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【DESTINATION】プロローグ11 軍事帝国ベルゴルド


世界の覇権を握る国「アルメニカ合衆国」。その大国と双璧を成す強国「軍事帝国ベルゴルド」。

46の州と9の地方、3の連邦市、22の共和国、ひとつの自治州、4の自治管区。計85の連邦構成で成り立つ連邦共和制国家。

アルメニカと同じく多民族文化をもつ国であり、190もの民族が暮らす。「ベルゴルド正教」のほか「ラムイス教」「仏教」「ヴァラドス教」などの宗教が信仰されている。

首都
・ソルビエ

人口
・約1億4645万人

軍事力
・配備核弾頭1874 貯蔵核弾頭2815 予備核弾頭1400 計6089発。

戦車12000両 戦闘機1197機 戦略潜水艦240機

軍人数
・400万人

「ベルゴルドの思想」

「知恵のない人間、醜い人間、無能な人間、目標ももたず日々をムダに過ごし、生をむさぼるだけの人間に生きる価値はない。優秀な者だけを残し、愚者ぐしゃは滅ぶべき。その考えに反する者も同様に」という思想「愚排ぐはい主義」をかかげる。

愚排主義ぐはいしゅぎ
不倶戴天ふぐたいてん
敵対する者に深い怨みや憎しみをつねにもち、生かしておかない。
意趣遺恨いしゅいこん
やられた怨みを忘れてはならない。必ず復讐を遂げる。
傲岸不遜ごうがんふそん
愚か者を見下しさげすむ。この世から排除する。
これが愚排主義の3原則。

「国の政治」

支配者(皇帝)が国を統治する国家形態「帝王制ていおうせい」を採用。政治的権威がひとりの人間に属する。口をはさむ権利は誰にも与えられていない。

皇帝が唯一の主権者であり絶対的存在。

「帝王制の方針」

自国家または民族が、己の利益や領土・勢力拡大を目標に、政治経済的・軍事的に他国や他民族を侵略・支配・抑圧して、より強大な国家づくりをめざす。

「ベルゴルドの皇帝」

現皇帝は先代から愚排ぐはい思想を受け継いだ男「カイザー」。1990年3月の選挙に勝利し、正式に皇帝の座に就く。

先祖代々、政治家として華々しい活躍を見せてきたカイザーの一族だったが、本人は政権発足当初、ほとんど無名の存在。

御曹子おんぞうしの手腕を疑問視する声もあったが、ときを経るにつれ国民の人気を獲得。

「国の歴史」

国民の多くが何世紀ものあいだ、農奴制のうどせいに苦しみ、厳しい生活を強いられてきたベルゴルドは、独立派武装勢力どくりつはぶそうせいりょくのテロによる治安の悪さ、紛争や他国との領土問題が絶えない国。

農奴制のうどせい
・封建制の名残り。農奴のうどは農民と奴隷の中間の身分。領主から貸与された土地に、労働地代を支払う義務がある。
・移転の自由はない。契約期間は、その土地に縛られてから死ぬまで。そのあいだ働きつづけなければならない。逃げれば処刑。土地とともに売買・譲渡されることもある。
・決められた額までの財産を所持でき、家族をもてる点が奴隷とは異なる。

カイザーは「強国ベルゴルド」を標榜ひょうぼうし、テロリストを壊滅状態にまで追いやったほか、中央集権化および、法の整備による独裁を強靱かつ大胆に進めていく。

皇帝就任から半年後、政治家との癒着ゆちゃく、違法薬物の製造で巨万の富を築き、経済的・政治的に影響力をもっていた企業「フォルティス社」を強制的に国有化。

政府の人間を役員に加えることで国のコントロール下に置いた。

「フォルティス社」

薬品開発部門をもつ国際的企業。「切り傷に塗布する軟膏なんこう・トラマイシン」「人気の美容液・ホワイトキュア」をあつかう、業界シェアNo1の製薬会社。

だが、それは表向きの顔。

裏では違法薬物などを開発し、これを大きな資金源に世界市場を牛耳ぎゅうじっていた。政界にも太いパイプをもち、法規などの改正、他社や政財界へのスパイ活動も手掛ける。

「人体実験をともなう危険な薬品の開発をおこなっている」過去にはそのような内部告発があり、国は調査団を派遣するも事実確認はできず。

それはフォルティス社独自の組織、特殊暗殺部隊「D・E・D」、証拠隠滅専属部隊「I・N・P」の暗躍によるものだった。



反独裁派集団はんどくさいはしゅうだんの壊滅、難攻不落といわれたフォルティス社制圧を成し遂げたカイザー。

彼の強硬な姿勢はとどまることを知らず、さらに勢いを増していく。

国が豊富にもつ天然資源(石油、天然ガス、木材、鉱物)を増減産することで価格を操作。輸出の大部分を占める原油やガスの値段を5倍にまで引き上げた。

これが功を奏し、ベルゴルド経済は8年連続で成長。GDPは72%増加、所得は2.5倍、賃金は3倍以上、失業と貧困は半減、国民の生活満足度も大幅に上昇。

こうした手法は強権的と、ほかの国々から批判を受ける一方、国民からは広く支持を集めた。

そんななか、ある事件が世間を騒がせる。

国際テロ組織との関連が噂されるなど、黒い噂が絶えずついてまわるカイザー。

その関係性をあばこうとした外国人ジャーナリストたちが、次々と不審な死を遂げた。そのほかにも、政権の関与が疑われる事件が多数発生。

しかしながら、カイザーの強力なリーダーシップは、ベルゴルド国民を魅了してやまない。

「神に逆らった天罰がくだった」すべてそれでカタがつき、真実は闇のなかに葬り去られる。



2012年の皇帝選でも再当選を果たし、最高権力者の座を維持したカイザーは、世界一の強国に焦点を定め、財力のすべてを国の軍事力強化に注ぎ込んでいく。

「愛国心により、ベルゴルドのために命を投げ捨てる人材」の育成に乗りだし、国内の戦士を鍛えあげて兵力を拡大する一方、世界中から武術にけた人材を迎え入れ、一大兵団を築きあげる。

その兵力は400万人を超える強大なものとなった。

大金をつかい、国内外問わず優秀な科学者を集め、新型兵器の開発にも着手。大陸間弾道ミサイルや核兵器、最新鋭の技術を搭載した戦車、潜水艦、戦闘機を次々と開発させ、軍事帝国の名を欲しいままにしていった。

国民は貧困と物不足にあえぐが、それでも支持率の低下はまったく見られない。



「国の料理」

寒いベルゴルドでは、体を暖める具だくさんのシチュー、スープ、煮込み料理が多い。

なかでも赤カブ(ビーツ)をつかった色鮮いろあざやかなボルハチは、世界三大スープのひとつに数えられている。

具材に決まりはなく、地域によって素材は異なる。根菜類を中心とした野菜、ソーセージ、ハム、ベーコン、肉団子をおもに使用。

通常は温製だが、夏場には冷製スープにすることもしばしば。本場のボルハチはバターやチーズなどの脂肪分が多く、とても濃厚。

ふんわりとした生地で肉やキャベツ、リンゴやチェリーといったフルーツを包んで揚げた「ピロキシ」も名物料理。

「国の特徴」

ローラシア大陸の半分以上を領土とするベルゴルドは、1万7000万平方m以上の面積を誇る世界一広大な国。

しかし、広大であるがゆえ交通手段の整備が追いついていない地域が多く、それが大きな社会問題となっている。駅やバス亭は居住地域や職場から遠く離れ、人々の移動手段は徒歩しかない。

世界有数の極寒都市でもあるベルゴルドは、冬の時期ともなると、平均最高気温はマイナス40℃近くに達する。期間も長く、約半年間つづく。

そのあいだ、凍結した道路を転倒せずに歩いたり走ったりすることで、自然と足腰や体幹が強化される。

「ベルゴルド人の性格」

初対面の人に対して警戒心が強く、誰とでもすぐに打ち解けて会話を始めることはあまりない。誰かにびたり、積極的に愛想を振りまいたりもしない。

男女ともに気が強く頑固な人が多い。そのうえ、プライドが非常に高く、自分の非をなかなか認めず、簡単には謝らない。

この謝らない性格は、皇帝カイザーの政治的体制が背景にあると考えられており「反省や失敗を認めるのは敗北で恥ずべきこと」との意識が強い。

「ベルゴルド人の特徴」

一般的に知られる特徴は「学問」「芸術」「スポーツ」に秀でた才能を発揮していること。

特にスポーツにおいては、さまざまな競技で名選手を輩出。ベルゴルド人特有の長い手足を活かしたフィギュアスケート、体操やバレエ、筋力と体幹をつかうアイスホッケーが有名。

産まれもった高い身体能力、体格の良さと優れた持久力。これらに厳しい指導がくわえられ、スポーツの強豪国としても名をせてきた。

もうひとつの特徴は、世界トップクラスを誇る美貌。

ベルゴルドは緯度の高い場所にあり、日射時間が短く、他国とくらべて紫外線を浴びる機会が極端きょくたんに少ない。そのため、光老化ひかりろうか(紫外線を浴びると引き起こされる老化現象)が抑えられ、魅力的で美しい肌を保つことができる。

平均身長は164cm。手足も長く、ロングコートや細身のパンツが似合う抜群のスタイル。かわいいだけでなく、カッコいい美しさをもっているといえる。

ベルゴルドは生存自体が困難なほどの極寒地。体力に優れた精鋭個体でなければ、子孫を残し生き延びられない。

この国の人々がもつ芸術的な美しさ、肉体的な強さ、何者にも屈しない精神力。その強靱さの秘密は、広々とした社会と冬の厳しい寒さにあった。


【DESTINATION】プロローグ11 軍事帝国ベルゴルド END


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