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原美術館へ出かけた日

©️All photos taken by me.
秋の日の午後。品川駅から御殿山をてくてく歩くと見えてくる、
長い長い塀に囲まれた白い洋館。

先日、初めて訪ねた「原美術館」のことを
記憶が新しいうちに書いておこうと思います。
なぜならもう間もなく、この美術館は無くなってしまうので。
90年代の頃、いつでも行けると思っていたのに
訪問までこんなに時間が経ってしまいました。

品川から車で5分、と、ウィキペディアには書いてありましたが、
のんびり歩くのもアリだと思います。
わたしはそうしました。

書き留めるとはいえ、きちんとメモを取りながら歩き回ったわけではなく
館内の撮影も一切禁止なので、記憶から書き留めていきます。
作品や室内の画像を別のサイトから借りてきて貼り付けはしていません。
省かれているところもいろいろあるかもしれないです、
でも想像しながら読んでもらってぜひ原美術館へ
足を運んでいただけたらもっとすてきな経験ができることと思います。

それでは原美術館へ。


ふるい塀の中に足を踏み入れると
エントランスまではゆるやかカーブした小道があって
庭にはアイビーがこんもりとブッシュを作り
そこから空を覆う木々が茂り、
庭の遠くにはもみじが色づいていました。
鳥の声は聞こえるけれど都心ということを忘れてしまう静けさ。
庭には所々に人の背の高さよりも大きなモニュメント作品があり、
彫刻の庭 になっています。

建物に近づきエントランスに入ると
カーブが美しい黒い手摺りの階段と天井の高い部屋が見えてきます。
エントランス左方向の廊下も
ゆるやかなカーブになっていて突き当たりが見えないつくり。
廊下の左側はカフェスペース。
廊下右手側の開放された広い部屋では企画展の写真展示が見られます。
広い部屋の奥の方にはアールを描くサンルームがあって、
そこから庭を眺めると一瞬ここの住人になったような気分に。

階段を登った2階も広い部屋があり、
ここの展示はとても考えさせられるものでもあり、
時間の経過を意識するものでした。

展示とは別に、部屋を眺めていると
部屋の窓枠に取り付けられた鉄製開閉フックは
現代の窓メーカーの規格なんかではなく、鉄の硬さと丈夫さがわかるもの。
床の質感や、ほんの些細な細工も佇まいが美しい。
階段を登り3階には宮島達男作品の部屋、奈良美智作品の部屋、
ジャンピエールレイノーの作品になっている部屋、
邸宅室内に急に現代美術が現れる感じが面白いです。

なぜ若い頃にここへ来なかったのかな、
なんとなく、旧私邸なのに現代アートというものすごい力強さに
圧倒されちゃっていたのかもしれないな、
強い印象、で、こちらに投げかけられている作品たちを鑑賞しながら
当時を思い出していました。

手渡されたパンフレットには河原温の作品展示が確かに書いてあるのだけど、
見つけられなくて。結局、1階の部屋から中2階を見上げた壁面に掲げられていることがわかりました。意外な場所のような気がしますが、これが本来の展示らしく。
そしてよく見るとエントランス付近の踊り場にナムジュンパイクの
ビデオアート作品のテレビモニターもありました。
まだ液晶になる前の映像技術を駆使した時代。
かっこいいこと考えるなー!と思っていた自分を思い出します。

部屋や壁面、手すり、窓際、
いろいろな建物の雰囲気も堪能しつつ企画展示作品を拝見しました。
(作品はどの作家さんもとても凝っています、
写真好きな人には特に楽しめる展示だと思いました。
わたしのお気に入りは佐藤時啓さんのシャッター解放作品。)

さて、1階へ戻りカーブを描く廊下から今度はカフェ・ダールの方へ。
テラスに向う、ゆるやかなカーブに沿って
テーブルがいくつか並べられている細長い部屋。
紅茶とナッツのケーキで広い庭を眺めてひとやすみ。
(美味しいケーキでした)。

やっと接点を持てた原美術館。
もう間も無くここが閉鎖されてしまうなんて。
日本は災害の多い国なので
明治、大正、昭和の建物が減っていくのは仕方がないし、
耐震、バリアフリーなどの基準や法律により、
奇跡的に残った建築物の運命が今を生きる人たちの判断にかかっているのも
仕方がない。でもとても残念。
それほど美しいレトロな空間がそこにはありました。

そうだ、ここを基点にした「記憶」は、わたしの中の
「時」をキーワードにしたセンチメンタルなインスタレーションと考えよう、
なーんてね。たっぷり楽しんだ原美術館時間にすっかり感傷的気分になったので、
勝手に(むりやり?)アートに置き換えながら御殿山を降りたのでした。

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原美術館ウィキペディアより

JR品川駅から車で5分ほどの住宅街のなかにある原美術館は、
東京ガス会長、日本航空会長、帝都高速度交通営団(営団地下鉄)総裁などを歴任した実業家・原邦造の邸宅であった。
原邦造の養父の原六郎も実業家・美術品収集家として知られている。
原美術館が活用している邸宅は、原邦造の私邸として
渡辺仁が設計し、昭和13年(1938年)竣工したものである。
渡辺は上野の東京国立博物館本館や
銀座の和光本館(旧服部時計店)の設計で知られる、
当時の代表的な建築家である。
原美術館は、財団法人(現・公益財団法人)アルカンシェール美術財団を母体として昭和54年(1979年)に開館した。
現代美術の最新の動きを紹介する意欲的な展覧会を随時行っており、
「ハラ・アニュアル」展の開催などによって、有望な新人の紹介にも努めている。
館内各所に、レイノー、森村泰昌、宮島達男などの
インスタレーション作品がみられるが、
戦前の個人邸宅の雰囲気を残した建物と現代美術とが不思議に調和している。
庭にも多田美波、関根伸夫などの作品が設置されている。
なお、群馬県渋川市に関連会社が運営する伊香保グリーン牧場内に別館のハラ ミュージアム アークがある。設計は磯崎新。
公益財団法人アルカンシェール美術財団は、
現代美術とは別に、原六郎コレクションの古美術も所有している。
国宝の「青磁下蕪花生(せいじしもかぶらはないけ)」(南宋時代)を含む
原六郎コレクションは、群馬県のハラ ミュージアム アークに保管されている。
2003年には「原邸」として、DOCOMOMO JAPAN選定
日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選ばれている。

開催中の展示は、「光-呼吸 時をすくう5人」。
展示内容についてはこちら原美術館ウエブサイトをご参考ください。
美術館へは事前に予約手続きが必要です。
原美術館ウエブサイトにてご確認ください。


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