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詩15篇「雨雨」(2022年度南日本文学賞受賞作)              栫伸太郎

2022年度の南日本文学賞受賞作、詩15篇「雨雨」を公開いたします。
(noteの文面では元の書式が一部反映できなかった部分があるため(特に「泡にかんするー」と「天空とその模写」)、PDFでの閲覧をお勧めしています。)

75.1


風は草むらの中に口髭をたくわえた
その猫たちは尻尾を立てて歩き去る
乱れた毛皮を連れて
私たちよりも地面に近く
風を目に映して 
風は進み
風はその後を追う 
        風は風の道になる
その青い目の猫は芒の中でこちらを向いている
ドラム缶
水溜り
コンクリートの階段に
明日生まれる者たちが身をかがめて
息を殺している


泡にかんする何か、あるいは間隔


泡のような白紙だなあと思って書きました。
本当はなんの連なり
でも       良かったんだけど
いつも波の音が続いて
      いて
        起きているときも
       死
んでいるときも
       ( いつも)動いている
     ことと動
         い
ていないことの境目を、
      (波のおとが)呪い殺すみ

いで
  だから
     僕はいつでも
海を            見ていないといけなくて
海を                  すべってい
           く       
ちゅうしょうの粒  のような
                      大気を
          僕は待っていました
海を
海を

僕は 寒くなると
          するどくて
      やさしい       森が
僕の頭の 
中に
                 あることに
  気づきます
(それはあらしそれじたいにあたたかさを 
みつけるみたいに)
そのうち
    (あ)、      
        星座未遂
盛大につながりそこねて
             地球は
                   地球の幽霊を
囲む
  巨大な楕円軌道 の幽霊をめ
                 ぐり続ける
                    真空の幽
霊のおなかのなか
        の
  一つの大きな

ゆううつで
ぐしゃぐしゃと潰れていく
灰の
地層のような
ひかりが射してきて
両手を丸めて
それを
つぶさないように
掴み損ねて (ほのおの)
卵型の
魂が溢れる
切り株のような
ゆめのなかで
ぼくは
書き始める


天空とその模写


(肩が破れ続ける)
(日の光は届かない)
夕飯を準備する。そういって
風が入ってくる
それでも
僕は死ぬだろう、

カフェオレを流し込む
大量の
道玄坂を登りながら
浮き足立った苦味が俺の舌に
ぺたぺたと足跡をつけて去るそれを
喉がゾワゾワと受け入れる
瞳が珈琲をこぼしたような色になると
一面の曇り空
俺は
歩き出す

死ぬだろうと いつか
僕はわかっている
なぜかは忘れてしまう、いつか
波の音が聞こえる
それでも
僕は死ぬのだという予想が
現実のように
窒素のように
僕たちにはありふれていて
重さがあって
不活性だ

線路に沿って
俺の心臓がアジサイの形になって
俺の目の前に捧げられているみたいだ
!もさもさも
!!もさもさもさ!もさもさもさも
もさもさもあ!もあさ!もささもあも!あもさも!
もさあもさあも!もさ!もさもああっ!
ああ俺は握り潰したい
あの灰色の太陽を怒鳴らせながら
家が並んでいてどれも
雲よりも小さい
雲が空よりも小さい
本当に

波の音が聞こえる、
そして
青く、肩が凝っている

本当に、馬鹿みたいだ
傘を握り潰したい
天竺では雨粒
が地面にたどり着く度に
地面と
雲とが入れ替わる
少し雨が降ってきたなら
頭蓋を開いて
溜まってきているやつを薄めよう
尾骶骨を突き刺せば俺はいくらでも丸くなれる

(僕が死ぬと世界はきれいな夕方になって止まる)
(僕が死ぬと世界はきれいな夕方になって止まる)

横たわり
あの赤錆びた線路を舐めながら
俺はあの線路の一部になるかもしれない
尾骶骨を突き刺せば
俺はいくらでも長くなれる
十四枚の雲が与えられて
俺は
椅子を置く

早朝の浜辺のような、左眼の奥の国の混乱が
早朝には読めない薄い青灰色の文字が
果実のように
星のように輝いている
僕の息か意思が

僕は満腹で、
月を見ようと思っていた。
波の音が聞こえる。
崩れる顔の音が。


縄跳び


縄が足の下をくぐって
もう一度くぐるまでの間に
僕は考え
跳ぶときには忘れる

それを何十回も
何百回も
何千回もくり返す
僕は口を開けてまた閉じる

口を閉じるときに生じる
小さな風を見る
もう一度跳べばそれを忘れる

僕は何か言おうとする
空が少し回る
僕はもう黙ろうとする
縄が回ればそれを忘れる


ペットボトル


羽ばたくように、ペットボトルのごみが
俺の部屋中に散らばっている
全部飲み干して、机が飢えている
床が飢えている  汚い部屋

飲み干しているはずなのに、何か、少しだけ
何かが残っている、ペットボトルの中に
残った部屋の隅に、白い空とか
黒い空とかが残ってて、時折光る、

風が カーテンを閉めきったこの部屋に
きっと 残っているのかもしれない
同じように蔑みも、日向も、微笑みも、陰茎も。

ペットボトルが「しっかりと」閉まっていて、
漏れていて、俺は、いること と
いないことがうまく 区別できない



四角い
四角い 俺は死ぬまで四角いのか
俺はましかくなのかながしかくなのか 融けて
空になったから四角いのか 浮くように何時まで生きて
口から溢れて
いくことが、  よだれみたいに言葉だった
口を動かして 歩くべきなのに
手をうごかして本当は 歩くべきなのに だから
俺は、宿題なんだろう 
この世の誰かの
暖か い
砂の中で、俺は闇の 中 を歩く
苛々する
上を向くことなく 俺は
未来のこと全部を砂つぶのように 飲み込んだ
ある貘のことを思いだすそして
それは俺だ (鳥)(鳥)
ああ いつまでも頭は海に近いので (鳥)
海獣のことと
海獣でないことを考えている  世界ハ
何時終わるか分からないのに 球体じゃない
凧が影を脱皮している
凧が影を脱皮している
球体じゃない
厚紙をちぎったときの
紙の断面みたいな 脆くてきたない
部分をおもいだしてる
あれは砂浜ににている  苛々する
かなり絶望的な 凧が影を脱皮している
凧が凧を脱皮している
影が影を脱皮している
白く て
有刺鉄線(ひこうせん)のように指の腹を俺は
地球より大きく深呼吸する と
思う 思いおわったら
死にたくなる 滝のように煩いランプも
持っているけど 誰も溶けてくれない(あー)
話しかけてくれない 喰いながら
喰ってくれない
もう二度と ゆーって言ってくれない
動かないといけない  でも
真鰯にだって丸いものがある ならそれも
話しかけてくれない   けど  
                  俺 は四角い


つ)」かれ」を」)か」)きう」つ)、す


おれおれおれおれおれろれろえろううぇ、う
うでうでうでぅうどぅうでゅうどぅゆ、ゆ、
 はー、
 はー はー、
 はー、はー、はー、
 はー、はー、はー、
 はー、はー、はー

おれはあるきながら
あばれることや
あばれないことについて考えた
((かちゃあん、かちゃあんと音がする
てゅんてゅん
てゅんてゅん、
うぐんうぐん、とおれの内臓の
中でパーティしたいよ((
だぶらぶらぶだぶ
だぶ、らぶだぶらぶ
したいよ
ぎぎぎづつつと詰まっていく
のづらづみの蚯蚓のようなおれの
のうのゆうやみみたいにただれたくびれ
にしたがいながら
これからは港になるわ (((
わー、らとんらとん、ー、
らとんらとん、ー、ー、
ばひゅん、ばひゅんと口でいう
っかかかかかかと口でいう
げびた朗読が
おれの食事だった。「「
かちかちかちかち
僕の話を聞いてくださーい。
かちかちかちかち
蜘蛛の巣状に
かちかちかちかち
背中の筋肉を展翅して「「
おれはあばばばばばば
あばばばばばば
とおれの中のくまはゆっくり話し始める。
もちろんおれは聞かない
湧くようにおれが死んでいく
死にムカって歩くってことね
満腹で、
星座
になるように、
としゅんとしゅんと
無駄な肉を削ぎ(いないいない)
落としたくなった。
いふ、いふ、いふ、
いひゅん、……いひゅん、いひゅん
さむい
おれは窓になりたい
ばとととととととととと
おれは全ての窓枠から見た窓のように
ばばとととととととととととと
だから 
おれは港になる(ぱから
おれは船の中にいるどっっしーんむつうう
なぜならもう俺は皆とだからだ
ぱりぱりぷちくち
ぶちくち
くち
ぷちくちだからさ!、!、
だから俺はもう海になるまでもうすぐ
だある、である
になる
ああああああーーる。。
もうすぐになる
それは穴熊よ うう
それは穴熊、だった
波打つ穴熊であるおれ、むつう
雨に打たれ続ける。
とりゅ。。
とみゅとみゅと鳴く。。。
ぶちょんぶちょん。。。。。。
びとぅおおおん、ばとぅおおおおおんだから
木でできた橋である。
もちろん濡れている
おれの歯の一本一本が
ぱっってえええええええん、、、
ててええええええん、
てんててーんになって、、、、
致し方ない河原、
の一つ一つの石になる、、、、、
んかお、、、、、、、、、
んかああおう、、
   そうしておれは吊り橋になる
そうして谷底に
なる
一欠片になる川の
すうーん、欠けている「「「「「「
すうーん、欠けている「「「「「「
ううぃーん
(         )
椅子だ
ずん、0
俺は椅子だ
ずんすん、00
おれは椅子に腰掛ける
(、おお!)
(、おお!)
椅子は椅子に腰掛ける度に
風になる
又になる
O。
おお、
あうう、
おれは考えたくない「「、「、「「。
お「れ「、は「考え、た「く「。ない
 おれは
ゆっくりあるく
、、、、、、植木鉢のように
、、、、、おれは
、、、山のように
、、、、、壁のように
、、、、、、、、扉のように
、、、、、、、、、ああ
、、、、、、、おれは
、、、、、、、、、葉っぱの形に
 心に))フィスト
   海に行きたいなあ)))どぷん
を引用する
  思う))))かぷんこふんさふん
がつん(((((((((
引用と波がある、砂浜には
おれは
タイヤ 脱臼、砂
タイヤ タイヤ タイヤ タイヤ
おれはまあ
今思いつくことを書けばいい
流れるように
う (
う、うううう う うううう うう う
ううう ううううう 
おれは   うううううう
見ている う
うううううう
おれは見ている うう
水泳をするみたいだ うぅぅうう
うーうー
おれは
水泳をしているみたいだ
ううううううの中を
むしろううううううそれ自体を
水泳をしているみたいに
、らはさな
なてて
らやわゆや なかひや
背中から
おれは見えなくなるおれは見えなく
なるなるよゆゆっくり融けて融けておれはジ
ャングルジムの
穴のようだばなは
ジャングルジムの穴のように
発声するために
うう、ううと木製の扉が
  艶やかに()
反射していく、
鳥が
反射するような
ソファ
ソファだ
脱いでいく

ぬいでいくよ おれは舌が
もつれるたびに
おれは
疲れている
鳥が
反射するくらい
おれは
つかれている
つ、

トロコイド状の
地球
を見通すよう

おれは
歩けない。
おれは歩けるということと
ばっしゃあああん
ふうううううううんん!!
歩けないということとが
水の
中の喧嘩みたいに
((なててなててと風もないのに
俺は画面が光る
目が光る肺腑がひかる
ふぁっふぁっっっふぁって光る
ために
内臓は
波打つ
波打つ

)とろけたリサージュ曲線のようになるよ血
で体内がびしょびしょになるよ))
おれたちは本質的に
波打つ壁であり。あ
そう、おれは心臓になる
色付きの心臓に
なる
なぜなら
からふるに
どどふるかかふると、
おれは
記憶できる
どとふる
かかふる
どどふる
かかふる

と記憶できるからこその
おれは
疲労することがあり
ぐどーん、はどーん
うとはと
おれはものがたることへ
とんく、らっく
ふるふると
水溜りを
ざらざらと踏んでいこう
とんく、らああく
踏んであるこう
呼応

呼応へ
呼応を通って
街へ行く
へへ、へ
おれは呼応を通って
街に行く
、、、、
おれは呼応するための疲れを通って
君のところに行く
うー
食べようー
食べようー
食べたくないよお
食べたくないよお


割り箸


割り箸 が
割り箸 と
割り箸 に
なる

割れる前の割り箸 が
割れた割り箸 と
割れた割り箸 に
なる

木の匂い なにが横溢する
大通り沿いの
部屋の 中で

うどんを 食べる
外で歩道を、工事している
(うごく、増える)


腕時計


腕時計が机の上に置いてある
空を映さないままそこで
何処かの声が展げられ 声は
時間をその身に刻みこむ

秒針が断続的に動く 白いまま骨が折れる
秋が鉛筆で描かれる 歌いたくなった時に
どこかから歌が聞こえてくる

それが孤独であり
それもまた夜である波だ 僕は窓に向かって
しゅー、しゅーって冬の練習を
しない

雷雨が さらざらと僕の肩にまぶされて
霧雨はぼくのお腹の中に遠くある

腕時計は腕時計の夜になる


歩道橋


歩道橋へ登る
雲まで、たどり着けないと知っている
秋風の中を
たくさんの車が走っている

来る車と、行く車の数が同じだ
高校の物理でやる束縛条件ってやつ
行く者と、去るものの数は同じだ
少なくともこの橋にとってそれは正しい

水が流れ落ち流れ出し続ける
栓の抜けた風呂の気持ちになって
空でも地面でもない向こうを眺めていると

来るのでも行くのでもないムクドリの
何羽かの影がこの道の遠くを
横切っているのに気づいた
僕らはねじれている(赤錆びが遠くに
見える、
微かにふえる)


ball


足音がサッカーボールに刻まれる
それが真っ白い大陸のための一つめの)叫び になる。
サッカーボールが置かれた空き地に
ばらばらと子供があつまってくる

それははじまり続ける。
夕方には涼しくなって、となりの
川の水面に寂しさの風や温度やゆうれいが
いつまでも、集まり続けるのを無視して

それはふり続ける落ち葉のような
それを夢に見続けたような鋭い目を、
一人の少年が持つ

入道雲ばかり 眠る自分の頭から
はみ出し続ける。だらだらと自分の体が溶けていく
寒くてゆるい夕方の幻想を叩き殺すように
ボールを蹴る


りっとう


一昨日、あたりから一気に寒くなって
俺は体調をゆるく崩している
ぐるぐるして ぎゅうぎゅうで
ポケットはお月様でいっぱい
頭の中も、背中も、喧しく重苦しく
極めて不愉快な声を漏らしながら
俺の中にいくつもの衛星軌道が
たおやかで騒々しい線 が
蝿みたいにびゅんびゅん引かれていって
両目の奥の、体の裏側で べろべろの
崩れかけの昏い衛星たちが巡り続け続ける
俺の頭の中はお月様でいっぱい
肩の中も、お腹も脚も指先まで
いっぱいの月に引き延ばされるみたいに
この体内のべとべとが夜のようにどこまでも伸びていく よ
俺を 轢くみたいに
季節はことしも回っていく 地球は
車輪 でいっぱいだ
体のなか、またいっぱい暗くなったね
俺も車輪でいっぱい
傾いていく衛星軌道の輪っかたちが
内部からおれの身体を轢いていくよ
灰色の空がゆー、ゆーと歌っているよ
薄い雲たちがそらぞらしく素早く流れていって
それに合わせて頭もゆめも軋んでいくよ
心臓が狂わないことはうつくしくないことだ
大切なことを忘れながら自分で
自分を生かしていることに苛立ちながら
あー
ああ
懐かしく、愚かしく
なにかを綴じ込めるように、

冬が始まる



(そこには数がない。
(そこには季節があるだけだ
(微かに風が吹いている
(微かに揺れている
(俺は歩く
(俺は考えることをしない

いつものことだが、
鳥は(鳥とその鳥肉は)いつでも俺たちの頭を
狙って正確に俺の、願望の只中を飛んでいる
草が大きく、草が俺たちの記憶と技術になって
草が俺たちの目と手を待っている

(俺たちは常に既に
裂かれるべき繊維の束である)

肉は繊維質で俺も木も 分裂した
独立した裂かれるべき
ああ、空の方から
世界が何兆本もの筋になっている
星状体が紡錘糸をさしのべるみたいに
空と地面が いくつもの糸の
塊にしか
見えなくなってくる

俺の視界が同数分裂していく
俺は幾つかの選択のあっちがわの
自分のこえを静かに消していく
(意思もなく

俺の心は
俺の目を切り口にして
裂かれうる
中性な感情の束になっている
ところで
束である 俺は
ゆっくりと話すことが
できる

ただそれだけのことだ
すでに常に
飽きもせず
話したことをまた話しながら
束ねられる前に
薄墨の、収束する誰かの約束を
細胞壁の外に遠く眺めながら

俺たちは常に既に裂かれるべき
肉とせいしんのちゅうくらいの繊維の束である
つまり俺たちは森である


かんせい/ふゆのかわりに


(この
あおぞら

まんなかで
ふゆが
かんせいする)

その
したで
あ、
むりか
って
ほっぺたが
すこしずつ
しぶんのじゃないみたい
だもんねって
こわれたらこわれたで
いいし
さむいから
ささやくように
つめたくてあおぞらも
つぶつぶだねって
めのなかで
つぶつぶの さいぼうがおよいでる
からだね
って
おもってたの
(かんたんにさけそう)
めを
あけつづけてると
めもひえていくの
めは
こたいなのか えきたいなのか
はなしあおうか  でも
わたしのめのいちばん
ひょうめんの
まく
が(とうめいに)すこしずつ
しわができて
おちつづける
そうやって
せかいはもう
なんかいも(とうめいに)しんでて
そのたびになんかいも
(とうめいに)かんせいしちゃったんだ
って
おもったんだ
かんせいっておわることだから?
けっこうさむいへやのなかでさっき
おひるごはんをよくばって
いっぱいたべた
ちょっときぶんがわるくて 
まんぷくで
とってもたいくつ
ふゆのそらみたいに
だれかがいそいでるのを みてるみたい
これがおわるってことなんでしょ
いぶくろがたくさんあって
はじまりがない
ことが
おわりなんだって
ほんとうは
わたし
にげるまえからはしってたし
ずっと
もぐもぐしてたし
いきるまえから
しってたようなきがするの
こんなにさむいし
こんなにもろいもんね
こんなにおなかいっぱいで
ここからじしんがおきそうなんだ
たいくつなじしん
いちどきりの
なまあたたかい
くろくてよるみたいに
からだのうちがわだけたべていく
(でもわたしのからだはへらない)
おおきな
じしん

おきそうなんだよ 
ねえ
なんでかな
(えることは
うしなうというこういのいちぶ)
からだがこおりそうなのに
いつまでまっても こおらない
めが こおりそうなのに
どうして
いつまでも 
こおらない?
あっちの
みちに
ちゅうとはんぱにひろがる
はっぱはそうじされないままで
みちはあしたも
みちのままで
って
ほんとうは
おもいたくないんだ
そうせっけいされてるからね
わたしたち
そらを
とぶことをあきらめてから
どんどん
めがわるくなって
かなしい
って
きもちも
すこしづつそらに
たべられちゃった
そらは
じっとしてる
ちきゅうのゆーれいなのかな
って
だってめにみえないし あと
ちきゅうもてんきゅう?も
まるいんでしょ?
まばたきするみたいにふゆの
そらがくれて 
あけて 
こおって
わたしのまいにちを
さえぎって
ぎゅうじっていく
わたしはみうごきがとれない
「かなしい」かおをして
ただみているしかない
それか、
そらはちきゅうがまるいからまるいんじゃなくて
もとからまるいそらが
こうてんする
ちきゅうに
まいびょうまいびょう
ぴったりしがみついてるんじゃ
ないかな
って
このまえおもったの
つめたいかおしながら
ちきゅうのことみるふりして
このそらはわたしたちのことばっかり
みてる
ねえ
ないぞうが
おほしさま(こうせい)になった
って
ふざけていう
きみは どうおもう?

いつか、
わたしをたべてよ
このそらのかわりに


1204


さつまいもとベーコンのサンドイッチをたべながら 
ぼくはきのう登ったちいさな山のことをおもいだす。
イロハモミジの紅葉がきれいで、山頂から、
もっと高い山々が とおくに
三重か四重にかすみながらつづいているのがみえてそれは 
何日も鼻がつまったまま、
たくさんのことをかんがえられなくなったぼくには
とてもここちよいものだった すすきも
せかいじゅうのあさのように平行にのびていく雲たちも
とうめいにひかって ぼくたちが今ここにしか
いないことを おしえてくれる
ぼくは ぼくの視界というせかいに住んでいて
そのことがとても愛おしい
吊りばしをおそるおそるあるいていると 谷を
よそおう木々もよそおわない木々も
空をぬりわける、ほねみたいになった枝や
木のうろ、そのなかのムササビたちも
どこかとおくからの光をはんしゃして
ぼくの視線をささえてくれるみたいだった。
サンドイッチにはレタスも入っていて
ドレッシングがかかっていてシャキシャキして
ちいさくひかってて甘くておいしい。

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