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分かち合う

 息子がまだ小さかった頃のこと。保育園から帰った息子は、

「オタガガムシの絵本をよんでもらった。」

と、保育園で読んでもらった絵本の話をはじめた。

オタガガムシ…聞いたことのない虫の名前だ。なんだろうと思いながら、息子との会話を進めていくと、正体がわかった。


「オタマジャクシ」だった。


 オタマジャクシ→オタガガムシとなってしまったようだ。わからなくもない。かわいらしい間違いだ。オタマジャクシよりも少しいかつい感じを受ける。私の想像では、オタガガムシは黒っぽいゴツゴツとした虫であった。

 息子が読んでもらった絵本は、

「おたまじゃくしの101ぴきちゃん」


 カコサトシさんの本で、お母さんカエルのために、オタマジャクシたちががんばるはなしだ。さっそく週末に図書館に行き、絵本を借りてきた。あの頃、保育園で読んでもらった絵本を家でも読むことが、子どもたちは好きだった。自分が読んでもらった絵本の楽しさを共有したいみたいだった。

 今もそれは続いている。さすがに読み聞かせはしなくなったが、自分が読んでおもしろかった本は、

「読んでみてよ。」

と勧めてくるし、おいしかった食べ物は、

「ひと口食べてみてよ。」

と勧めてくる。そこで私が、

「おもしろかったね。」
「おいしいね。」

と言うと、とても満足そうな顔をしている。

 だれかと、楽しさ、おいしさ、喜びなどを共有することはすてきなことだ。ひとりじめしないで、周りにも拡げてくれる子に育ってくれてよかったな、と思う。分かち合うことで、楽しさや喜びは膨らんでいく。悲しみや寂しさは軽減するだろう。「分かち合う」ことは、生きていく上で大事なスキルだと思う。

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