アンケートの裏側
ひとつ前の記事で、リサーチディレクターのお仕事について投稿しました。
今回はアンケートを作っていた側から、一般の方が知り得ないアンケートの裏側をご紹介しようと思います。
ちょっと深掘りするので難しいと思うところがあるかもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いください!
1.ロジック設定
アンケートに答えたことがある人は知っていると思いますが、Q1から質問に答えていくと次々と新しい質問が表示されます。
単にページが遷移しているだけのように見えますが、実は裏ではたくさんのロジックが設定されているのです。
簡単な例を出すと、クライアントからこのような調査の依頼がありました。
「働き盛りの30代男性に向けて、甘くないフレーバーチョコを発売したい。そこで週1回以上ブラックチョコレートを食べている30代男性(ターゲット)にどのフレーバーが人気があるのかを知りたい」
この場合、1問目から「週1回以上ブラックチョコを食べていますか?Yes or No で答えてください」と質問しても、得られる回答は信憑性が薄いですよね。
そのため何問もかけて対象者を絞り込んでいきます。
Q1:チョコレートを食べる習慣があるか聞く
→習慣があればQ2へ進む
Q2:食べているチョコレートの種類を聞く
→ブラックチョコを食べていればQ3へ進む
Q3:ブラックチョコを食べている頻度を聞く
→週1回以上食べていればQ4へ進む
Q4:甘くないフレーバーチョコがあるとしたらどれがいいか聞く
→全員Q5へ進む
Q5:Q4でそのフレーバーを選んだ理由を聞く
ついでにブラックチョコを食べない人にもその理由を聞きたいときは、
Q6:どうしてブラックチョコを食べないのかを聞く
(Q2でブラックチョコを食べていない人だけが回答)
という風に回答内容によって質問内容を変えるのです。
モニターにとっては10問のアンケートだったとしても、実は回答していない質問も合わせると全体で100問以上のアンケートだった、ということはよくあります。
2.ターゲットが集まらなかった場合
30代男性モニター全員にアンケートを送ったのに、週1回以上ブラックチョコを食べる人が欲しい数より集まらなかった場合はどうするの?と思う方もいるかもしれません。
例えば50人にQ5を回答してほしかったけれど、100人回答してもターゲットが20人しか出てこなかったとします。
その場合考えられる対策は、
①ブラックチョコを食べている頻度を下げる
(月2-3回以上や月1回程度)
②ブラックチョコ以外を食べている人もターゲットに含める
(カカオ70%など)
③20代もしくは40代の男性もターゲットに含める
など、当初の欲しかったターゲットよりも条件を緩和していくのです。
どの条件を緩和するか、どの段階で緩和するかはクライアントと相談しながら決めていきます。
3.回答率と出現率
また、現状ではターゲットが20人しかいなかったけれども、まだアンケートを配信していない30代男性モニターが残っている場合。
未配信の30代男性にも送りますが、やみくもに送ってたくさんの人が回答することになったら、サーバーがパンクするかもしれません。
そのため、ある程度数のあたりをつけてからアンケートを送ります。
まず、当初のターゲットは回答者100人のうち20人(出現率20%)しかいませんでしたので、50人集めるためには250人にアンケートを回答してもらう必要があります。
また400人にアンケートを送って100人から回答が得られたと仮定すると回答率は25%、つまり1000人にアンケートを送らないと250人分の回答は得られません。
逆に言うと
1000人に送っても回答するのは250人(回答率25%)、
そのうち週1回以上ブラックチョコを食べているのは50人(出現率20%)、
ということになります。
このときすでに400人に送っているので追加で600人(合計で1000人)に送れば欲しかったターゲットが集まる計算です。
4.最後に
今回はアンケートの裏側について少し深掘りしてみましたが、上手く伝わったでしょうか。
最後に、アンケートを回答しているみなさんに一つお願いがあります。
リサーチ会社をやめたわたしが言うのもおかしな話ですが、アンケートはできるだけ正直に回答してください。嘘や適当回答はすぐ見破られます。
クライアントは自社のサービス・製品を開発したり、改善・改良するために調査を依頼しています。
1個ずつのアンケートのポイントは低いかもしれませんが、それが巡り巡ってわたしたちの生活の向上につながる可能性もあるのです。だからお手元に届いたアンケートには、正直に回答してもらえればと思います。
長くなりましたが、今回はここまでになります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回からはもう少しくだけた内容の投稿もしていきたいと思います。
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