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『私は勇敢な1人バスツアー客だ~ぶよぶよのうどん編~』(3/4)

前回からだいぶ空いてしまいましたが、こちらの記事の続きになります。

《あらすじ》

1人で伊勢神宮バスツアーに来た、大学生だったわたし。知らない人に囲まれて、果たして私は無事に旅を終えられるのかー
勇敢な私の、ヘタレな物語。

私は今、伊勢神宮バスツアーに来ている。
1人で。
先ほど、夫婦岩に行ってきて、大阪のオバちゃんに飴ちゃんをもらった。
これからいよいよ伊勢神宮に向かう。

***

次に向かったのは、外宮である。
伊勢神宮は、外宮と内宮があり、先に外宮からお参りするのが習わしだそうだ。

外宮は添乗員さんが付いてきてくれる。
よかった!!

御一行様で御神木のところまでやってきた。
御神木の説明を受け、みんなうわぁと言いながら、手を触れてパワーをもらっていく。

私ももちろんパワーをもらいにいく。
パワーもらいの列に並ぶ。

御神木は太いので、複数組で触る。
私の番になると、もう一組、反対側から若いカップルが仲良く幹を触る。

想像してみて欲しい。

勇者とカップルは、同じ木を囲んで、仲良く英気をもらう。

…これが、天高く、馬肥ゆる秋というやつか。
覚えているのは高い空。

***

そしていよいよ本丸の内宮へ。
内宮はとても広い。
そして、おかげ横丁と呼ばれる、巨大な参道の出店が名物である。

到着したら、本宮には行かずに、まず昼食となった。
ツアーの説明にも書いてあった、伊勢うどんだ。

私はうどんが好物である。
伊勢神宮のバスツアーにも色々種類があり、昼食のバリエーションも色々あった。
伊勢うどんは伊勢神宮の名物のひとつであると聞く。伊勢神宮に来て、伊勢うどんで良いのかは賛否両論かもしれないが、まぁ、大学生の1人バスツアー旅としては上出来である気がする。

まぁ、何はともあれ伊勢うどんだ。

昼どき、混み合うおかげ横丁の中でも、特に人気ひとけのない建物の2階へとバスツアー御一行は案内される。

やけに人がいないと思ったが、考えてみれば、バスツアーだから貸切だ。お店に並ぶ必要もない。ありがたやありがたや。少々の不安とありがたさを抱いて階段を登る。

そして、二階では、座席が指定されて、食事が用意されていた。
大事なことなのでもう一度書く。
座席が指定されている。

〇〇様、みたいなのが並んでいる。
自分の名前をキョロキョロ探しながら歩く。
皆、大体はグループで来ている。
私の座席は、一番奥だった。

…間違いない。このバスツアー、一人で参加しているの、私だけだ。

こいつ、今さら何を言っているのだ、と思ったかもしれない。しかし、意外と、個人客が他にいるのか否かを正確に把握する機会は、他にはなかったのだ。

ジワジワと広がる、羞恥心と孤独感。
いや。何も悪いことはしていないし、何も恥じることもないのだが、ああ、私、1人で参加してるだけじゃなくて、一人で参加してるのが1人なんだ、と、無駄に追加の孤独感が襲ってきた。

お椀に伊勢うどん。
見るからに濃いタレに、ブヨブヨの太いうどん。

周りを見てみると、皆、ほぉ、なるほど、みたいな反応。

食べてみる。
…ほぉ、なるほど。

…思ったほど、味がしない。ベロンベロンですぐちぎれる。

「…美味しいねぇ?」
誰かがそう呟きながら周囲を見渡して、目が合った。
私はなんとなく頷くように首を縦に振りながら視線を逸らした。

私の好きなうどんではないけど、この1人バスツアー旅には合っている気がした。
何せ、ちゃんとツアー広告には伊勢うどんを食べると書いてあって、それを選んで来たのだ。仕方がない。

***

そこからは長らくの自由行動。
意外と自由行動は長くない。

私は、内宮にある沢山の宮という宮をみっちり廻った。

因みに、私はこの後人生で2度ほど伊勢神宮を訪れている。そして、1人で来たのは、この一回きりである。

この時が一番しっかりとお参りをした。

人と一緒だと、沢山おしゃべりしたり、お買い物をしたりする。
でも、1人きりだったので、本当は寂しがり屋の私は、どんな神様かなんてお構いなく、あちこちの神様に自分の話を聞いてもらった。神様相手にマシンガントークを繰り広げた。
ついでに、宮の横にある馬小屋の馬にも話を聞いてもらった。

ねぇ。
私の人生、これで合ってます?
どこをどう間違えたんですかね。
あの時、どこをどうすれば良かったんでしょうか。
わかっていたとて、どうにかできたのでしょうか。
これから、頑張り次第で何とかなるものなのでしょうか。

馬耳東風。
私の自己中な質問に、スピリチュアルで不思議な天の声なんて降り注がない。

私が手を合わせている間に、他の人がどんどんお参りを済ませていく。

結局、私は、おはらい町やおかげ横丁(土産屋や飲食店が立ち並ぶ参道)にはほとんど立ち寄らず、何も買わずに、集合時間にバスに戻った。

バスでの帰りの道中、干物みたいなのがめっちゃ売ってる大きなお土産店に数十分の立ち寄りがあった。
ツアー客以外誰もいない。
そして、ここでの滞在時間が異様に長い。
そこで、バラマキ用のご当地ぷっちょだけ購入した。

ーーー

バスツアーには、しがらみが色々あるのだと理解した。

帰ってすぐ実家に電話して、母に言った。
「伊勢神宮のうどん、ブヨブヨやったわ」

…あれ、勇敢な話がテーマだったような…?

※あくまで個人の感想です

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