出産のこと

4/21最後の病院での診察。貧血の再検査の結果をもらう。

最後のエコーと、初めての内診によると、赤ちゃんは3000グラムを超えており、その割に子宮口は全く開いていないので2週間後の予定日を超えても生まれてこないだろうとのこと。そしてこのままいくと、その頃には3000グラムを楽に超えているので、助産院で産むには本当に大変になるだろうとのこと。

「ゴールデンウィークだし、受け入れてくれる病院もないだろうし、大変な道を選んだね。うちは無理だから。」

とお医者さんの捨て台詞。最後の最後まで意地悪を言う病院の先生。助産院を辞めて病院で産めと、なぜ、助産院にこだわるのだ、とずっと文句を言い続けたお医者さんだった。どんな脅しにもめげずに、助産院出産を諦めない私に、それならとにかく早めに助産院に行って検診を受けたほうがいいとのこと。

私の生活も体調もしっかり安定しているし、赤ちゃんもすごく元気だし、病院での診察までは絶対に破水するものかとかなり慎重になってきた分、ここからやっと動けるようになる。体の準備も進んでいくだろうし、順調な氣がするけれど、そこまで危険だと言われたらちょっと心配になってしまって、助産師さんに連絡。

すると、「心配しなくても大丈夫。初産婦さんで予定日の2週間前に子宮公が開いていないのなんて普通だし、赤ちゃんにはそれぞれのペースがあるから。心配しなくても予定通りの検診で大丈夫。」

と自分の感覚が思っていた通りの安心な答えをいただき一安心。お医者さんというのは不安にさせるのが商売なのだなと。そうでなかったら病院行く人いなくなるもんね。

4/26日、助産院での検診の前の晩の1時。強めの生理痛のような痛みが始まる。これが噂の陣痛??わからない。

15分おきくらいに痛みが来るようになり、言われていた通り、カウントを開始。10分に一回の陣痛が1時間くらい続いたら連絡するようにと言われていたので、ベッドの中で一人時計をみて痛みの回数を数え始める。4回目くらいで痛みの波は終わってしまい、おやおやと思って、ネットで調べてみると、前駆陣痛だったらしい。なんだかほっとして、そのまま寝てしまい普通に次の日を迎える。

4/27、再び夜中の1時。昨日よりも強い痛みが始まる。

「これ、陣痛だ!」となんとなく直感する。

ドキドキしながら時計をチェック。10分置きの陣痛を数え始める。

7回目。「あら、無くならなかった。予定日より全然早いのに!!本当に陣痛だ。」

しかもトイレに行くと「おしるし」が。

そっと隣に寝ている雅人くんを起こしてみる。

「本物の陣痛はじまっちゃったみたい。」雅人くんは飛び起きて、慌てて荷造りを始める。

「ビデオカメラってどこだっけ??」との雅人くんのセリフに吹き出し和む。笑

3時過ぎ、陣痛が6分おきくらいになったタイミングで、助産院に行くことに。

おにぎりを作り、出血を抑えると聞いた柿の葉茶を水筒にたっぷり入れて、朝の5時を目指して助産院に向かう。

早朝5時に女三人に到着。早速内診。病院の先生の内診とは全然違う、優しく、命と対話するような内診。

病院での内診があまりに業務的で痛くて雑でショックを受けていたところだったので、嬉しくて感動する。

診察によると、子宮口はもう結構開いているし、筋肉も柔らかいとのこと。いい陣痛さえ来ればお昼頃には産まれるだろうとのこと。

早速、いつも問診をしてもらっているリビングルームでリラックスしながら準備に入る。子供のおもちゃや本がたくさんある、とっても優しい雰囲気の部屋。ソファーに座ったり、歩いたり、ストレッチしたりしながら陣痛の波にのっていく。数時間だったかな、リラックスしていたら眠ってしまい、陣痛が少しずつ遠くなっていき、15分に一度くらいになっていってしまう。

そんな状態が続いたので、一度、2階の宿泊部屋に荷物を置いて朝ごはんを食べ、おさんぽにいくことに。

雅人くんと二人手を繋いで、徒歩5分の海まで歩いていき浜辺でスクワット。陣痛が来るたびに止まって深呼吸。

陣痛は10分おきになり、そこからさらに徒歩10分の公園まで歩いていき、軽い運動。ちょっと強くなった陣痛と共に近所の素敵な家の庭を見て周り、助産院に帰る。

再びリビングルームで産む体制に入ってみるも、赤ちゃんの頭は下がってこず。そのまま初日は終了。

10分おきの陣痛のまま助産院にお泊まり。

2日目もゆっくり進む。母が来たり、何やかやあったけれど、記憶なし。

確かその夜から痛みが激しくなり、何度か波が来るもなかなか進まず。とは言うものの、私自身出産が初めてなので、その時はどの状態が進んでいて、どの状態が停滞しているのかすらわからない。

陣痛をリラックスして逃すので精一杯な感じ。

薄暗い部屋の中、陣痛の合間の5分の間に一瞬で眠りに落ち、変な夢を見ては起きて痛みと向き合うことをひたすら繰り返し、いよいよ朦朧としてくる。

合間合間、助産師さんが打ち合わせをしているのがわかる。

あー、もうダメなのかも。ここでは産めないから病院に行きなさいって言われるのかも。

私が一人で弱気になってる中、助産師さんたちが大きく舵を取り始める。

赤ちゃんの回転の向きが違っていたそうで、一度赤ちゃんの頭を骨盤から外し、もう一度正しい方向に入ってもらうとのこと。なんだかわからないけれど、必要なことならなんでもします、と頷き、私は骨盤をぎゅっとバンドで縛られ、お尻を築き上げて頭を下にして猫のポーズを取り、その状態を維持することに。この体制で陣痛に耐えるのがとてつもなく辛かったのを覚えている。そして強めの陣痛が来ると、つき上げて開いたお尻の穴から、ウンチが出そうになる。どうしようもなくて「ウンチが出ます!!」と正直に宣言すると助産師さんは「いいよ、いいよ。」とガーゼを当ててフォロー。ウンチが出ているのか、何かをお尻に入れられているのか、もうよくわからないままに、意識が飛び始める。

隣をみると、雅人くんは布団を敷いて気持ちよさそうに寝ている。なんだかちょっと腹が立ちながら、ウンチが出てもこんな風に普通に対応してくれるんだ。普通のことなんだ。ウンチ漏らしたことがなんだっていうんだ!と今思うとなんだかそこでちょっと自分の中で一つ何かがはずれた気がする。

そこからやっと自分を捨て、もうなんでもよくなってきた。腰を縛られているバンドがもう窮屈で痛くて、「これ外していいですか?」と半ば強引に外してしまう。痛みはどんどん強くなり、うまくかわせなくなってくる。

かわせなくなった感覚が、大きく自分の中に余って、つい力が入ってしまう。

「いいいきみですよー。」

痛みと体のメカニズムから、自然といきんでしまったみたいだ。ここで初めて、イキんで良かった事を知る。

ずっと陣痛をリラックスして逃さなきゃならないと思っていたので、耳寄り情報。

いきんでよかったのか、知らなかった。いきんでいいなら、いきんだほうが楽!

声を発する余裕もなく、陣痛の波がくる。

リラックスしないで痛みに乗っかるとどんどん痛みがやってくる。

なるほど、ここに来てやっと陣痛の意味がわかったぞ。この痛みに乗って痛みをカラダを興奮状態にして、収縮をもっと誘発して、その力で産むのね!本を読んでもわからなかった感覚的理屈を理解した途端自分のやるべきことをやっと発見する。こんなところでもやはり冷静で理論派らしい。

あとは波に乗ってイキむ、イキむ。

助産師さんが穴を触ってくれて、いきむたびに「そう、その方向。いいですねー。」と穴の部分を触りながらいきむ方向を教えてくれる。そのフォローがすごくわかりやすかったので、イキみ方がわかりやすくなる。

やり方が分かると面白く、訳がわからないくらい痛い、苦しい中にも試行錯誤、こうか?こうなのか?と方向を定めていきむ。レッスンのような感じ。正解なイキみができると、なんともイキミがいがあり気持ち良い。

なんとなく中で何かが動き始めている手応えを感じる。おそらく結構長い時間こんな時間を過ごしていたと思う。

しかし、あまりに長い時間。

これでも産まれないのか。ここまで盛り上がっても産まれないのか。

もういっそお腹切って取り出してほしい。

悔しいけれど、ギブアップです。

病院でもいいです。

ここまで挑戦できてよかったです。

病院の手続きとかめんどうだから、もう意識をここで意識失ってしまえ。

あとは、どうにでもなってしまえー。

と、本当に投げ出して、うめき声を出していきみはじめた時、なんだかまた一つ進み始める。

「いいですよ。もう少しですよ。赤ちゃんの頭がおりてきてますよ。」

え?!そんなことってあるの?本当にでそうなの??

全然赤ちゃんの頭がどこにあるかなんて感覚ないけれど。

これを続ければ本当に出てくるの??

驚きながらも、強い陣痛を選んで、より確実にいきむよう意識を集中させる。

くる波の強さがだんだんと分かるようになってくる。

もう少しといっても、30分とかの話ではない。

少しずつ少しずつ、行きつ戻りつしながら赤ちゃんは降りてくるようだった。

けれど、思っていたよりこれも長い。

インスタントにポッとはいかないのが動物のリアル。

この辺りから確か雅人くんカメラを取り出し始める。ちょっと突っ込みたいけれど、それどころではない。

後から聞くと、助産師さんと私たちの頑張りに感服し、自分の無力さをちょっぴり切なく思い、自分の任務として撮影を頑張ろうと心に決めたらしい。あんなに心から「(十分に頑張ってるけど)頑張って。」と声をかけたことは人生で初めてだと言っていた。

おそらく1時間近く繰り返した時に、頭が一番狭いところを通ったと言われる。

全然感覚的実感はない。とりあえず、その言葉を励みにできることを繰り返す。

新しい感覚をどんどん体験する。

いきみが骨盤底筋に軽い痙攣を呼び起こす。陣痛によっては、このままいきむとひどい痙攣になるなと思われるものもあり、いきむのを躊躇するようになる。

それを繰り返しながら、いや、痙攣しても、筋肉つって動かなくなっても、いきんでみるしか進む方法はないのだろうと、怖いけれど思い切って強い波の時にいきんでみる。

膣フラッシュ。今思うとヴィッパーサな瞑想の6日目、体が全くなくなって強かった痛みが無くなって、体が無になって、度を超えた至福を味わう直前の感覚に似た感覚になる。嫌いじゃない。

じわっ、びしゃん!!

暖かいお湯が股の間から出てきて、濡れたアザラシみたいな感触のものが飛び出した感じがする。

床に引いてあるビニールに濡れたものがドサリと落ちた音。

たまげたけれど、たまげている場合じゃないので気にしない!

「卵膜が出てきましたよー。」

と言われたのだっけ?卵膜ってなんだっけ?とにかく膜が出てきた。中身も出るかもしれない。

やっと本当に産まれるのだと実感が湧く。早く産みたい、本当に出るなら、本当に出したい。

とにかく早く終わらせたい!!

本当は出てきたもが気になって、かなり見たかったけれど、見たらいきめなくなりそうなので、出てきたものは見ない。

そこからさらにいきむいきむ。

痙攣しそうな感覚も恐れずに、どんどんいきめるようになる。

もう怖くないぞ。どんなにいきんだって私の骨盤底筋は柔らかくしなやかに強く対応するぜ!心強いぜ!

へっちゃら!!

「髪の毛が見えてきましたよ。あと少し。」

雅人くんが感嘆の声を上げている。

本当に髪の毛が見えてるんだ。

髪の毛生えているのか!はげていないのか!!

みんなが私を励ますために嘘ついてるかもしれないけれど、信じたふりをしてみよう!

その後、赤ちゃんの頭はいきむたびに出たり戻ったりを繰り返していたらしい。

頭の感覚を味わおうと膣の感覚に意識を置いてみても、皮膚が緊張しているせいか特に頭の感覚はなかった。

私はうなり声を出していきみながら、未だ産まれるということが信じられない気持ちを抑えながら

私が産んでやらねば、私に全てを委ねてくれたこの子に申し訳が立たないと

無駄に思えもするいきみを繰り返す。

これしかできない。

「頭が出てきましたよー。」

そこまで出ても、するっとはいかない。

あとはするっと引っ張って出してくれるわけではないのか!!

最後まで大変なのだな。この辺からはちょっと安心感とともにいきむ。

赤ちゃんと私と助産師さんとみんなで最後に産み出す。

生まれた瞬間の膣の感覚は残念ながら覚えていないのだけれど、重いものがずるりと通るようなすごい感じだった。

とにかく産まれた。

雅人くんが何かを言ってる。

産声が聞こえる。

おえーおえー

感動の場面のはずが、産声がおもしろい。

「産声おかしくない??笑 おんぎゃーじゃないの?おえーなの?」

思わず突っ込む。

私は「信じられない。」を連呼してたきがする。

胸の上に置かれた赤ちゃん。顔は見えないけれど私の上に置かれた赤ちゃん。

とにかく謎の感覚。自分のお腹の中にいて、まさに今2日間かけて自分の股の間から出てきて、

血と羊水をまとってる赤ちゃんが自分の胸の上にいるっていう新しい感覚。

みんなが泣いている。

助産師さんも泣いている。(手際よく仕事をしながらも、潤んでる。)

みんなが感動している。

あかちゃん、すごい。

助産師さん、とにかくすごい。

しばらくは放心状態で何にもできない。

とにかく助産師さんすごい!

この人でなかったらこうやって産めなかっただろうし、委ねられなかっただろう。

こんなとてつもない仕事が世の中にあっただなんて。

五十嵐の住宅地のリビングルームで、こんなに壮絶な生命の物語がいくつもいくつも産まれていたなんて。

それを知識と経験とからだと度胸で支えてる女達がいたなんて。

意外と冷静なもので、そんな思いばかりが溢れてきた。

くちゃくちゃの猿のおじいさんみたいな赤ちゃんは無条件で愛おしい。

そんなあかちゃんにすぐさまおっぱいをあげる。

昨日まで出なかった母乳が出る。

黄色いまだ透明の母乳。

それを飲む赤ちゃんがいる。

ほう、私、こういうことするようになるんだ、ほんとに。

そんな信じられない状況がおもしろくて、また嬉しい。

そのまま添い乳に挑戦し、赤ちゃんと一緒に過ごす。

興奮し、感動している雅人くんと、赤ちゃんと、私と。

なんとなく家族なんだなと確認しあう。

雅人くんがへその緒を切る。

そのあとだったかな?胎盤を出す。

勝手にニュルリとでてくるかと思いきや、思ったより硬くしっかりしていて、簡単に出てこなくて驚き。

出てきた胎盤を見て、へその緒のつく位置がちょっと普通と違っていたことを知る。

そのため、へその緒が圧迫されて、赤ちゃんの脈がたまに弱くなったり、お産自体がゆっくり進んだのだろうとのこと。ゆっくり時間をかけて慎重にみんなで頑張ったんだ。

なるほど、とても理にかなっている。

私も赤ちゃんも服を着替え、自分の部屋へ。

体は軽くカクカクしている感じ。骨盤底筋は脱力状態。

切れたおまたは痛いし、おしっこもしみる。

お尻の穴も飛び出てしまったようで痛い。

目の周りがまっかっか。(これは三日続いた)

想像以上に体が大変なことになっている。

産んだらスッキリ軽くなれるなんてことはなかった。

1週間はおっぱいもゴリゴリに張ってしまって痛かった。

久しぶりに雅人くんとゆっくりお話をする。

「次産む時は雅人くんが産んでいいよ。私はもう十分だ。こんなに大変ってわかってたらもうできない。」

もう二度といいや。その時は硬く思う。

ちなみに3週間経った今。やっとおまたの傷口も癒え、トイレも普通にできるようになり、普通に座れるようになり、子宮が収縮していく痛みも治まり、出血もほとんどなくなってきた。おっぱいも柔らかくなり、絞り出す必要もなくなった。

かわいい彼と一緒に過ごしていると、その時の苦労なんて軽く忘れてしまい、

お産、かなり興味深かったなぁ。

次はもっとうまくできるかもしれないなぁ。

なーんて前向きに考えられたりするから不思議。

そして産んだその時から、オムツ変えと授乳が始まる。

助産院でのオムツは布おむつ。

お湯で濡らしたコットンでお尻を拭いて、布おむつをかえる。

抱き方や、おっぱいの上げ方も教えてもらう。

初夜は赤ちゃんも私も興奮状態。

ほとんど寝ないで泣き、おっぱいとオムツを繰り返す。

途中、添い乳しながら二人とも寝てしまったりして、疲れ果てて朝を迎える。

朝の4時。

やっと泣き止んで静かに眠る彼を見て、涙が溢れる。

昨日までお腹の中にいた人が、本当にいるよ、ここに。

そのまま眠れず、2時間見つめ続ける。

この時の幸せな感覚は忘れられない。

今でも毎日、朝4時に眠る彼を見てはこの時間の感覚を思い出す。

退院時、結局11キロ増えていた体重は、出産で7キロ減っていた。

そのわりにポニョポニョのお腹。

妊娠6ヶ月くらいな感じ。もう一人生まれそう。

3ヶ月で戻ると言われたけれど、信じがたい。

まぁ、無事に生まれたのだしそんなことはどうでもいいのです。

これから骨盤ケアして、さらにきれいになる予定。

助産院でのお産は想像以上にナチュラルで、

本当に人間の手と神様の力とだけで進んでいく。

助産師さんの生命との関わり方は、任せる、信じる、母性そのもの。

女の人の力の凄さを知った。

退院の時にはもう3ヶ月くらいいたような感覚。

別れがつらく、涙が溢れてしまいました。

本当にここで、この人に取り上げてもらってよかった。

産むこと自体がとても美しく、素晴らしい経験となってよかった。

みちつき助産院での時間は最初の検診から最後の食事まで

とてもとても素敵な時間でした。

感謝してもしきれません。

暮らしの中に、人間一人登場したのだから

あれやこれやあるだろうし、すでにあれやこれやあるけれど

生命をつないでくれたお父さんお母さん、おじいちゃんおばああちゃん、

そして私からつながる命を共に想像してくれたパートナーの雅人くん、

私が死んだ後も、私の遺伝子を連れて、まだ見ぬ時空を旅してくれるこの子からつながる命に感謝して

楽しんでいこうと思います。


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