なぜ”xLDK”の間取りだらけなのか

誰もが知っている定番の間取り。寝室+ リビング・ダイニング・キッチンからなる、”xLDK”というスタイル。建売住宅や分譲マンションは絶対にこの間取りといっても過言ではない。家はなぜこの形式ばかりなのだろう?


先に答えをいうと、デベロッパー(開発会社)が不動産収支を組むとき、すべてにおいてxLDKだから賃料いくら、と試算する。床面積が小さくても部屋数が多い方が不動産価格が高くなる。逆にいうと、”xLDK”形式になっていない特殊な間取りは試算ができない。

ということなので”xLDK”の間取りは、住む人の生活スタイルに合わせているのではなく、あくまで不動産会社が供給するための記号にしか過ぎない。まあ、建売住宅は購入者の生活スタイルを決められないだろうから無難にしておこうという意味もあるだろうけれど。

僕みたいに不動産会社で設計してると、60平米で3LDKで、というむちゃぶり案件が飛び交う。やってやれないことはないけど、個室は独房みたい、LDKは食卓置いて終わり、どこでくつろぐのかな?と思ってしまう。8畳以上で法的に部屋名をLDKと記載できることを知っていますか?とんでもなく、小さいですよね。

。。残念ながら今後も、資本主義解体とか革命などが起きない限りこの不動産システムは変わらないと思う。



そんな”xLDK”はいつからあったのか?

それまでは寝るところもくつろぐところも同じ部屋だった。戦後まもなく、西山夘三が”食寝分離”の理論を提唱して、個室+DKの間取りが普及した。時が過ぎ、日本人は家に豊かさを求めて、xLDKの型が生まれようとしていた。

1956年にとあるマンションでxLDKという間取りがはじめて実現した。1970年代高度成長期に合わせてさらに暮らしが豊かになると、またたくまに普及した。高度成長期になって核家族が増えた。だから、xLDKは夫婦と子供2人で計4人くらいの核家族むけの間取りなのだ。

あれから50年以上経った今、何も変わってはいない。それどころか、さっき不動産の話で触れたように、やたらと部屋を区切りたがるので、むしろ空間の質が劣化しているんじゃないだろうか。

日本人は欧米人が言うところの『ウサギ小屋』から脱却できない構造にあるのだ。



現在では、住む人や生活スタイルが多様化している。

子供1人家族、シングルマザー・ファザー、ディンクス、お一人様、高齢者夫婦、LGBT、国際結婚などなど、日本の家族構成は多様化している。

ネットが普及してはやりすたりが恐ろしい情報量とスピードで過ぎ去っていく。だからというわけでもないけれど、夜型朝型、インドア派アウトドア派、都会派田舎暮らし派、多趣味無趣味、生活のスタイルもばらばらだ。

そんな幾通りの家族構成と生活スタイルを掛けあわせると、もう無限の組み合わせがあって、ひとつとして同じ家にはならないはずなのに。でも現実は今も同じようなxLDKの住宅が大量生産されている。ちょっと気の利いたハウスメーカーなら、趣味コーナーを設けてるけれど、やはりxLDKというスタイルから抜け出せていない。”xLDK”信仰恐るべし。


”xLDK”の家があるから生活スタイルが決まるんじゃなくて、逆からのアプローチが本来の住宅設計だ。

昔は”巨人大鵬卵焼き”という言葉があったように、一億人が同じ方向をみて、同じ家族、おなじ生活スタイルだった。

今は違う、個の時代。

自分にふさわしい生活像があって、そんな自分にフィットした家があるべきで、xLDKの間取りはひとつの類型にしか過ぎない。


少なくとも建築家は、生活像があって間取りを考えるという思考回路でいて欲しい。”xLDK"をぶち壊したい。突き詰めれば、キラリと光るクライアントにフィットした個性あふれた家が出来上がるはずだ。時には、xLDK信仰に慣れ切ってしまって思考が凝り固まったクライアントに、新しい生活像をプレゼンテーションするのも建築家の仕事だ。


うーん、こう書いていると家の設計がしたくなる。集合住宅も良いけれど、個人邸は設計者としてもワクワクしますな。


ぱなおとぱなこ


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