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私は、土になりたい

子供の頃、テレビで「私は貝になりたい」というドラマを見たことがある。白黒だったので、おそらく昔のドラマの再放送だったのだろう。
めんどくさいから説明は省略するが、あらすじもとても鮮明に覚えている。

そして、誠に残念ながら、今の僕は、このドラマの主人公の気持ちがとてもよく分かるような状況にいたりする。

けど、僕は貝にはなりたくない。

代わりに

僕は土になりたい。

あのなんの変哲もない、誰にも注目もされなければ、誰からも感謝されない、でも、いつだってどーんと大きく構えている土に僕はなりたい。

土だったら、人に踏みつけられるのなんて当たり前のことだからいちいち心を痛めることもないし、

シャーシャーおしっこを引っ掛けられても、

ブリブリうんこをされても、

ぜんぶ肥やしとして蓄えることが出来るからだ。

そして、そのうんこたちがちゃんと栄養として働くように、ある日、誰かがクワを振りかぶって

ザックザックと

僕を耕し始めるだろう。

そして、耕し終えたら、種をまいて、それから毎日欠かさず水を与える。

やがて芽がでて、実や花を作り、それを美味しそうに食べたり、花瓶に飾ってうっとり眺める人たちの姿が見える。

もちろんこのとき誰も土のことに思いを向けたりなんてしない。

でも、僕だけは、その美味しい果物やきれいな花は全部、僕から生まれたものだって知っている。

だから、いつでも心は満たされているし、ぼかぁ幸せだなあ、ってつぶやいている。

太陽や雲や青空や月や星や夜空を毎日眺めながらね。

どんなに頑張っても僕はどうやら人間の仲間入りは果たせなさそうだ、ということにようやく気づいた今日、だったら、

僕は土になりたいな

って割と本気で思っている。



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