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君の日傘はシースルー


念願の海を目指していた僕らに、突然の雨、スコールが襲った。

何度か店の軒下を借りて雨宿りをしたけれど、一向に止む気配を見せない雨にしびれを切らした僕らはついにコンビニで一本のビニール傘を購入することにしたのだった。

でも、なんとなく感じていた僕の嫌な予感は見事に的中し、つまり、

コンビニを出たら、雨はすっかり上がっていて、その代わりに傘を買った僕らをまるであざ笑うかのように、いやらしいくらい夏って感じの青空と白い雲が頭上に広がっていた。

そして、この瞬間、ビニール傘は銃剣に変わり、僕らは海に向かって行軍するサマー・ソルジャーとなった。

でも、容赦なく照りつける夏の日差しにすっかり正気を失った僕らは、普通ならとっくに着いているはずなのに、なぜか閑静な住宅地には全くにつかわしくない密林みたいなところをさまよっていた。

そして、這々の体でそのジャングルを抜け出した僕らの前にようやく海が現れた。

しかし、暑さに参ってしまった彼女は明らかにギブアップ寸前だった。

僕はそんな彼女を「あと、もう少しだから」となだめながら、休み休み前進していき、最後にはなんとか海岸がすぐその先に見える海水浴場の駐輪場までたどり着くことができた。

そこで力尽きた僕たちは縁石の上にしゃがみ込み、荒くなった息を整えペットボトルで水分補給を済ませた後、駐輪場の格子状の柵越しに見える海と砂浜をぼんやり眺めていた。

それから僕はなんとなくそうしたくなって、さっきコンビニで買ったビニール傘を広げて隣に座る彼女に差し出した。

「日傘代わりに使ってよ。」

もちろん透明のビニール傘は全く日傘の用は成さなかったけど、この僕の気まぐれな提案は、実際、大成功だった。

だって、夏の青空と青い海と灰色の駐輪場をバックにシースルーの日傘をさしながら眩しそうに目を細めて微笑む彼女の姿はまさに

映画の中のヒロイン

そのものだったからだ。

そんな他愛もない夏の思い出

これからもきっとこの季節が来るたびに嫌というほど鮮やかに思い出すんだろうな。

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