見出し画像

『ウバルトゥトゥの子』解説ノート

劇団ヨアガキ第2回本公演『ウバルトゥトゥの子』
この度はご一読頂きありがとうございます。
劇団ヨアガキ主宰。この作品の脚本演出を務めております。興梠陽乃(こうろぎひの)と申します。

まずは公演詳細から⬇️
[日程]
10月
13日(金) 19:00~
14日(土) 14:30~/18:30~
15日(日) 13:00~/16:00~
※全5ステージ/開場は開演の30分前になります。

[ご予約]
https://www.quartet-online.net/ticket/ubarututu

[料金]
一般前売1000円/当日1300円
学生前売500円/当日800円

[会場]
京都市東山青少年活動センター 創造活動室
〒605-0862 京都市東山区清水5丁目130番地の6(東山区総合庁舎内2階)

『ウバルトゥトゥの子』は創作SF作品、として生み出したつもりでいます。(何をもってSFとするのか!という問題は残りますね🤔)
私の頭の中からうにゅうにゅと、蒔絵のように流れ出したこの世界について、あらすじでは語り切れない世界観をお伝えしようと筆を取った次第になります。

『ウバルトゥトゥの子』とは何なのか⬇️

ウバルトゥトゥの子、シュルッパクの人よ。家をこわし、舟をつくれ。持物をあきらめ、おまえのいのちを求めよ。品物のことを忘れ、おまえのいのちを救え。
すべての生きものの種を舟に運びこめ。

これは世界最古の物語作品『ギルガメシュ叙事詩』における大洪水と「ノアの方舟」についての記述です。
『ウバルトゥトゥ』は王の名前。大洪水で世界を一旦綺麗にしてしまおうと神が思ったその時まで、文明を18,600年間統治していました。
『ウバルトゥトゥの子』とはその子どもたち(配下の民も含む)、そしてこの文脈では生き残ることを許された善人ノアを指します。
いわば私たちはみんな方舟を建設し、災いの波が襲い来る中命からがら生き残った『ウバルトゥトゥの子』、の子どもたちとも言えます。

既出のあらすじ⬇️

言論と知識が正しく統制され、機会と富、教育が平等かつ均等に与えられる国に、学生として学ぶ少女がいた。
学生はある日、同級生が持つ本に『魔女』の文字を見る。数年後、学生は『魔女』を探す旅に出る。
寂れた郊外で学生が出会ったのは、『魔女』を名乗る青年だった。

「言論と知識が正しく統制され、機会と富、教育が平等かつ均等に与えられる国」作中ではこの国を『街』と呼びます。
なぜ、街と呼ぶのか。
それは、幾度も起こった戦争の果てに、生き残った人々は『国』をたったひとつの『街』に押し込んでしまったからなのです。

今私たちが生きるこの国然り、『国』には必ず歴史があります。そこにはいつも戦争が腰を降ろしています。

第三次世界大戦がもし勃発していたら、それはきっと核戦争でしょう。空は汚染され、黒い雨が降り、雨を受け続けた人々は『続・猿の惑星』に出てくる地下人類のように、醜い姿に成り果てるのでしょうか。
(幼い興梠に想像力の力を知らしめた伝説的なシーン。近所のビデオ屋で借りてきてテレビに見入りました。今やドラッグストアに成り果てたTSUTAYA和歌山太田店には本当に感謝しています。)

『続・猿の惑星』監督:テッド・ポスト
放射能に汚染され地下に定住した人類
長い年月の中で自らの歴史を忘れ、
文明を破壊したコバルト爆弾を神と崇めて信仰しています。

しかし、人間はもっとずるがしこいはずだ、と興梠は考えました。そうなる前にせっせと居住空間を作り、屋根と壁を建設し方舟のような街に引っ込んでしまうだろう。
残酷な世界の現実を見ないで済むように日夜街の維持にあくせくするはずであろう!と。

人間は、どうしようもない現実に晒されたとき、往々にして、小さな世界に閉じこもりそれを世界のすべてだと思うことがあります。

デザイン:山田世紀末
『街』は増築破壊維持を繰り返し、生き物のように唸ります。

それが主人公・唄子と幼なじみ晴江が飛び出した『街』である訳です。3回目の戦争の後、『街』を建設した人類は、もう誰もその頃の記憶を正しく覚えてないほど長く『街』に住み続けてきました。
屋根に穴が開き、壁が崩れ、『街』と外を繋ぐ唯一の橋にヒビが入ってもまだ人々は『街』を捨てることはできません。
だってもう誰も、正しい歴史も『街』の外に何があるかも覚えてないんだもの。

なんとなあくその国に生まれて、なんとなあくその国のルールに従い、なんとなあく死んでいく。何も珍しい話ではありません。

しかし、子どもたちはいつだって無邪気です。
この『街』の窮屈な生活の中で唄子と晴江は検閲済みの禁書の中から『魔女』についてのとある記述を見つけます。まだ自分たちの知らない世界が広がっているかもしれない。
誰も足を踏み入れない『街』の外。
大人たちの誰も気にもかけない『街』の外!
まだ見ぬ世界へ飛び出せば、自分たちの世界が、『街』が、この現実が何か変わるかもしれない。
それをきっかけにふたりは『街』を飛び出して、『魔女』探しの冒険へ出発するのです!

というのが『ウバルトゥトゥの子』のあらすじ、ならぬ細かいすじ、こますじ、になります。

さて、ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。こんな感じの演劇作品『ウバルトゥトゥの子』。
ぜひ、ご来場ご観劇、そして何よりお楽しみ頂けますと幸いです。

劇団ヨアガキ
興梠陽乃

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?