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【歌詞語り】「花束」:ねぐせ。・シモンズ

2024年2月20日O.A.「マツコの知らない世界」で、『昭和歌謡』について語っていたJUJUさん。昭和の歌は、文字数が少なく、行間で語る、という旨のことを仰ってました。少なければ良い、多ければ良くない、というものではないですが、昭和歌謡の魅力である点は大いに同意します。

さて、世はもうすぐ別れと出会いの季節を迎えます。そんな季節に「花束」はよく見かけます。街中でも、歌詞においても。

ねぐせ。「花束が似合う君へ」
発売年:2021年(初出)
作詞:りょたち
作曲:りょたち

よくしゃべるな、この男。ねちゃーとしてるけど、でも濃いわけでもない。そんな印象。「花束」がトリガーとなって、別れた女性についての想いを語る語る。とはいえ、具体的な別れの理由は述べられておらず、

本当は細かい所まで覚えているのは君の方だったりしてね

ねぐせ。「花束が似合う君へ」

と語りの量に対して謙虚なところもあります。不思議な粘度感はそういうところから来ているのかも知れません。

でもまぁこういうヤツもいるでしょう。いい悪いではないです。
太田裕美「さらばシベリア鉄道」(作詞:松本隆)でも、女性の方は西へまっしぐらに離れて行くのに対して、男性の方はそれでも「いついついつまでも待って」いたりもするんでね。

いや、情報過多に感じているのは、筆者がオッサンで情報のキャパが小さいだけなのかもしれません。しかし、沢山語っている割には、耳に入りやすい曲調になっているのは、他のポップソングとは一線を画していると思います。

そして「昭和」の方の「花束」

シモンズ「恋人もいないのに」
発売年:1971年
作詞:落合武司
作曲:西岡たかし

恋人もいないのに 薔薇の花束抱いて

シモンズ「恋人もいないのに」

「恋人」からもらったり、「恋人」にあげるであろうことが前提となる「花束」。そんな「花束」を持っている人物には「恋人」がいない。出だしのこの一行だけで十分にキャッチーです。

そしてその花束は、

白い波間に 花びらちぎって
恋に別れを 告げるため

同上

と、恋人との決別を果たすべく用いられるものだと描かれます。

「恋人がいない人」「花束」「空」「風」「海」「涙」くらいしか出てきませんが、「恋人もいないのに」というフレーズの効果的な繰り返しと、何より「行間」で情景を語りかけられるので、少ない情報でも心揺さぶられます。

ねぐせ。のヒットのおかげで、JUJUさんの言ってたことがよく分かる例に出会えました。

その他、藤井風「花」、Superfly「愛を込めて花束を」、八代亜紀「花束(ブーケ)」などなど。「花束」の歌は沢山あるので、また聴いてみたいと思います。筆者はまだ花粉症には罹患してないので。


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