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背中で引っ張る

素質を評価されドラフト1位に指名されたものの活躍できずに終わった野球選手はたくさんいます。

藤川球児もその一人かと最初は思っていました。

期待され登板するもよく打たれていた印象があります。

その時の他球団のドラフト1位では、松坂・上原など1年目から大活躍の選手がいます。

ちなみに1年目の成績ですが、

松坂:16勝5敗 防御率2.60

上原:20勝4敗 防御率2.09

藤川:1軍登板なし

となっています。

そんなとき藤川は「まだ負けていない。」と思っていたそうです。

阪神には、期待するときは持ち上げ、期待を裏切るとボロカスという悪い風習があります。

ドラフト1位で期待され入団したものの活躍できないと、メディアやファンからたたかれる。

そんな中「這い上がってやる」といった気持ちで努力されていたと思います。

この努力は私たち他人が理解できるものではありません。

しかし、この努力というプロセスがあったからこそ、花が開き大活躍する藤川を観ることができました。

6年目の2005年、遂に花が開きます。

中継ぎに転向して優勝に貢献。

80試合に登板して、防御率1.63。

火の玉ストレートを武器にほとんど点を取られる場面がありません。

2007年46セーブで当時の日本記録でセーブ王。

分かっていても打てないストレートに私は魅了されました。

そんな絶対的守護神が大リーグに挑戦します。

正直、行ってほしくなかった。

でも、あの火の玉ストレートが大リーグでどれほど通用するのか見てみたかった。

そんな複雑な思いでしたが、残念ながら大リーグでは活躍できませんでした。

大リーグ通算1勝1敗2S。

この時、「這い上がって見返してやる」と思っていたそうです。

大リーグを辞めた後、独立リーグの高知に所属し、そこから阪神に戻ってきました。

そして、昨年遂に守護神としての役割が回ってきます。

もう一度勝っている試合の9回を任される日が来たことに、素直に感動しました。

その裏にはとてつもない苦労があったように思います。

彼の引退セレモニーは最高でした。

いい時もあれば、悪い時もある。

でもそのプロセスの一つ一つが大切で、逃げずに突破されたからこのような舞台があるのだなと思いました。

努力せず、苦労せず、○○するだけ、手っ取り早く思い通りにということに、理想を求めあこがれるところがありますが、それだけではきっとこのような景色は見ることはできないでしょう。

必死に頑張ってきた人だから、その姿を見て、周りの人も感動するし、影響も受けます。

引退セレモニーを観たときに、私は改めてそこまで自分は頑張れているのか問いかけました。

まだまだ甘いんじゃないか、まだまだやれることはあるんじゃないか。

私にはまだまだ未熟なところや反省すべきところがあります。

それを必死に突破していくプロセスこそが大事です。

そのようなことを考えさせられるセレモニーでした。

これが背中で人を引っ張るということかもしれません。


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