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パフェと牛サオ

昨日は、久しぶりの外勤でおおいに羽根を伸ばそうかと思ったけど、どうにもワーカホリックな性分は変えられず、結局、夕方までガッツリ仕事をして、ヘトヘトに疲れ果ててしまった。でも、この日の自分のミッションは予想以上の収穫を残せたので、気分的には割とアゲアゲではあった。

だから、その勢いに乗じて、その晩は出先の池袋で久しぶりに大学時代の友人と飲む約束をしていたのだけど、それまでの空白の時間をパフェで埋めることに決めたのだった。

そのお目当てのパフェのお店は「ミルキーウェイ」という店名に違わぬファンシーでガーリーなインテリアで、しかも店内は、若い女の子の二人組か、カップルしかいなかったけど、僕はまったく物怖じすることなく、

「おじさん、ひとり」

とウェイトレスの女の子に伝えて、案内された二人がけのテーブル席にドカッと座った。

早速、メニューを見たら、期間限定の「チョコばななちゃん」が美味しそうだったから、迷わずそれを注文した。

「チョコばななちゃん、ひとつ」

いわゆる出来るビジネスマンな僕は、必ずお店や商品に敬意を表して、商品名は決して省略せずに正確に言うようにしている。

そして、オーダー後、しばらくして登場した

チョコばななちゃん

の御姿を拝見した瞬間、自称オトメンの僕のガーリー度は最高潮に達した。

まさにこのときの僕は、コッポラはコッポラでも、フランシス・コッポラではなく、ソフィア・コッポラだ、と主張したくなるくらいに。

チョコばななちゃんだよ♡

そして、長めのパフェスプーンでトップオブチョコばななちゃんのチョコアイスをすくって口に含んだ僕は、目を閉じて、心の中で

「あ、あま〜い!」

とつぶやく。う〜ん、まさに昇天しそうなくらいにハッピーなひとときだった。

ちょうどそんなとき、これから会う予定の友人から電話がかかってきた。あと40分後くらいで合流できそうとのことだった。

「なんか食べたいものとかある?」

と僕が尋ねると、

「確か池袋には犬の肉を食べさせる中華料理屋さんがあるはずだから、そこにしようぜ」

と彼はニヒルに答えた。

ああ、そうだったわ、こいつは昔からこーゆーゲテモノ好きなタイプだった(苦笑)

実際に学生時代、ベトナムと韓国で犬肉食べたって言ってたしなあ。

しかし、ガーリーでファンシーなパフェから一転、犬肉という、その世界線のあまりの急変ぶりに、僕は思わず笑ってしまった。

だから、もちろん犬肉なんてまったく食べたくなんてなかったけど、今回は彼のその提案に素直に乗っかり、お店の名前を聞いた僕はひと足はやくそのお店に行くことにした。

しかし、その店名を聞いて、もしや?と思ったら、まさにそのもしやだったから、その偶然、というか、間違いない神様のイタズラに僕はさらに可笑しくなってしまった。

あのあやしも、いや、あやしいカフェも健在だった

ちなみに今回も空芯菜の炒めものはなかった(笑)

そして、メニューを見る限り犬肉もなくてホッとしてたら、約15分後に合流した友人がメニューを隅から隅まで舐め尽くすように見た後、明らかに不敵な笑みを浮かべていた。

や、やべえ、と思っていたら、案の定、

「牛のサオって串があるから、それ食べようぜ」

って言い出した。サオって、要するにちん○んのことだよね。

でも、久しぶりのこの彼の鬼畜なノリが懐かしくてなんだか妙に嬉しくなった僕は覚悟を決めてそんな彼に付き合うことにした。

前にも食べたちゃんと美味しい羊串のあと、いよいよヤツが登場。

手前が例のヤツ
くるくるしとります。

でも、やっぱりげんなりした気分で串を焼いて、勇気を出してかぶりつく。

無味無臭で、なんか独特のねちょっとした食感があり、思ったほどまずくもなかったけど、決して美味いと言える代物でもなかった。

しかし、ついさっきまでチョコばななパフェに舌鼓を打ってたのに、どうしてこうなった(笑)

一方、目の前の彼は、なんとも言えない微妙な表情を浮かべながら、

「けど、なんだか食べたことある食感だよなあ」

とさっきからブツブツ呟いている。

「なんかゼラチンみたいじゃない?」

と僕が言うと、「ああ、それだわ、それ」と彼が答え、

そして、この瞬間、僕らの頭にある同じワードが閃いて、ほぼ同じタイミングで、

「ああ、だって、これって要するに海綿体だもんな!」

と叫んだのだった。

それがやけに可笑しくて、

「海綿体なんて言葉がすっと出てくるあたり、さすがお互いに国立大出身のインテリだよな」

と言い合いながらゲラゲラと腹を抱えて笑い合った。

あの頃と一寸違わぬくだらねえをひたすら煮詰めたこのノリ。

悪くないね。

でも、何だかんだ、気づいたら、この日も僕らは真剣な顔でお互いの仕事のことばかり話し込んでいた。

業界も職種もまったく違うけど、上も下もポンコツな、てなもんや三度笠なアチャラカ喜劇的な状況は瓜二つで、そんな中で、ひとり孤軍奮闘している様も、まったく同じだった。

しかし、大学1年のときに初めて彼と会ったときに確かに

こいつとは一生の付き合いになるだろうな

と確信して、実際にそうなってるわけだけど、一方で、まさか

こんな風に会うたびにすごく励まされる存在になるなんて、

完全に(うれしい)誤算だった。

というか、悔しいけど、こいつ、今めっちゃカッコいいやん、と思ってしまった。

ああ、ホント、オレも負けてられんな!




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