えられた工事費をどうデザインして、新しい挑戦していくという姿勢で設計しています。


ぱなおとぱなこ


建築的エッセイ書いてます。こちらもどうぞ~↓



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