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春って…

今年もいよいよ桜だよりが聞かれるようになった。

北国の春は、一気にやってくる。
桜と梅はほぼ一緒に咲くし、水仙も同じ時期だ。
そして気がつくと、辺り一面黄色になっている。タンポポ、レンギョウ、菜の花 ほとんどみんな黄色だ。自分を見て!と言わんばかりに、太陽の温かさを反射している。

長女が保育園の年中の頃であろうか。朝、保育園に向かう車の中で、窓の外を見ながら歓声を上げた。

「春って、こういうことだったんだあ~」

春という言葉と、目の前の光景が結びついた瞬間だったんだろうと思う。子育てをしていて、なんて楽しいんだろうと思ったいくつかの瞬間の一つだ。なんて、素直でかわいいんだろう。ぎゅっと抱きしめたかったが、残念ながら運転中だった。ずっとこの感性を持ち続けてほしいと願わずにはいられなかった。

あれから20数年がたち、私もいつの間にか還暦を過ぎた。今は、春は一気に来るのではなく、ゆっくりくるということも知った。
福寿草が咲いて、ふきのとうが顔を出して、クロッカスも咲いて…
それから水仙やさくらのあの春爛漫に移っていく。

子育てをしていた頃、フルタイムで働いていた。朝7時過ぎに家を出て、帰ってくるのは暗くなってからという毎日だった。晩ご飯を作れなくて、コンビニの弁当という日も少なくなかった。休みの日はとりあえず寝て疲れをとる。ましてやこの時期は年度末だから普段より忙しいのだ。だから、福寿草だのふきのとうだのに目がいかなかったのかもしれない。春は一気にやってくるような感覚だった。でも今は、退職し心に余裕もできた。庭掃除をしたり犬の散歩をしたりと時間がゆっくりと流れている。だから、季節の移ろいもより感じるようになったのだ。

へぇ、こんな所に福寿草が咲いてる。
あらま、クリスマスローズ 雪の下なのに咲いててえらいわ。
ふきのとう出てきたね。天ぷらにでもしようかな。

春に感動したあの子は辛口の娘に成長したけど、今度は自分で春を楽しんでいる。

昨年、父が亡くなったのも春だった。桜が満開の季節だった。火葬場に向かう道の山桜が、昨年妙に多かった黄砂に煙っていて、なんだか不思議な光景だった。晴れているのに晴れていないような、ベールに包まれているような、現実なのに現実ではないような。昨年の春の記憶はそれだけだ。あとは、他の花がどんなだったのかほとんど覚えていない。

今年の春は、どんなだろうか。
昨年秋に、奮発して水仙やチューリップの球根をたくさん買って植えた。今その芽が出始めている。咲いたらどんな風景を見せてくれるのだろうか。

春って、、、、
楽しい、穏やかな春であってほしい。



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