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67 おみやげの記憶

 2024年1月初旬の
 あらためましてわたくしごとですが
 父が亡くなってひと月余、淋しくて仕方ないのです。

 わたしの旅と父とはなんの関係もないけれど、父に買って帰ったお土産のことなんかを書いたらどうかと思った次第で、ならばまずTシャツか。
 
 そもそも長旅バックパッカーだったので、荷物を増やさないよう土産というものはほぼ買わなかったのだが、放浪のお土産というよりはお詫びの印に、親にだけは軽くて薄くて小さいもの・・・母にはアクセサリーとか伝統刺繍の何かとか、父にはTシャツ・・・を選んでいた。
 それで、だ。
 Tシャツは、自分で言うのも何だがなかなか良かった。アジア各国の若手デザイナーや欧米人がプロデュースしたカッコいい一点モノが結構手に入るのだ。
 父は「お、ええな、これ」と夏の外出着として大事に着てくれていた。よれよれになっても取ってあったようだ。そんなのが何枚もあるはずだ。写真に撮って、グミコnoteに残しておこう。

 ところが素敵なTシャツは、母によってすでに処分されていた。
 ずーん・・・・・
 じゃあそれ以外はどうだ。
 父にはときどき列車の時刻表や道路地図もお土産にしていた。
" 地名が現地語で書かれた世界地図 "をリクエストされたこともあり、スリランカとタイで買った記憶がある。
 いろんなものをコレクションしていた父の部屋は、しかし現在、嵐のあとのような、片付けられない人の部屋のような、大変なことになっており、何がどこにあるのかわからない。主にレコード。それから、本、映画のDVD。空き缶、空き箱、ポスター、写真、何か、謎の何か、何か、何か、何か・・・。

 ひとつ見つけたのが、はんこ。
 マレーシアのクアラルンプールで彫ってもらったものだった。店先で漢字名を書いて字体を選ぶと、翌日までに仕上げてくれる。珍しくそんなお土産を選んだことがあったなあ。
 父は毎年の年賀状に押していたようで、今年の、龍のイラストを準備した傍に、はんこも置いてあった。
 もうちょっとで年賀状つくれたのにね。
 でももう薬も検査も点滴も、痛いことも苦しいことも痒いこともだるいことも何もないから、お父さん、元気やんね。

篆文をちょっと崩したみたいなカッコいい書体で


 また次の旅話へつづく

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