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カンチェラーラの展開の読みと走りは!?

昨日行われたロンド・ファン。フラードレン。モニュメントの中でもキングオブクラシックと言われる1DAYライダーなら誰もが憧れるレースだ。

インターバルが繰り返される集団内は、上り、石畳、コーナー前の位置取り、風が容赦なく選手を苦しめる。集団の先頭にはいつも同じチームがコントロールしているわけではないのは、上りとコーナーが多い特有の地形と、上りの度にペースを落とせないレース展開が、常に前でコントロールできない(しにくい)のだろう。

レース終盤、主力が動いたのは残り33kmを超えてからだった。サガン、クフィアトコフスキー、バンマルクのアタックに反応しなかった。この動きには賛否両論あるが、結果的にカンチェラーラは行けなかったんじゃないかと私は感じた。(余裕がなかったわけではなく)

私がカンチェラーラの立場だったら、最後のフランドルで一か八かの展開は選ばないと思うからだ。確かに後ろの集団にはアスタナ、エティックスが人数を残っていたがトレックファクトリーチームはデボルデルのみ残し、最悪他の選手と共倒れする可能性も少なからずあったからだ。

最後のオーデクワレモントでは、20秒の差を一気に詰めてきたカンチェラーラが先頭集団に追いついたのは頂上付近の一番キツイ場面だった。通常平坦路の20秒よりも上りの方がスピードが落ちるため、前方を走っている集団との距離は近く見え、高出力であっという間に追いつくことができる。

カンチェラーラが追いつく事は無線でサガンに伝わっていただろう。カンチェラーラが追いつく15秒前にアタックをしたサガン、ヴァンマルクはそれまで自身の足を使って逃げていたにもかかわらず、頂上の時点よりもカンチェラーラとの差を逆に広げる形で石畳区間をクリアーした。

カンチェラーラは追いついたクフィアトコフスキー集団をパスするものの、それまで逃げていたエルビーティが引く第2集団のスピードと驚くほどのスピード差がない走りに、どおした?カンチェラーラ!そのスピードでは前に追いつかないよ!と私は思った。

そもそも33km地点でサガンがアタックした時、その集団についていくべきだった所をデボルデルは反応したが、カンチェラーラは中切れする形で後ろに引き第3集団にとどまり、最終局面まで「後ろの集団で待ち」を決めたのが計画的だとすると、クフィアトコフスキー集団に追いつくまでの走りはカンチェラーラらしい走りを見せたが、その後は「スパルタクス、異次元の走り!」と言えるほどの走りとは言えない走りだった。

サガンがアタックした時、カンチェラーラの唯一のアシストであるデボルデルは、相当キツイ展開だった。目の前に見えている優勝候補集団に追いつこうと思えば1アタックでいつでも追いつける位置にいながらしなかった、(できなかった)事が、最後の勝負所であるオーデクワレモントの死闘に加われない走りとなって露呈した。

サガンは今シーズンの前半戦、足を使って使って2位になるレースが多かった。その数はカンチェラーラよりも多く、厳しい展開になればなるほど強さを発揮出来る体作りという観点から見ると、サガンの勝利はこのフランドルの戦いでオーデクワレモントの時点でついていたのかもしれない。

いずれにせよ、誰もが(ファンとかを超えた魅力という意味)見たかったカンチェラーラの勝利を見ることができなかったが、本当の意味で最強の選手が勝つレースとなったことは間違いない。

年齢を重ねると、自分が思っているように走ることはどんどん困難になっていく。それこそ、自分が一番得意だった走りが思ったように出来ない事に愕然とする事など日常茶飯事だ。

しかし、その現実に居る自分と正面から向き合うことで、経験となって選手の走りを支えている。私も引退する前2年間はそう言った自分と向き合う戦いだった。同じと言ってしまうのはおこがましいかもしれないが、プロ選手とはそう言った自分と常に戦っているのだ。

それでもファンの期待に応える(ファンは一番良い時の印象を常に追いかけている)走りをしたカンチェラーラに拍手を送りたい。




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