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ショートショート「自殺」

●●高校の昼休み、生徒と教師はパニックに陥っていた。

「来ないで!これ以上近寄ったら落ちるわよ!」

一人の女子生徒が屋上から飛び降りようとしていた。
屋上には高さ4m程のフェンスが周囲に聳え立っていたが、老朽化が進み、一部穴が空いていて、簡単にフェンスの外へ出られるようになっている。
小さな隙間だが、その生徒は小柄だったため、外に出られたのだろう。

「早まっちゃ駄目よ、内海さん!」
「うるさい!どうせ私が死んだって、悲しむ人なんてこの世にいないわ!」
「そんなことないわよ!私はあなたが死んだら悲しいわ!」
「よくそんな事言えたわね!あんたが職員室で私の成績が悪いこととかクラスに馴染めないことを愚痴っていたのを聞いたのよ!しかも全部私のせいにして!」
「そ、それは・・・」
「もうイジメも勉強も全部嫌!死んだ方がマシよ!」

内海が今にも飛び降りようとした時、屋上の扉が開かれる。

「どうせ死ぬならちょっと試したいことがあるんだけど、それからでもいいかな?」
「・・・は?」

白衣を着た眼鏡女子、その姿はまさにリケジョというやつだ。
そのリケジョは右手におもちゃのレーザー銃のようなものを握っている。
階段を急いで駆け上がって来たのか息が荒れているが、目はキラキラと輝いている。

「それで私を殺すってこと?」
「まぁある意味"君"を殺すことにはなるかな」
「それならさっさとして、もうこの世にはうんざり」
「そう、それなら早速・・・」

リケジョがレーザー銃を撃とうとすると、急な突風が吹き、内海の体が風に持っていかれる。

「あっ!」

そのままフェンスから手が離れてしまい、内海が屋上から落下してしまう。
リケジョはそのキラキラした目を変えることなく、レーザー銃から生徒目掛けてビームを放つ。

(死んじゃう・・・本当に私・・・死んじゃうんだ・・・)

短い人生ではあったが、その一瞬に走馬灯のように記憶が駆け巡っていった。
楽しかった思い出はほとんどなく、思い出されるものはほとんど辛かった過去。
ようやく死ぬことが出来るという安心感と同時に、死への恐怖もこみ上げてくる。

(やっぱり・・・怖い!!)

内海が足から下のコンクリートめがけて凄いスピードで落下していくと、着地した瞬間、ズドンと爆破音のような音が辺りに広がる。

生徒達の悲鳴が広がる中、着地地点に漂う煙が内海の姿を覆い隠していた。
しかし何故、飛び降り自殺をして煙がたつのか。

「あれ・・・死んでない?」

煙が晴れると、そこには無傷の内海が直立していた。
その事態に全員ポカンと口を開け、何が起きたのか分からないでいた、リケジョただ一人を除いて。

「いやー、成功したみたいですね、内海さん試しにここまでジャンプしてもらえますか?」
「は?ジャンプって、え!?」

屋上にいたリケジョの呼びかけに、疑問を持ちつつもジャンプしてしまう。
すると、内海の体が一気に飛び上がり、屋上のフェンスを軽々と越え、再び屋上に戻って来た。

「な、何これ・・・」
「これが私の発明品、ヒーロー銃です!」
「ヒーロー銃??」
「この銃を撃たれた人は身も心もスーパーヒーローになってしまうという発明品です!」
「な、何それ!?私が死ななかったのはスーパーヒーローになっちゃったからってこと!?」
「そういうことです、あなたはもう寿命以外で死ぬことは出来ません。車に轢かれても車が吹っ飛びますし、首を切り落とそうとしてもナイフが折れますし、毒も効かないですし、呼吸しなくても死にません」
「ば、化け物じゃないそれ・・・これからどうすれば・・・」
「とりあえずSASUKEでも出ます?」

2年後、内海さんが地球を侵略しにきた宇宙人を倒すお話はまた次の機会に。


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