ごみ捨て場の老婆
東京での一人暮らし。燃えるごみの日の朝。
マンションの入口にはごみ袋が山盛りに置いてあった。
その陰で誰かがごそごそ動いている。
あ、お婆さん。
手にはリュックサックの入ったごみ袋。
こちらに気づいた。
老婆はずいと近づいてきて、真っ直ぐな目で私を見つめながら、早口で、
「これもらっていいよね、捨ててあるんだからもったいないよね」
あれ、法律的にどうだったっけ、いやでも困ってるのかな、でも私のではないし・・・
「いや・・・私には・・・わかりません・・・」
バイト先へと足早に向かう。
そういえば、羅生門の老婆って最後どうなるんだっけ。
いつものプレイリストを再生する。少年時代で季節を感じる朝。
私はふと足を止めて、ゆっくりと振り返った。
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