「Perform」 No.9
「真央…」
血の気が引いていった。
身も心も冷たくなった。
相沢さんは、私を抱きしめてそう呟いたのだ。
私は真央じゃない、
そう言いたかったけど、「美麗」ならお客さんの求めることを演じなければならない。
私は、心を殺して相沢さんを優しく抱きしめた。
そして、心に決めた。
もう会うのはやめよう。
真田に頼んでNGにしてもらおう。
「美麗さん…」
相沢さんが顔を覗き込んでくる。
「これからも指名するので、
ずっと会ってください。
美麗さんといると、
辛い気持ちが和らぐんです。」
私は女優の筈だった。
この120分の間は、
「美麗」を演じきる筈だった。
頬が濡れていた。
「美麗さん?どうしたの?」
相沢さんが私を抱き寄せた。
余計に溢れ出た。
「私は、美麗でも、真央でもないよ。
優美だよ…!」
今まで、抑えていたものが止まらなかった。
風俗嬢ではなく、素の自分になっていた。
長い間、部屋の中にタイマーの音が鳴り響いていた。
ーーーーーーーーNo.10に続くーーーーーーー
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?