運命のおっちゃん
昨晩、久しぶりに、運命の人に再会した。なんて言うと、ハーレクインロマンスと勘違いされる恐れがあるので、訂正しよう。正確には、僕の会った人とは
運命のおっちゃん
である。
彼は今から15年前に、今の会社に僕を引きずり込んだ張本人である。
本当にとんでもないことをするヤツだな。
ちなみにそのときのことは今だに鮮明に覚えている。
僕が予約した東京タワーのたもとのシャレオツなピザ屋でマルゲリータを二人でむしゃむしゃしてたときに、彼から突然、
「戻ってこないか?」
と言われたとき
「ああ、もしかしたらこの言葉を僕はずっと待っていたのかもしれない」
と思ったこと
あと
帰り際、店員さんから、なんか似てますけど、双子さんですか?と言われたこと
とか、ね。
彼と僕とは10歳離れているけど、ぽっちゃりメガネな風貌は確かに似てなくもない。そして、彼と僕はそれぞれ双子でもあったから、当たらずも遠からずだよな〜とお互いに顔を見合わせて笑ったんだ。
彼ももちろんそのときのことは覚えていたけど、それ以上に7,8年くらい前に会社の面白そうな女の子たちを巻き込んでやった飲み会のほうがずっと印象に残っていたらしくて、ずっとその話ばかりしていた。
こーゆー無邪気なところがやはり彼を嫌いになれない理由なんだよな。
そして、額にうっすら赤く「また、やりたい」と書いていたから、しょーがない。
また企画することにするか!
今年、60歳で割と大きな子会社の役員におさまった彼だけど、見た目はほとんど変わらないから、偉い人と話している感覚はゼロで、ずっとあの頃と同じノリで、お互いに自然体で、好き勝手話す感覚がとにかく心地よかった。
そして、お酒か進み、気づいたら、ついつい僕も仕事の愚痴や家族の悩みを洗いざらい打ち明けていた。
先程までのバカ話から一転、彼は会社人、人生の先輩として、本当にためになるアドバイスをたくさんしてくれた。
けど、この一言が一番、印象に残っている。
「息子さんのためにも今は自分が健全であることに専念しろ」
うん、そうだよな。あと、彼とか親父とかメンターの友人とか僕が信頼している人のアドバイスがみんなおんなじなのが何気に可笑しくて、思わず笑ってしまった。
あと、まるであたたかい毛布で包んでくれるような、相手を想ってくれてる感じがひしひしと伝わる感じもみんな一緒なんだよね。
さらに彼は「これはおまえだから話すけどな…」とかつて中学生の頃の息子さんがADHDの疑い(ずっとHDSDと言ってたけど(笑))があり、かなり大変な時期があったことを告白してくれた。そして当時の彼も、まさに今の僕と同じように、たくさん本を読んだり、自分を責めたりしたけど、最終的には
結局、時間が解決するんだ
という結論に達したそうだ。
そして、まさにそれを証明するようなほっこりエピソードを話してくれたから、最後にそれを紹介したい。
二年前、社会人として働く息子さんから大型バイクの免許を一緒に取らないかと誘われた彼。
よしっ!と二つ返事で一緒に教習所に入ったはいいけど、実技試験のときに、道を間違えたり、バイクを倒したりして、一発合格ができなかったどころか、後ろでその一部始終を息子さんに見られていたから、その後、そのことを息子さんからずっとからかわれているそうだ。
でも、今では無事に免許を取って、たまに息子さんと二人でツーリングを満喫しているとのこと。
この話を聞いて、いや、何よりもニヤニヤ嬉しそうに話をする彼の表情を見て、ぶっちゃけ
僕の目標はこれだな
と思ったよ。
まあ別にバイクでなくてもいいけど、息子が大きくなっても、二人で遊べる趣味を真剣に探してみることにしよう。
例えば、僕が大好きな市川崑監督「犬神家の一族」のスケキヨごっこ、とかね。
そして、僕はある事実にハタと気づいた。
ああ、なんてこたあない
あのとき僕の運命を変えた彼は、未だに僕にとっての
運命のおっちゃん
だったのだ。
そして、小雨降る御茶ノ水駅前で彼と軽く握手して別れた僕は、
僕もまた誰か(悩めるこやぎちゃん)にとっての
運命のおっちゃん
になりたいと割とガチで心に誓ったのだった。
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