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66 問題は起こるが解決もする (後編) KLダウンタウン→ 空港

 極度の心配性なので旅先でも何かにつけ心配しているのだけど、心配事はおしなべて杞憂に終わり、代わりに予想外のトラブルが起こるのである。しみじみ。

 衝撃の到着を遂げたペナン島では、ジョージタウンに2泊した後ビーチエリア、バトゥフェリンギに移動し、4日間、日焼けに勤しんだ。KLへ戻るバスはスーパーデラックスなどではなく普通のダイレクトバス(学習、学習)で、朝出て昼過ぎにはブドゥラヤ・バスターミナルに問題なく着いた。

 後半のKLも楽しかった。毎日スコールの時間帯があり、出先での雨宿りが日課だったけれど、まあ仕方ない。セントラルマーケット内のマッサージ店、中式按摩に通うのも日課として、いやもうそれは至福の滞在だった。

 そうしていよいよ帰国である。
 来てから知ったのだけど、郊外にある空港まで、マレーシア航空利用者でKLエキスプレス(鉄道)を利用するなら、市街地のKLセントラル駅でチェックインできるうえ、荷物も預けられちゃうのだった。なんと素晴らしいサービスであることよ。

 帰国便は夜遅いフライトである。お昼に宿をチェックアウトしてまずKLセントラル駅へ向かい、チェックインを済ませ、バックパックも預けた。
 往路はロストになると面倒なので機内に持ち込むけれど、帰路は家に帰るだけだし大したモノは入ってないから行方不明になっても構わないのである。

わかりやすい。

 ショルダーバッグひとつの身軽さで街なかへ戻り、買い物して、お茶して、最後のマッサージでほぐされて、夕方までたっぷり遊んだ。 
 さて、そろそろ空港へ向かおうかな。
 連日のマッサージで予算オーバーしたけど、まだ少しあるから、空港に着いたら学校へお土産を買おう。いや〜 " 職場にお土産 " なんて初めてやねぇ。オトナやねぇ。 

 電車でKLセントラル駅へ行き、空港行きチケットを買い、エキスプレスに乗り換えるべく、ホームに入った。 
 入ったが、しかし、だ。 
 人が増えるばかりで電車が一向に来ない。 
 ぞわぞわと空気が怪しい。 
 そこへアナウンスが入る。良い知らせではないことは周りのリアクションでわかる。来ないんだね、電車・・・。 
 
 ほどなく職員がやってきて、いつ復旧するかわかりません、料金は払い戻します、空港へはタクシーで行ってください、と英語でツーリストに促し始めた。
 あ〜 は〜 

 ホームを出ると払い戻し窓口は大混雑、大混乱していた。しばし並んで35リンギッを返してもらう。
 しかしタクシーで空港まで乗ったらかなりの金額になるのではないか。職場のお土産代ぐらいしか残ってないけど大丈夫か。が、そもそもタクシーがない。スコールで街なかでの需要が急増し、ここまで来ないのだ。

 フライト時刻の近い乗客たちがパニックになっている。職員が、搭乗時間を聞いて回り、早い順にざっくり整理して、時々やってくるタクシーに数人ずつ乗せていく。
 わたしは時間に余裕があるが、若いマレー人女性が声をかけてくれたので、もう一人、インド系女子と3人でシェアして次のタクシーの乗れた。出張で来たマレー女子の、クチンへ帰る飛行機が1時間後に出るらしい。

 タクシーは猛スコールの中を高速に入り、びゅんびゅん飛ばした。ワイパーが役に立たないほど降っている。中華系ドライバーはケータイで喋りながら片手で運転している。怖いっ。ケータイ切るかスピード落とすかどっちかにしてくれ。

 恐怖のドライブは奇跡的に無事終わり、三分の一ずつ料金を払った。助かった。マレー女子はターミナルへ駆けてゆき、インド女子とはグッドラックと言って別れた。やれやれ。

 最後の最後でぐったり疲れ、タクシー代で残金はどかんと減り、ひと息つくために買った空港プライスのコーヒーとナッツバーで、お土産代は無くなった。
 うう 生まれて初めて職場でお土産渡すというイベント予定が・・・。
 さらに、ふと思いだす、預けたバックパックのこと。
 あれはちゃんとここへ来てるんやろか。わたしより先に?
 ・・・・ま、いいけど。べつに。

 飛行機はまったくもって問題なく飛び、翌朝問題なく関空に着いた。どきどきしながらターンテーブル前で待っていると、バックパックは何ごともなかったかのように出てきた。マレーシア、ありがとう。
 心配事がおしなべて杞憂に終わるのである。

 ただ、お土産を買えなかったことだけが悔やまれる。
 休み明けに教務室で、あらー、いい色になりましたねーなんて言われて、明らかに暑い国に行ってきた日焼け顔なのに、手ぶら。
「あわあわ、お土産買えなかった理由は、話せば長くなりまして」
 ああ。社会人としてどうなんよと思われてはいまいか。ま、いいけど。べつに。
  

便利で静かできれいなのだが。

 次のエピソードへつづく。

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