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『源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義』高田崇史

QEDシリーズ著者による、もうひとつのQEDといったところでしょうか。

平清盛の義母である池禅尼がなぜ自らの命を懸けてまで、平治の乱に破れた源義朝の三男・頼朝の助命嘆願をしたのか。
そして、平家を滅亡へと追いやった功労者であるはずの源義経が、兄である頼朝に追われる身となり無惨な最期を遂げたにもかかわらず、なぜ怨霊にならなかったのか。

ほかにも源平にまつわるさまざまな歴史上の疑問点を、民俗学者である小余綾こゆるぎ助教授が大学を退職するまえの最後の課題として解き明かしてゆく、という流れ。

わたし、お行儀の悪いことに、たいてい読書は布団で寝転がって行うのですが、この本はハードカバーのうえ厚さも3㎝超えというなかなかの代物で、寝ながら読むには困難を極めた1冊。
それでも一気読みするほどおもしろかったです。

壇ノ浦の戦いで破れた平家のお墓より、勝利したはずの源氏の名立たる武将のお墓のほうが格段に質素で、いっそみすぼらしいほど、というのは知りませんでした。怨霊とならないよう敗れた相手方を手厚く弔うというのは理解できるけど、文面を読むだけでも、源氏のお墓の扱い、あんまりじゃない?と思ってしまう。

それが、まさか、そんな背景があったとは。
道理でわたし、あの一族のこと、あまり好きじゃなかったわけだわ、とへんなところで腑に落ちました。

もちろん、あくまでも一説であって、絶対にこの小余綾助教授の説が正しいとは限らないけれど、理に敵っているし、しっくりきます。

読んで良かった。
充実した読書体験でした。

***

こちらは現在、文庫版が出ているのでそちらのほうが読みやすいかもしれません。
(しつこいようですが、ハードカバー版めちゃくちゃ重いので)

講談社ノベルスから発売されている
『QED 源氏の神霊』とあわせて読むと、相乗効果でより楽しめるかと思います。








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