【覚え書き】2024SS(Tokyo)8/30/2023
SEVESKIGのスカジャンにはMidjourneyやChatGPTにおける「AIの誤訳」から生まれた「トラの頭を持った神」がプリントされる。
通常スカジャンに刺繍される虎や竜といったモチーフの代わりに、あたかも古典的な象徴性を持ったシンボルのように、AIによって生成された架空の神の姿がもっともらしく描かれている。
アルフォンス・ミュシャの『スラヴ叙事詩』から着想を得たこのAIによる新しい神の姿の生成は、ある物語が歴史として語られていく中で、そこに表象されたものが果たし得る役割について示唆的である。
ミュシャによる『スラブ叙事詩』もまた、スラブ民族を取り巻く歴史的事実と伝承の双方が作家の取捨選択によって織り交ぜられた、いわばミュシャ個人による「神話」の構築であった。
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ミツルオカザキのコレクションは、表参道の裏通りのとある地下室にて発表された。
ショーの冒頭、鳥のさえずりのような音が会場に流れていた。数分間、会場には囀りだけが響く。
しばらくすると一人のモデルが自ら幕を開けて登場し、ゆっくりと会場をうろついた後、空いていた客席の一つに腰をかけて頭をもたげる。
やがてそれに続くモデルが登場し、客席の間を縫いながらゆっくりと会場を周回し始める。その姿はランウェイを歩くモデルというよりも、あてもなく森を彷徨う夢遊病患者の姿に近い。
「不思議の国のアリス」に登場するキャラクターがシルエットで刺繍されたトップスが登場し、このコレクションが「不思議の国のアリス」を下敷きにしていることが明らかになった。
前面のホワイトマテリアルと背面のブラックマテリアルをずらして縫い合わせているTシャツが幽体離脱を感じさせるものであるというFashionPressの指摘が興味深い。https://www.fashion-press.net/news/108366
終盤、最後のモデルが客席に紛れ込み眠りについていたモデルを起こすことでショーは終わりを迎えた。これによってショーは「客に紛れ込んだモデルが見た夢」というストーリーの骨格を持つことになる。
夢を見るモデルが客席に座っていることを考えると、ショーの一連は訪れた客が見た夢ということになるのかもしれない。
とある裏通りの地下室という会場の立地的な条件も手伝っていたのかもしれない。
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HEōSは村上龍の『限りなく透明に近いブルー』から霊感を受けたコレクションを発表した。「NIBROLL(ニブロール)」がタイトルである。会場には作中にも登場するDOORSが鳴り響く。
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フィリピンのアパレルブランドBENCH/は、フィリピンの民族衣装 Ternoを題材にとったコレクションを発表した。
スペイン植民地時代の影響を受けたこの民族衣装は、宗主国であった当時のスペインの流行を反映したものらしい。スペインではその後も他の西洋諸国と同様に流行が移り変わっていくが、この影響を受けたTernoはさらに多様な文化的混ざり合いを内包しながら、民族衣装としてフィリピンに定着した。
クレオール的なファッション
2023.08.31 2:17
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