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いつも見てる”ヤツ”の価値

 クレーンで吊られる色褪せた滑り台は、新しくやってきたツヤツヤな滑り台と世代交代を果たしたのだった。


 安全問題とかの理由から、公園に設置された遊具は年々姿を消していっている。まぁいろいろ諸問題があるから仕方がないのだが、それはそれとして、遊具の少なくなった公園は寂しく感じるものである。
 しかし一方で残り続ける遊具もある。滑り台なんかはどこの公園にも必ずある。だいたい。

 この滑り台が新しい滑り台に交換されるようすを、つい先日たまたま見た。塗装の剥がれた青い滑り台は、真っ赤でつやつや~とした滑り台に変わっていった。新品は見ていてウキウキするものだなぁ。

 ちゃんと古い遊具が交換されている事に関心しつつも、(市はよおがんばっとる)「そういえばあの遊具にも値段ってあるんだよな……工賃とかもあるだろうし……」とかいう、歳食った考えをしてしまった。勿論、世の中のどこにどうお金が掛かっているかを知ることはとても大事だ。お金が掛かっているということは、仕事をしてくれている方々がいるということなので、そこを想像しないのは誠意に欠ける気がする。
 とはいえ、やっぱりこういう様子を見て一番に、「金かかってそうだなぁ」とか思ってしまったのは、なんだかビミョーに嫌だ。もうちょっと可愛らしい考えをしたかったものである。えー例えばー「お仕事してくれてる方々はなんと素敵なのだ!」みたいな。

 さてこの滑り台とかいう遊具なのだが、インターネットで調べてみると製作している会社が数件HITした。え、こういう遊具の販売してる会社さんってちゃんとホームページつくってるんだ……えらすぎ……と思った。なんとなくのイメージだが、公共の遊具を製作している会社は、行政に対してしか営業をかけていないと思っていたのだ。なんか市とかに対してチラシ渡したり営業したいみたいな……。でもちゃんとホームページを作っていて(しかも見やすい)しっかりしてるなぁと思った。
 そのページによると、一面式滑り台(滑るところが一個の超オーソドックスなやつ)が一台50万円で、工事費が18万円と出た。え、意外とお安い。なんかイメージで滑り台とかは一台100万とか余裕で超えると思っていたので、すごくびっくりした。
 地域のおこちゃま達が大挙して押し寄せる遊具のスーパースターは、なんとたった68万円で設置できてしまうのであった。

 ついでに他の遊具も調べてみることにする。
 そういえば公園といえば、滑り台の他に”ブランコ”という縁の下の力持ちも居た。コイツはすごい遊具で、ただ漕ぐだけでも楽しいが、乗るプレイヤーによっては技を披露できたりする。危ないのでくれぐれも推奨はしないのだが、ブランコを反らす「フライパン」とか「ブランコバク宙」とかいう技がある。Youtubeで検索すると出てくるが、フライパンはともかくバク宙は普通に怖い。
 更に言えば、ブランコをめっちゃこいでジャンプすることで距離を競ったり、ブランコの遠心力を使い靴を遠くまで飛ばす「靴飛ばし」という遊びがあったりなど、ブランコ一つだけで遊び方は無限大であった。子供の想像力と貪欲さはすごいのだった。

 ではこの数々の楽しみを生み出す、公園の助演女優賞(男優賞かもしれない)の値段はいかほどかというと、工事費あわせて40万円くらいである。思い出とおこちゃまの創造性を後押しする素晴らしい遊具は、たったの40万円で設置できるのだ。すごい。遊具ってこんな安いんだ。

 そんな事に関心しつつ、私は公園に入って滑り台のはしごを登った。

 久しぶりに滑り台を滑ってみると、意外に小さいことに気がつく。幼き頃は無限に続いているのではないだろうかと思ったあのクソなが滑り台も、身体が大きくなるとめっちゃ短く感じるものなのであった。

 思えば子供の頃に「これ60万だよ」って聞いていたら「たけえ~~!!!!すげえ~~~!!」と思ったに違いない。でも今は「あれ、意外と安いじゃん」と思ってしまう。なんだかそういうところも大人になってしまったというか、まぁなんというか、上手くまとまらないまま記事が終わっていくのだった。

 

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