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うつ病経験者から見たB’zの「Purple Pink Orange」


こんにちは、あんこです。

さて、今回はちょっと趣が違うタイトルになってますが、ご安心ください。

うつ病どうこうの話ではなく、
「Purple Pink Orange」をうつ病経験者から見たらこうなったよというだけの解釈・感想です。
つまり中身はいつもとおんなじです。

何を隠そう、私はほんの少し前までうつ病を抱えていました。
現在はほぼ寛解して、Pleasureに参戦できるぐらいには元気にやっておりますが。

では早速書いていきます。


Purple Pink Orangeとは


Purple Pink Orangeは、B’zのアルバム「DINOSAUR」の最後の最後に収録されている曲です。
2017年発売のアルバムなので、B’zとしては比較的新しい方の曲になりますかね。
どうやら平成最後に出たアルバムだとか。

しかし発売当時、私は一人暮らしをしていて、
金もなく、CDプレイヤーもなく、当時はサブスクでの配信もされておらず…といった状況で、全く聴けておらず。
なので、きちんと「DINOSAUR」を聴いたのは割と最近です。

またよりにもよって、初めて聴いた時はうつ病でずっと寝込んでいるような状態だったものですから、最初は言葉と音を上手く認識できず。
少し回復した際に改めて聴いて、号泣した次第です。しゃくりあげて泣きました。
B’zの曲であそこまで泣いたのは、この曲が初めてです。


歌詞の解釈


さて何がそこまで琴線に刺さったのか。

それは、この曲があまりにも「弱った人間の心情についての解像度が高すぎた」からです。

自分の状況と重ねてしまってしんどくなったのが1つ。
また、「こんな想いを知ってくれている人がいる」という嬉しさも1つ。
(稲葉さんもこんな気持ちになったことがあるのか?と勝手に心配もしてしまったり…)

さっそく1番から見ていきます。

1番


この歌に出てくる登場人物には「僕」と「あなた」がいますが、ほとんどが「僕視点のモノローグ」です。

物語はなんとも等身大な僕の描写から始まります。


壮大に色を変え
暮れてゆく空を見てる
明日を迎えることに
訳も分からず怖気付いて
つのる苛立ちを 隠せない弱さ



どうやら僕は、怯えという消極的な気持ちだけでなく、苛立ちという攻撃的な気持ちも抱いているようです。
さらにその苛立ちをどうにもできず、外に出してしまっていると。
そしてそんな自分の弱さも自覚していると。

ここだけで、どうやら僕が何かに追い詰められていることが分かりますね…
壮大な自然とは対照的に、弱くてちっぽけな僕が印象的です。

持論ですが、落ち込んだり苛立ったりしても、自分で自分の機嫌を取れてるうちはまだいいんです。

問題は、自分で自分の感情をコントロール出来なくなるレベルにまでなっていること。
ここまでストレスをためたり精神を追いつめてしまうと、普通の状態まで回復するのはなかなか厄介です。

しかし、この「僕」はさらに重症です。
なぜなら、自分でも「訳も分からず」怖気付いているからです。

明日に何か人生を揺るがすようなビッグイベントがあるとか、今日やらかしてしまい明日それを伝えなきゃいけないとか、そういうあるあるじゃありません。

具体的な理由はない。
だけど、訳も分からず怖い。

これ相当深刻な精神状態ですよ。
なんでかっていうと、うつ病真っ盛りの時の自分と全く同じ感情だからです。


うつ病が酷かった時に、よく聞かれたことがありました。
「何が辛かったの?」
「何を改善したらよくなりそう?」

多分、過去を突き詰めていけば、きっかけとなる出来事はあったはずなんです。
でもその出来事だけで精神を病んだわけではない。
1つ1つの出来事がチリツモで精神を削っていき、
自分でも気がつかないうちに心が壊れてた。
上手く言えませんが、私にとってのうつ病はそんな感覚でした。

なので、
削られた心はそのまま残っている。
でもなぜここまでなってしまったか、理由は分からない。
だからどうしていいかも分からない。
さらにその不安で、焦りや恐怖、苛立ちを抱えてしまう。

という負のループなんですね。

そのため、皆が善意で「原因はなんなのか?」を聴いてくれていると頭では分かっているんですが、
それに答えられず人の優しさが負担になりがちでした。


…お気づきになりましたか?
そう、この部分こそまさしく、

わかってるのに
貴方の優しさ
受け止められないままで
そっと目を閉じる


に該当するんですよ。


優しさだと分かってる。
それでも今の自分には応えられない、受け止められない。
だから何も返さずそっと目を閉じるしかない。

…いやね、あんまりこんな簡単な言葉で纏めたくないですけど「ヤバい」ですよ。

何?稲葉さん専門書でも読まれた??
ってぐらい、精神状態が危うい人間のことを理解しすぎてる。

でもここまでのことを描写しておいて、
まだ1番のみっていう…
怖い…もう稲葉浩志が怖い…


2番


1番だけでも「僕は精神が不安定である」ことが痛いほど分かるんですが、
2番に入ると僕の現状がよりハッキリと見えてきます。


闇がゆっくり迫り
色彩は深みを増し
動かない心抱え
また体を横たえるよ
長いトンネルのその先を見つめる


やばい涙出てきた
ここ、いっつも耐えられません。

1番で僕は、壮大に色を変えながら暮れてゆく空を見てました。
つまりこの時は、まだ夕方です。
しかし日が完全に沈むと、夜がやってきます。
2番はそこからの描写です。

突然ですが皆さん、夜になると頭の中で反省会を開いちゃったりしませんか?

暗いことを考えてしまったり、今考えてもしょうがない未来のことを不安に思って、頭の中がぐるぐるしたり…

夜は孤独と穏やかさと静寂とが織り交ぜになった唯一無二の時間です。
その柔らかさが味方になってくれる時もありますが、
心の隙間に入り込んできてしまい、毒になる時もあります。

歌詞を読む限り、僕は後者の「夜が敵になってしまっているパターン」です。

周囲が暗くなり、活動停止していくにつれて、
僕の頭も心も闇にゆっくり包まれていく。
そして内に渦巻く不安、不満、苛立ち、悲哀、絶望…いろんな感情が色彩豊かに襲ってくる。
僕の心は限界に近いのか、それともいつものことなのか、はたまたその両方か…
体を横たえて、この長い長い苦しみに終わりがあると祈り、見えない先を見つめます。

そして、

聞こえているよ 遠いその声は
さまよう僕をいつまで待っていてくれるの

と一抹の不安を抱きます。

僕の気持ちを考えると涙止まりません。
本当にその言葉通り、さまよってる感覚なんですよね。

このままじゃまずいことは分かってる、
だから早く脱したい、
でもどう進めばいいのかも分からないし、
そもそもゴールがどこかも分からない

気にかけてくれる人がいても安心できない。
いつか自分に愛想をつかして離れていってしまうかも、そもそもいらだちを隠せない自分なんかに構ってもらって申し訳ない…
でも離れて欲しくない。

こんな事ばかりぐるぐる考えてました。


優しくしてもダメ、離れてもダメって言ってることムチャクチャだろ」と今では思えるのですが、当時は何故かこの思考の袋小路から抜け出せなかった…
自分でも自分が分からないんですよね。
多分、僕も似たような状況なのでしょう。
キツい…


Cメロ


心も体も動かない…
そんな状態で僕は、

分かっているのに 変われるはずなのに
あなたの事を1人にしてしまう

とどうしようもない気持ちを抱きます。

いや〜これ、僕はめちゃくちゃ優しい人間ですよ。

だって体も心すらも動かない中であなたのことを考え、心配している。
あなたを1人にしてしまうと分かっているのに、
なかなか変われない自分に焦っている。

あなたがいるのはトンネルの先です。
動けない状態で先に進むのは容易ではありません。
それなのに、あなたのために自分を何とかしようと思える。

やはり、私からすると、僕はとても優しい人間に見えます。
逆に言えば、こんなに心根が優しい人だからこそ、ここまで追い詰められてしまった何かがあったのかもしれませんね。

結末


さて、

僕を思ってくれる人(あなた)がいる
僕は心も体も動かないような精神状態である
そんな中でもあなたのことを考えられる優しさが僕にはある

ことが分かった上で、いよいよクライマックスに入っていきます。

こんなにっちもさっちもいかない状況で、
僕はいったいどんな結末を迎えるのでしょうか。

願っているよ この体の奥で
宝石のように光る日々が蘇るように

聞こえているよ 遠いその声に
笑顔見せて答えられる
そんな日はまた来る


もうね、号泣

今も泣きながら打ってます。
こんなん無理だよ。

毎度言ってるけどどうやったらこんな歌詞かけるの?
稲葉さん人生何回目?


僕はちゃんと覚えているんですね。
今は心も体も動かないけど、
楽しかったあの日々を。
宝石のような日々たちは、きちんと僕の血肉となって残っている。
そして、その眩さを再び実感できる日が来ることを祈っている。

今は声に答えられる段階ではないけれど、
きっといつか、その声に笑顔で答えられる日が再び訪れる。

そう信じながら、

壮大に色を変え 暮れてゆく空を見てる


…本当にこの曲は、人によって解釈が180度変わりそうですね。
ですがあくまで私は、「僕はトンネルの出口に向かって歩を進められたのだ」と思いました。

1番で暮れてゆく空を見ていた時は、ただただ不安を覚えるだけだった僕。
優しさを受け止められず目を閉じた(現実逃避した)僕。

2番では未だ心も体も動かないものの、トンネルの先を見つめることが出来た僕。

そして最後には「きっといつか笑える日がくる」とトンネルの先を見つめるだけでなく、思いを馳せることが出来た僕…


周りから見たら、あまりにも小さな変化かもしれません。
「結局僕は最後まで動いてないじゃん」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも肝心なのはそこじゃないんです。
自分でも訳も分からないぐらい追い詰められて"今"からも逃避していた僕が、少しずつでも自分の将来に思いを馳せられたことが、立派な成長かつ回復への大きな一歩なんです。

一発逆転のように簡単にいく話ではないでしょう。
しかし、少なくとも今までいた場所を抜け出せる道に、僕は足を踏み出せたのだと思います。

人の心は、空模様のように変化するものです。
雲ひとつない綺麗な空だったかと思えば、ちょっとしたきっかけで大雨台風雷雨になることもある。

ずっと晴れてればいいのにと思ってしまいますが、生活は晴れだけでは営めないものです。
雨も絶対必要です。

繊細で美しい、空にも似た人の心。
雨が降って苦しい時もあるけれど、
また綺麗な青空になる時がきっと来る。

そんな壮大な人間の心。
人間の弱さと強さを信じた、
小さな、けれど確かな祈りと希望を歌った歌なのかな、と私は思いました。


総括


も〜〜何この歌…(褒めてる)

稲葉さんって、なんでこんなに人の心の機微を的確に見抜いて、かつしっとりと描写することが出来るんでしょう…?

今までB’zで泣いた曲は
光芒」「」「夢見が丘」「命名」あたりがいい勝負だったのですが、
ここに来て「Purple Pink Orange」がブッチギリのトップに躍り出ました。

それぐらいめちゃくちゃ好きなんですけど、
あまりにも私の急所に刺さりすぎるので気軽に聴けないのが辛いところです。

この頃の会報読んでみたいな〜。
Purple Pink Orangeへのコメントとかあったんですかね?
当時のお2人の所感を聞いてみたいところです…

そしてここまで書いといてなんなんですけど、
正直「まだ十分にPurple Pink Orangeについて感想を練れていない」感覚があります。

今回はあくまで「僕の精神状態だけ」にフォーカスして語りましたけど、
僕とあなたの関係性に着目して「僕とあなたの恋愛模様を綴った歌」と考えても面白いですね。

また新たな感想が出てきたら追記するかもしれません。
それぐらい、いろいろな考え方が出来る歌だと思います。

「DINOSAUR」というタイトルのアルバムで、最後の最後にこの曲を叩き出せるB’z、
何がDINOSAURやねん…とワーワー母に話したところ、したり顔されました。
B’zと母に、凄い勢いで手のひらの上で転がされてます。
でも楽しいね。


あんこでした。


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