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複雑なものの楽しさ

今、千葉雅也著『現代思想入門』という本を読んでいます。

現代思想とは、1960〜1990年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学を指しているそうです。
この本では、ジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、ミシェル・フーコーの三人が取り上げられています。
これが非常にエキサイティングで、自分の中にあったモヤモヤしていた考え方に対して、道示してくれる…刺激を与えてくれることが多いと感じています。

この本の最初に、なぜ現代思想を学ぶのか?どんなメリットがあるのか?について記載があります。
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現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになります。単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で捉えられるようになるでしょう。(P.12より)
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「複雑なことを単純化しない」
個人的にこれがとても大事なことだと最近感じます。
物事を誰にでもわかりやすく伝えることこそが良いこと…という考え方が重要視されている今の世の中(私の周囲だけかもしれませんが)、敢えて複雑なことを、複雑なまま受け取る。これは、とても大事な事だなと感じるわけです。
「理解する」と「感じ取る」ということの違いなのかもしれませんが、「言葉」や「文章」を通じて、頭で「理解する」のではなく、「感触」や「感覚」といった数値化しにくい事物を、心で「感じ取る」というようなことなのかと思います。

以前聞いた言葉でとてもしっくりきたのですが、
「頭では正しいとわかっているが、心では間違ってる思う」と、
「心では正しいとわかっているが、頭では間違ってる思う」ことでは、
どちらの選択をあなたは選ぶか?
おそらくほとんどの人が、後者を「正しいもの」と選ぶ真理があるのでは無いでしょうか?

それくらい数値化できない、頭で理解できないものでも、心はわかっているし、感覚というものは正しいものなのだと思います。
複雑なもの=つまり数値化できないものの重要性こそ、真理があるのでは無いでしょうか?

一応少しバレエ繋がりでも話しておくと、クラシックバレエではこういう複雑な感覚を研ぎ澄まして自分の身体の感覚値として身につけていくものなのだと思っています。だからこそ難しいし、だからこそ楽しいものなのだと!

身体というものは、とっても複雑な宇宙ですよね…自分の一番近くにあるものなのに、まだまだ謎がたくさん隠されている。
良いとか、悪いとかいう感覚だけが、信号として僕らの頭に届くので、何が良くて、何が悪いか?ということは、心で理解できる。

そして例えば、バレエの動きで言えば、自分の心の中で「これはいい!」という感覚があったことは、大概周囲からみても良い動きだということがわかる。
こういうセンサーを「身につける」ということもバレエレッスンの醍醐味なのだと思う。つまり、何が「良いもの」で「良くないもの」か?というセンサーを鍛えるということ。人の動きを見て感じることもそうだし、自分自身の動きを感じ取ることもそう。

クラシックバレエは、身体的な感覚の最もシンプル且つ複雑な”1ミリの世界”を徹底的に感じる世界。これが面白くてしょうがないと思うわけです。

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話を変えるのですが、ここ1年くらいでふとしたことに気づきました。

・バレンタインフェアで食べたメゾンカカオのガトーショコラ
・フレンチ ミクニ で食べたフランス料理(ソース)とワイン
・ウィスキー

この3つに共通して思ったのが、まさに「複雑な味覚」というものなのです。
バレンタインで何故あれほどまでに世の中の女性が、チョコレートに高額な金額を支払うのでしょうか?
フランス料理は、なぜあれほどまでに高級料理と人々に認識されているのでしょうか? ワインというものが世界中のセレブたちにこうも愛されているのでしょうか?
ウィスキーで何年モノと言われるものが、なぜあれほどまでに高額な金額で売り買いされているのでしょうか?(この2年くらいは私はすっかりウィスキーの研究に勤しんでおります(笑))

今更ですか?…はい。すみません。今更わかりました。
本当に楽しいもの・美味しいものって、説明できないんですね。つまり世の中の人たちは、複雑で説明できないものの中に真にエキサイティングなものがあるということをわかってたんですね。

いつも100円のチョコレートばかり食べていては気付けないものがあるのですね。
大人になるって、こういうことなんだなと反省しました。
というか世の中の皆さん、大人になるってこういうことだって、誰か教えてくださいよ!(これが人間関係があると早い時から気付かせてもらえるのか〜。自分は人間関係をいかに作ってこなかったか…)

それともう一つ、上記では「味覚」と書いたのですが、本当に複雑で「美味しい」と感じるものは、「嗅覚(香り)」だと感じています。
というよりも、味覚は嗅覚から来ているのではないか?ということです。
変な言い方なんですが、舌で香りを感じているというか。舌を通って嗅覚で感じ取るというような…すみません。これは勝手に思っていることなので、何もわかりませんが…

複雑な事、頭で理解できないことは一方的にダメだ…という複雑なもの嫌悪原理主義に陥らないよう、これからも色々な物事に興味深くトライしてみたいと思います。
バレエを通じては、まだまだ深淵なる身体的"感覚センサー"を鍛錬するのに、自分との内省的な会話を繰り広げていくのですが…深いですね(笑)。

そうか…クラシックバレエって、哲学なんだ…。今気づきました(笑)。

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