テニス、こんなにも素晴らしい世界

　私の世代は、テニス人口が多いのではないだろうか？ちゃんと調べたわけではないけれど、少なくとも私の周りには沢山いる。『エースをねらえ！』の影響が多大なのは間違いない。私もあの名作にのめり込んだ1人だ。

　大学の頃は、まぁ猫も杓子もラケット持って歩いてると感じるほど、テニスサークルが林立し、加入した友人が何人もいた。あまりに皆が始めるので、天邪鬼な私のプライドが、
　“どうでも良い”
と、決め込んだ。

　なのに大学2年の春、正門に勧誘に来た男子学生がいて、
　“どうでも良い”
と、思っていたのに、友人と2人入会した。

　サークル活動は、部活ではない。テニスの練習がメインとは言い難い。カラオケ行ったり、居酒屋行ったり（それは、それ）、多少不満な私。
　何故なら私は体育会系。テニスをやるならやるで、技の上達を望む。多少の傷や、手足のまめなど、中学時代のバレー部を思えば、容易いことだ。

　サークルの練習だけでは物足りず、授業後はずっとテニスという日もあった。日没サスペンデッドまで。足のまめが潰れても、私はやめられない。そういう宿命らしい。

　あれから、40年。　
　今も仲間たちとテニスを満喫している。本当に楽しい。大好きだ。
　しかし、お転婆人生を歩んで来てしまった私は満身創痍。肘、膝、腰、ぜーんぶ痛い。でも“痛いからテニスはしない”という選択肢は私の辞書には無いから困る。腰にベルト、テニス肘用のサポーター、そして両膝にも。装備が多くて、情けない。

　しかし、この装備が暑い。一昨日は、気温が30度を超え、風もなく、蒸し蒸しと体にまとわりつくようだった。
　思い切って、何も巻かずに敢行した。お相撲で言う『白いものが無い』状態で挑んだのだ。実際は、全部黒いけど。

　こんなこと何年ぶりだろう。ずっと頼っていた装備から解放されると、随分と身軽だ。全く制限のないこの感覚を、私はすっかり忘れていた。勿論、少し不安はあるけれど。

　年長の仲間から「以前のテニスが戻ったみたいね。」と言われて驚いた。彼女の目に私の動きがそう見えたようで、嬉しかった。

　もう40年前のスピードは無い。テニス歴だけは長くなり、相手へのリスペクトと、狡賢さは身につけた。
　テニスはメンタルスポーツと言われ、気持ちの動きが一球に出やすい。だから、心を整えることは重要だ。メンタルが図太くなったのは、おばさんになったからだけではないのだ。

　チームに、ご夫婦で参加している方がいる。私より少し年上。ずっと一緒にテニスを楽しんできたのではないだろうかと想像する。
　私の夫も、昔はテニスをしていた。大学時代に出会って、何年かテニス仲間だったが、ふとしたきっかけで結婚した。しかし、この元テニス男子、今は全くテニスをしない。
　しかしあの日、大学の正門で、私をこんなにも素晴らしいテニスの世界に誘ったのは、他ならぬ、この元テニス男子なのだ。

　だから、今度は私が勧誘しよう。ちょっと人数足りないので。