特論76.声のAI診断と明石家さんまさんの声

◯声でのAI認知症診断

先日、NHKのニュースで、電話による認知症のAI診断がありました。「本日の日付と曜日、年齢」を入れるだけで、脳の健康チェックの結果が出ます。声のトーン、大きさ、スピードの変化など千余りの要素を分析しているそうです。https://kps.ms/JoXXEfP
認知機能の低下を、90%以上の確率で診断できるといいます。正確には、認知機能の状態を知ることができるということです。
血圧の測定と並んで、使用しているところがあります。心配があっても相談しにくい人に、役立っているそうです。
三宅アナウンサーが、試したところ、「認知機能は良好です」と出ました。
ついでに、歩き方から、研究しているところの例も出ました。
0120-46-8354 で、2023年3月末まで、フリーダイヤルです。(10/21NHKニュース)

◯声のAI診断は、血液検査のようになるのか

BS世界のドキュメンタリー「ファーストインプレッション」では、声の中に含まれている情報で、あらゆることが検査できる未来像を描いていました。(BS101 9/29)
これからは血液や遺伝子のように、声の状態でその人の病気が確定されるようになるそうです。確かに、1つのデータとしてヒントになるとは思います。しかし、それだけでわかるということは、いくらビッグデータを元にしても、かなり大雑把なことです。
「AIだったらわかるが、人間の耳ではわからない。」
そんなことはないのです。むしろ、人間の耳というのは、かなり緻密なところまで分析できます。
まして、そうしたトレーニングを積んだ人であればなおさらですが、残念ながら、そういうトレーナーは、ほとんど、いないのです。むしろ、社会的な経験が豊かな人の方が、わかるかもしれません。カウンセラーや人事の面接官、保健室の保健師さんなどです。

こういう診断で、私がいつも懸念するのは、なぜ正常なときとのデータを比較しないのかということです。声に関しては、かなりの個人差もあり、また演出、脚色めいたこともできるために、ビフォーアフターを比べることこそが重要です。
何かしらの変化が、起きたときに、何が変わったのかが大切なのです。

◯声でみる性格診断

精神的心理的な障害や葛藤を抱えている人、あるいは、大人になる前に引きこもりや不登校児などで声を出さなかった人は、大人になって社会復帰しても、その喋り方や声に独特のクセがみられることが多いです。
お笑いの芸人さんや学者にも多いです。ジャングルポケットの斉藤慎二、千原ジュニア、太田光、IKKO、JOY、宮本亜門、眞鍋かをり、指原莉乃、前田敦子、品川祐、中川翔子、マツコ・デラックスさんなど。

これは欠点ではありません。内向的な性格がプラスに作用して、社会で活躍する人が少なくないのです。その声は、なかなか個性的であって、直す必要はないのです。
なかには、自分の声を気にしている人もいます。話し慣れていないために機能的な面で劣る場合は、滑舌や発音を練習すればよいだけです。事実、このなかの何人かは、ヴォイトレをしています。
声のくせにあたる音色そのものやしゃべり方に関して、変えたければ、発声、共鳴の問題なので、専門的なトレーニングや声楽などを習ってみるとよいでしょう。

<文部科学省は、2021年度実施した「問題行動・不登校調査」の結果を公表。「不登校」と判断された小中学生は24万4940人、いじめの認知件数は61万5351件。過去最多。10/27>

◯さんまさんの声

爆笑問題の太田光さんが、漫才での動きを維持するために腹筋や腕立て伏せを日課にしていることを告白。それでも「声が早く枯れるようになった」と田中裕二さんから告げられます。
 太田さんから「さんまさんは、ずっとその声ですね」と振られたさんまさんは「おれはずっとかすれで。2カ月休まないとあかんねん。2カ月休んで、誰ともしゃべらなかったら元の声に戻れんねん」と専門家から告げられているといいました。

同じ時期、別の番組ですが、
「さんまさんのひどい状態の声にゲストのコメンテーターの林田康隆さんも同じような状態だったので、小杉さんが突っ込んでいました。
さんまさんは「俺もそうやねんけど、音声で反応するものが反応しないでしょ。俺の声で反応しないねん、ゲームとか」 
「それで番組1本つぶしたことあるねん」と。
「ハウジングの住宅に行って、声で(家財)全部が反応するっていうレポートに行ったんやけど『カーテンを開いてください』って言ったら、テレビがついてもうて…」と苦笑い。お蔵入りになったそうです。
ゲストコメンテーターの林田さんも「Siriは結構、困ります」と同調していました。
(「踊る!さんま御殿!!」10/11 ホンマでっか!?TV」10/12)

◯悪声について

明石家さんまさんの声については、これまで、どちらかというと悪い見本として取り上げられてきました。一度、どなたか専門家が褒めていましたが、忘れました。
私が知っているなかでも、喋りやすくても、歌いにくい声です。女性でいうと、久本雅美さんが当たります。

もちろん、発声の能力と歌の才能というのは別です。そうでなければ、彼らがうまく歌えるとか歌いにくいということではありません。ヴォイストレーナーでも歌がうまく歌えない人もいれば、発声さえ、ちゃんとできていない人もたくさんいます。ただ、うまくとかちゃんとというのが程度の問題なので、どこまでということであれば、とても評価しにくい問題です。

◯悪声の欠点

さんまさんの声では、歌声、特に高い声での弱い声などは出にくいでしょう。ファルセットや裏声、その切り替えなど難しくなります。いわば、声が荒れた状態なのです。
声としては、嗄声という、かすれ声、いわばハスキー声です。声帯に結節ができているか硬化して、柔軟に合わさりにくいことが考えられます。それをやや力ずくで吐く息で強く使って声にしていることになります。
のど輪で責められる相撲取りや喉に衝撃を受けるレスラーなどにも、そういう声の人がいますね。その場合は、外部的な要因です。

◯悪声の原因

最も多くの原因は、使い過ぎです。使いすぎると、だれでも悪い状態になります。それを回復させないで、そのまま休みなく使っていったことによる慢性的な発声障害と思われます。
悪い状態において使い過ぎを、自覚なしに力ずくで使っているうちに、癖がつき、無理な発声になってしまうのです。

◯まねでの発声障害

同じような例では、ものまねによる発声障害があります。自分に合わない声を真似ていると、かなりの無理がかかってしまうわけです。
それも、ハスキーな声になったりするとなおさらです。
さんまさんのものまねをずっとしていると、やはり、そういう出し方になってしまい、喉の状態も同じようになっていくわけです。
ただ、ものまね芸人ともなると、ある程度いろんなパターンを真似ていきますので、その幅が広ければ、うまく調整できるでしょう。同じようなタイプばかりを得意としていると、やはりそこは注意を要します。本人もそういう喉や働き方を得意としている場合なら、あまり問題になることではありませんが。

◯アルコールや老化

この声は、アルコールを飲んで、しゃべらなくてはならない職業、水商売の女の人などにもよく見られます。
歳をとっても、声はかすれがちになりますが、どちらかというと、弱くてモゴモゴしてしまうために、老けた声に見られます。
それに対して、ここに名前をあげて、述べてきた人たちの声は、パワーに溢れ、気力、体力のある人たちです。発声では、理想のフォームを身に付けないままに使ってしまっている例です。

◯声の回復

さんまさんの声が、2ヶ月休みを入れたとして戻るかどうかわかりません。
こうした声がれをこれまでも何度も繰り返してきたようです。
ですから、多分、無理しなければ、以前の状態に戻るでしょう。ただ、美声になるようなことではないと思います。歳とともに回復しにくくなってきますし、時間もかかるようになってきます。

◯悪役の声

役者さんにもよく見られます。悪役のドス声みたいなことで捉えられていますが、発声からみると、声のよい悪役の人と声の悪い悪役の人がいます。
かすれている声、いきむ声、力む声などは、声の悪い方になります。太くて低くて響く美声の悪役もいます。それは、主役級の人です。
つまり、ここで声の良し悪しといわれているのは、共鳴においての判断です。

◯声の共鳴

共鳴というのは、響くということです。例えば、小さな声でも遠くまで聞こえる声は、共鳴がよいといえます。
もちろん、あまり共鳴しなくても、芯があるような声であれば通りますので、そこは、なかなか難しいところです。
歌声になると、共鳴する方が有利なのはいうまでもありません。共鳴が豊かな声は、マイクに入りやすくなります。つまり、空気振動をうまく使っている、効率のよい発声といえるのです。

◯能と狂言の声

能などでは声をくぐもらせ、こもったようにして出します。お面があることもありますが、人間らしい表現をあえて消すわけです。それに対して狂言は、明瞭で響いて飛ぶような声で、わかりやすいです。2千人の観客に生の声で伝えられる声です。
私がその辺の仕事をしていたときに、狂言について扱いやすかったですが、それは、ストレートに出せる声だからです。

◯ハスキーな声

ハスキーな声がいけないというわけではありません。そういう声で魅力を出している歌い手も役者もいるからです。ただ芸事では、確実に再現できること、精査した表現がていねいにできることが大切です。不安定な声や使いにくい声は、当然デメリットになります。それどころか無理をすると声にならなくなります。こうなると、どうしようもありません。

◯声と心身

声の小さい人や弱い人は、心身を鍛えることが、基本条件となります。
太田光さんが、身体を鍛え直すことによって、声を守ろうとしているのは、よくわかります。
病み上がりの人の声を聞けばわかるとおり、心身は直接、声に影響します。
声は、呼吸によってコントロールする以上、呼吸を司る筋肉が衰えては、当然うまくできなくなります。もちろん、身体を支える下半身の筋肉についてもです。

◯声のための喉トレ

呼吸を声に変えるところは、喉であり、喉頭のなかの声帯です。その筋肉やそれを支える筋肉を鍛えて維持しなくてはなりません。
これは普段、話すことや歌うことで使って、維持しているわけです。そうした活動が少なくなると、使わなくなる分、衰えるのです。
この小さな筋肉を鍛えるということを発声トレーニングなどで行うので、なかなかわかりにくいところがあります。

◯共鳴のトレーニング

単純に朗読を繰り返すだけでも、元通りになる人もいます。滑舌の練習として早口言葉などをいうことで、表情筋や共鳴を良くすることもできます。
しかし、本当に声帯やそれを司る筋肉が衰えたとき、あるいは力不足のときは、細かなところからていねいに、共鳴のトレーニングをすることを勧めます。言葉と違って、発声器官を無理に使うことがなくて済むからです。
わかりにくいなら、ハミングでやってみるとよいでしょう。発声練習がなぜ母音で行われているのかは、発音でなく発声を、言葉でなく共鳴を、最も基本的な声のトレーニングと捉えているからです。

◯身体に合った声を

さんまさんの場合は、あの喋り方は、本来、彼の身体の理想的な発声には合っていません。身体が話すことに追いついていないまま、しゃべりの形ができあがってしまったのでしょう。

◯メンタルからの影響

これは、10代になる頃までにあまりしゃべらないできた人にも見かけられる特色です。引きこもりや、精神的なことで、ほとんど、しゃべらない10代を送ってきたような人が代表例です。
そのような癖がついてしまうか、鼻のほうにかかったりして、普通の人が普通に聞いてみて、ど真ん中でないなという、やや不自然な印象を受けるのです。そのくらいでは、社会的な生活、日常生活で何かの制限を受けることは、ありません。気にしなければ済む程度です。

◯声量不足

先述したように、学者やモデルタイプに多いのです。そういう人の声を聞くと、私には、大体、想像がつきます。そこから、一転して人前でたくさんしゃべらなければいけないような仕事が続くと、こうした現象がよく起こるのです。
そのあたりのことで、プロダクションからいらっしゃるのが、こういうモデル出身の人たちです。それを歌手デビューさせるとか舞台で芝居をさせるとなると、難題です。女優さんのようにセリフで伝えていくようなプロセスを踏めない、時間がない場合が多いからです。あまり活躍できていない声優さんにもよくみられるケースです。
別のパターンとしては、小さい頃から、劇団や合唱団で、きれいな声を出してきた人たちです。声変わりのときに、いろんなトラブルを抱えて、その問題を引きずっていることがあります。

◯大声での酷使

もう一つは全く別のタイプで、10代後半から演劇など、お笑い芸人も含むかもしれませんが、急激に大きな声をたくさん使うようなことを行ってきた人たちです。
自分の身体と発声がうまく合っているかどうかというのは、わかりにくいものです。
例えば10代の時に野球部や応援団に入って、1年間ぐらい、毎日のように大きな声を出し続けた場合です。それによって、どんどん声が出るようになり大きくなっていく人と、声がかすれるようになったり、どんどん出にくくなったり発声障害を起こしている人がでてきます。一定数うまくいかない人が出ることでわかります。

◯声優とお笑い芸人の声の地力

昔は、それを乗り越えたような人たちが、役者や歌手になったのでわかりやすかったのですが、今、大きな声が出るということが問われなくなってきたので、問題が見えにくくなっています。
しかし、一流の役者や声優を見ますと、若手であっても、相当に大きな声をきちんと使えるわけです。アニメで大きく誇張された笑い声を、30秒にわたって出し続けるというようなことは、今の歌手にはできません。喉を痛めかねないので試みない方がよいくらいです。
お笑い芸人なら、大抵、できます。そういったことを声の地力として考えてみると、わかりやすいと思います。

◯声の実力基準

声の実力というわかりにくい分野も、そうシンプルに考えると、そのステップがわかりやすくなります。すると、初めて、上達していくプログラムというのが組めるのです。

今のヴォイトレというのは、そこにベテランの役者さんが来ると全てクリアできてしまうような程度の事しかやっておりません。それでは、本当の意味で10年後生き残っていくような基礎力にはならないのです。
ですから、声優であれ役者であれ、声に関しては、ベースの能力として、世界のオペラ歌手レベルを目指しなさいと、私はアドバイスしているのです。
それを目的にすると迷うことはないし、仕事がうまくできたなどと思い上がることもありません。

◯声の状態をみて休ませる

一言付け加えると、さんまさんの声は、ジャズならやりようがあるかもしれませんが、オペラにはとても不向きな状態です。声そのもののことではなく、その声の状態が、ということです。
声を休ませるのは、最も基本的な解決法の1つです。ただし、売れっ子の芸人や仕事が立て続けに入っている人に、そのアドバイスは、引き受けようはありません。
それでも、できる限り声を使わないようにすることが、唯一の解決法です。
具体的には、電話やおしゃべりをしない、仕事以外で声を使わない、仕事の時も声をセーブする、リハーサル等では声を出さないようにできるだけする、アルコールを控え、充分な栄養と睡眠をとることも基本です。
もちろん、心身の状態によっては、違うことも加えます。
特に、以前と何か変化がないかを聞いてアドバイスします。

◯発声のズレ

声の癖は、発声フォームのズレを表しています。声の特色が個性と言っても、普通に喉に負担のないような発声にしていくことは、難しいことではありません。
スポーツなど同じで、癖をつけたために部分的に力が入ってそこが疲れやすく全体がおかしくなっていくことを、矯正すればよいわけです。つまり、基本の基本に戻るということです。
そこは、医者などに行っても解決しません。

◯声の職業

教師、講師、販売員、営業マンなども、声を使用する職種です。
声は、健康のバロメーターで、病気のリスクを知らせてくれます。
最近は、音声の分析から、心身の病を見つけ出す試みが行われています。
ビッグデータとAIを使い、そのうちに、ある程度、病状や病名までわかるようになるでしょう。声にはいろんな情報が、たくさん生まれているからです。

◯声の診断

レントゲンやCT、MRIのように、声紋分析が使われるような時代が来るのでしょうか。
一般的に当てはめるよりは、健康なときのデータを取っておき、それに対する変化で見た方が確実だといえます。
音声クリニックから、声帯の写真を持っていらっしゃる方もいます。
声帯の写真が、病因として、あるいは、プロの喉の確かなものであれば、私たちも、写真をもとにトレーニングをしていくはずです。しかし、現実は、一面でのヒントに過ぎません。

◯声帯ポリープ

そういう点では、ポリープなどは比較的、診断しやすいものといえます。大きければ、手術で取り除くことです。
しかし、他のほとんどの病気については、よくある声帯結節などでは、かなり複雑です。
症状が出て、声帯がそうなったのではなく、症状が出る前にも同じような状態だったかもしれません。とすれば、それは、もともと、そういう状態だったのであり、その病状と関係はないのです。

◯プロの声は例外

一般的には、声帯の診断で判断できることは、プロの声の使い手の場合は、必ずしもあてはまらない場合があります。例えば、声で年齢や性別、身長、体格などがわかるというのも、ビッグデータとまではいわなくても、一般的には、ある程度、通じることはあります。
私たちが声を聞いて性別を判定するくらいにはわかります。案外と、私たちの耳は聞き分ける能力が高いのです。それでも、男性の声を女性、女性の声を男性と、間違えることもあるでしょう。まして、プロの声となると、必ずしも当てはまらないのです。

◯声帯だけで決められない

同じく、声帯の状態に関しても、このような声帯や状態で、あのような素晴らしい歌唱や声が出るとは信じられないというケースもあるのです。
例えば、ヘビースモーカーで歌手というような場合です。これが皆、ハスキーヴォイスであるというならわかりますが、必ずしもそうではありません。

◯個性と声帯の器質や使い方

歌唱やセリフは、声の使い方ですから、声帯やその状態がよいのに越したことはないのですが、使い方によっては、そうでないからこそ、素晴らしいということもあるのです。特に個性的である場合は、なんらかの変形や特殊な形態や使い方をしていると考える方がしぜんです。

これを私がストラディバリウスのバイオリンで例えています。高価な楽器で弾く方が、同じ演奏家であれば、優れているとなるでしょう。
しかし、エスニックな分野での演奏家であれば、自分に合った楽器を自分で作り、素晴らしい音を出す場合もあります。つまり、楽器そのものを自分に合わせて変えてしまうということです。
楽器の場合は、その人に合わせてストラディバリウスが作ったわけではありません。しかし、スポーツ選手などの道具、靴などは、今や、選手に合わせて個別に合うように作ります。
となれば楽器でも同じようなことがいえるでしょう。

何よりも声は、自分が使うものだからです。医者の診断は1つの情報にしか過ぎないのです。一般的には当てはまるが、プロにはあてはまらないのです。私は、参考にしますが、そのまま受け止めることはしません。

◯医者の絶対安静アドバイスに

医者が治療で「何ヶ月やすみなさい」とか、「何週間も、声を出さないように」というような注意は、安全策です。プロとして第一線で声を使う人たちには、なかなか守れません。手術でさえ、仕事があるから、自分なりの直感的な判断で、かなり短く早く復帰しているのが現状です。
この辺の判断は、医者と私たちの最も異なるところです。
しかし、無理をすれば、最悪の事態になりかねないので、そうしたアドバイスは、重要であり参考にはいたします。最終的には、本人の判断となります。
そうしたところでの勘が鋭くなければ、自分の喉、身体を知っていなければ、ブロとしての仕事は続けられないわけです。その勘を磨いておくのも、厳しいレッスン環境においてのことです。自分の限界を伸ばしつつ、限界も知っていくということです。
安全に確実に上達していくには、とても時間がかかります。
トレーニングは、それを早く習得するためではなく、本来は、普通ではとても到達できない高みに行くためのものと私は考えています。しかし、そうした目的は、本人が決めることと思っています。
この辺も特に誤解されているところだと思います。

◯声の使用量

声を出すのは1日どのぐらいまでなのでしょう。
これも個人差や出し方や、どのぐらいの声量、声域を使うのかによってケースバイケースです。1日の中で、正味どのぐらい声を使っているかをチェックしてみましょう。例えばカラオケで2時間歌っているといっても、1人カラオケでなければ、正味20分も使ってないことも多いわけです。1曲5分でも歌うのは半分です。
ものまね声やわざとかすれさせたり、怒鳴ったり泣き叫んだり、獣の声を出したり、そういうものは、短時間でも痛めやすいと思います。その分は、マイナスと捉えておくことです。

私の経験では、集中して声を使えば3時間くらいではないかと思います。もちろん5時間でも8時間でも使えると思いますし、使っている人もいます。調子がよければ気にならないものです。
ただ、喉の調子が悪いときもあるし、リスクを考えると、練習において、声を出さなくてもできることもあるので、レッスンなどでは、最大3時間、できれば90分あたりを目安にしています。

私は、専門学校で授業していたときに6時間ぶっ続けというのがありました。レッスンにおいては12時間ぶっ続けもありました。それだけの時間全て、声を出しているわけではないのですが、鍛えられました。もちろん、20歳の人には勧められません。

◯声のベストコンディションづくり

スポーツなど同じように、声が自由に出るようになるには、1日の中でも、ある程度そういう状態になる時間が必要です。これが、すぐにピークに持っていける人もいれば、1時間以上かけてからようやくという人もいます。
個人差でもあるし声の質や発声法にもよります。

言葉の発音は、発声の共鳴を妨げて音を作りますから、せりふなどでは疲れたり喉に負担がきたりすることも多いわけです。
もちろん姿勢から呼吸法、発声で注意したあらゆることが、この持続力に影響してきます。
だからこそ基本の発声をマスターして、きちんとしたフォームで出すことです。

本当に理想的な発声であれば、同じ状態をずっと持続できます。
基礎は再現力だと言っていますが、全く狂いなく同じことを続けられる力こそが基本の力なのです。しかし、いくら発声が正しくとも、呼吸や身体が疲れてきますから、限度があるわけです。お腹の筋肉が疲れて声が乱れてくる、喉よりも腹筋が疲れてやめる、そうなればかなりのレベルの練習です。それは鍛えられた腹筋においてということで、弱い腹筋のせいというなら、一般の人以下でしょう。
(冒頭のみfukugen引用10/28)

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