Difyを生成AI活用基盤として採用する6つの理由
私は普段から、企業の生成AIを活用した業務改善や新規事業企画などを担当しています。その中でお客様から、「社内で生成AI活用を始めるには何から始めたら良いですか?」とよく質問されます。その際、私は必ずDifyの環境構築から始めることをおすすめしています。
Difyはオープンソースで開発されている、生成AIに特化したノーコードアプリ開発ツールです。現在の生成AI活用基盤の最適解は、このDifyであると考えています。この記事では、その理由を6つにまとめてご紹介します。
Difyに関しては以下の記事で詳しく解説されているので、まだDifyについて知らない方は確認してみてください。
また、Difyで作成できるアプリの一例は以下の記事で解説しています。
※この記事は2024年10月時点の情報を元に作成されています。
理由1:ローコストで運用できる
社内基盤として採用する際、最も重要な要素の一つはコストです。
例えば、ChatGPTのTeamプランは1人あたり月額30ドル、Microsoft 365 Copilotも1人あたり月額30ドルに加え、従量課金(+Microsoft 365の料金)が発生します。
このように、多くの類似サービスは1人あたり月額30ドルからとなっており、社員数500人の会社を想定すると、月あたり15,000ドル(約220万円)と、初期投資としてはかなりの予算が必要です。
一方、Difyにかかる費用のほとんどはOpenAI APIなどのAPI利用料(従量課金)であり、多くの場合、1人あたり月額30ドルよりも安くなります。
例えば、30ドル分のAPI利用をするためには、gpt-4oを想定すると約200万トークン、原稿用紙換算で5,000枚、文庫本換算で20冊分の会話が必要です。
(gpt-4oは入力1Mトークンあたり5ドル、出力1Mトークンあたり15ドルですが、簡略化のため15ドル/1Mトークン、日本語一文字あたり1トークンで算出)。
また、アプリによってはgpt-4o-miniなどの安価なモデルで十分な場合も多く、想定コストはさらに安くなります。
大量にトークンを消費するアプリもありますが、90%以上の社員は月額3ドル以下で運用できていると考えられます。
したがって、社員数500人の会社を想定すると、月あたりのAPI費用は1,850ドル以下となり、インフラ費用を150ドル、インフラ保守人件費を1,000ドルと見積もっても、月あたり3,000ドル(約45万円)で運用できます。競合サービス(月あたり約220万円)と比較しても、格段に安く運用が可能です。
さらに、トークンあたりのコストは減少傾向にあり、GPTよりも安価なモデルも選択できるため、この金額は今後さらに抑えられるでしょう。
理由2:従量課金制で全社展開しやすい
生成AIを社内に浸透させるためには、一部の人だけが使う特別なツールではなく、誰でも気軽に使えるツールにすることが重要です。
他のサービスでは料金形態がアカウント制のため、全社展開を目指すと全社員分のアカウントが必要となり、初期コストが膨大になります。
その点、Difyは従量課金制であるため、全社展開してもスモールスタートが可能です。スモールスタートと全社展開が両立できるので、社内活用のスタートダッシュを簡単に決めることができます。
理由3:モデルを自由に選択できる
LLM業界は現在、多くの大企業が大量の資本を投入してモデル開発を進めており、1ヶ月後にどのモデルが最適か誰にも予測できない状況です。
Difyはオープンソースのツールであり、ほとんどのモデルに対応しています。
そのため、特定のモデルに依存せず、アプリを作成した後でも使用するモデルを切り替えることが可能です。
常に最適なモデルを利用できるため、変化の激しいLLM界隈において、Difyは最適なツールと言えるでしょう。
理由4:社内システムと連携したセキュアな環境を構築できる
Difyはオープンソースであるため、AWS、Azure、GCP、オンプレなど、好きな環境に構築することが可能です。
また、展開するURL(ドメイン)に対して認証を必要とするようにインフラを構築し、会社の認証基盤と連携させれば、特別な認証を必要とせずにログインが可能です。
また、作成したアプリをSlackなどのチャットアプリと連携させて動かすことも可能です。
まるで誰かに業務を頼むかのように、普段使い慣れたチャットアプリ上でDifyのアプリを利用できます。
既存の社内基盤とシームレスに連携できるため、社員がアプリを利用する際のハードルを大幅に下げることができます。
理由5:高いカスタマイズ性
Difyは、一般的なRAGチャットボットからエージェント、ワークフローなど、さまざまな形態のアプリをノーコードで作成できます。
特にRAGチャットボットのカスタマイズ性は非常に高く、PDFやWebサイトからのインポート、RAG Fusion、リランキング、チャンクサイズ指定、分割文字列指定など、非常に細かいカスタマイズが可能です。
用途にあったカスタムを行うことで、汎用的なRAGチャットボットよりも高い性能を安価に実現することができます。
一つのすごいAIを作るより、用途に合ったピッタリのAIをたくさん作る方が、AIを社内に浸透させやすいです。そのため、カスタマイズ性が高いことは非常に重要な要素となります。
つまり、Difyを活用すれば、Excelの関数を使った簡単なツールやマクロを使った高度なツールを作成するように、非エンジニアでも生成AIを活用したツールを数多く作成できます。
各部門に一人くらいの社員が自分の業務のための生成AIツールを作成するような状態になれば、生成AIの社内浸透は成功したと言えるでしょう。
理由6:オープンソースで開発速度が速い
Difyはオープンソースで運営されており、驚異的な速度で開発が進んでいます。
平均するとだいたい週に一度程度のリリースがあり、常に新機能が実装されています。
最新のモデルや技術が積極的に取り込まれるため、汎用的なツールとして常に最高の品質です。
最近もv0.10.0-beta1が公開され、大きな弱点だった「ファイルは画像しかアップロードできない」という制限が大幅に緩和されました。
ただし、ChatGPTやClaude、v0、Boltといったツールと比較すると、一部で劣る部分もあるため、要求される性能や用途によっては使い分けが必要になるでしょう。
まとめ
まとめると以下のとおりです。
ローコスト運用:API利用料のみで運用可能で、競合サービスより大幅にコストを抑えられる。
全社展開の容易さ:従量課金制により、スモールスタートと全社展開が両立可能。
モデルの自由選択:さまざまなモデルに対応し、最適なモデルを常に利用できる。
セキュアな環境構築:社内システムと連携し、セキュアで使いやすい環境を提供。
高いカスタマイズ性:多様なアプリをノーコードで作成でき、業務に最適なAIを大量に生産可能。
高速な開発速度:オープンソースで活発に開発が進行し、最新技術を迅速に取り込める。
生成AI活用で重要なのは、一つのすごいAIを作ることではなく、業務にピッタリのAIを大量に生産し、公開できる環境を全社員に提供することです。Difyを社内基盤として採用し、すべての社員が生成AIとともに業務を行える環境を目指してみませんか?
今後もLLM活用のための記事をちょいちょい作っていきます。
LLMを業務で活用している、LLMを組み込んだシステムを開発してみたい人は是非フォローをお願いします。
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