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おっさんの夢

「俺の曲、どうでしたか?」

朴訥だけど、ドスの効いた声でそう尋ねられた僕は、

「よ、よかったですよ...」

と若干ビビった感じで答えてしまったことをふと思い出して、今更ながら後悔している。

本当はすごく感動していたから余計に、ね。

あれから早くも10年が経って、当時から知る人ぞ知る存在だった彼は、いまだに知る人ぞ知る存在なままで、いつしか知る人ではなくなっていた僕はすっかり彼のことを忘れていた。

けど、ひょんなきっかけで昨日、彼のことを思い出した僕は、たまたま暇を持て余していたこともあり、久しぶりにサブスクでずっと彼の歌声に耳を傾けていた。

そうそう、この人、ちょいちょい歌詞の中で

雨が雪に変わること

に謎の希望を託すんだけど、

そういえば、そのフレーズに、過剰にグッと来ていた当時の自分を思い出した。

何しろ、初めて付き合った彼女の名前がユキさんで、そして、何よりも雪のマークとは、どうやら一生、腐れ縁の運命のようだから。

僕の両目からときおり流れる雨粒も、いつか雪に変わって、あの雪の結晶のようにキラキラと輝き出す日が来るのだろうか?

なんて、ね。

けど、確かに彼が歌うように

いつしか雨は雪に変わって、

そして、

愛は勇気に変わって、

ボクもまた生きていく覚悟ができるのだろう。

まあ、とりあえず、

この世界には

おっさんの夢

というものが存在することを

おっさんになった僕は

とてもよく知っている。



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