見出し画像

7秒タイムマシン 第24話 異なる世界「ルーメア」

第24話 異なる世界「ルーメア」


集落の中から、長老と思われる年配の男性がゆっくりと歩み寄ってきた。彼はレンとエミリをじっと見つめ、深く息をついた。「ここは、私たちの世界『ルーメア』。あなた方は異なる時代から来たのでしょうか?」

レンとエミリは顔を見合わせ、困惑した表情を浮かべた。「ルーメア…異なる時代?そうかもしれません。私たちの娘が、誤ってタイムマシンでここに飛ばされてしまったんです。どうしても彼女を見つけなければなりません。」

長老は静かに頷いた。「それならば、お前たちは『時間の流れ』を操作した者だな。この村では、時間を超える力は忌み嫌われている。しかし、事情があるようだな…若い女の子を見かけたという話を聞いたことがある。」

エミリが期待を込めて問いかけた。「それは本当ですか?彼女はどこにいるんですか?」

長老は少し悲しそうな顔をして答えた。「その少女は、この村を通り過ぎ、森の奥へと向かっていった。あの場所には古い神殿があり、時間の流れを制御する力があると言われている。しかし、そこは危険な場所だ。あの子が無事でいることを祈るばかりだ。」

レンは決意に満ちた顔で長老に頭を下げた。「ありがとうございます。俺たちはその神殿に向かいます。アヤカを必ず助け出します。」

長老は静かに微笑み、手を差し出した。「気をつけるのだ。そして、もしお前たちが無事に戻れたなら、どうかこの世界に再び混乱をもたらさぬよう、時間の力を慎重に使ってくれ。」

レンとエミリは長老の言葉を胸に刻み、森の奥へと足を踏み入れた。彼らの前には、さらに険しい冒険が待ち受けていたが、アヤカを救うためにはどんな危険も恐れなかった。やがて、森の中で神殿の入口が見えてきた。古代の石造りで、苔が生い茂り、時間の経過を感じさせるような神秘的な雰囲気が漂っていた。

「ここがその神殿だな…エミリ、覚悟はいいか?」レンが低く言った。

エミリは不安を抱えながらも、強い意志を持って頷いた。「うん、レン。アヤカを救い出すんだから、どんなことがあっても進むしかないわ。」

二人は神殿の中へと足を踏み入れた。暗い通路を進んでいくと、やがて大きな石室に辿り着いた。その中心には、古代の文様が刻まれた祭壇があり、その上にかすかな光が揺らめいていた。

レンとエミリが祭壇に近づくと、突然、空間が歪み始めた。まるで時間そのものが揺らいでいるかのようだった。そして、その中心にアヤカの姿が浮かび上がった。彼女は目を閉じ、まるで夢の中にいるような表情をしていた。

「アヤカ!」レンが叫びながら駆け寄ると、アヤカの体がふっと浮き上がり、光に包まれた。次の瞬間、彼女はレンの腕の中に落ちた。

「アヤカ、大丈夫か?」レンは心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。

アヤカはゆっくりと目を開け、困惑した表情でレンを見上げた。「パパ…?ママ…?私、どうしてここに…?」

エミリは涙を浮かべながらアヤカを抱きしめた。「アヤカ、無事でよかった…本当に…」

レンもアヤカを抱きしめ、安堵の表情を浮かべた。「やっと見つけたよ。もう二度と離れないようにしような。」

三人はしばらくその場で抱き合い、再会の喜びをかみしめた。やがて、神殿の空間が再び揺らぎ始め、彼らは強烈な光に包まれた。次の瞬間、三人は再び家の部屋に戻っていた。

部屋は静まり返っていたが、タイムマシンは動きを止め、まるで何もなかったかのように静かだった。

「戻ってこれたんだ…」レンが呟いた。

エミリはアヤカの手をしっかりと握りしめ、「本当に、よかった…」と優しく微笑んだ。

三人は肩を寄せ合い、無事に戻ってこれたことに感謝しながら、新たな日常へと戻っていった。しかし、彼らの心にはこの冒険が深く刻まれ、家族の絆はより一層強くなったのだった。

つづく!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?